これまでのコミュニケーション論は、伝達に力点が置かれた。
これに対して、人と関係を紡ぐ側面を重視したのが「優しいコミュニケーション」。
聞き手への配慮がある「優しいコミュニケーション」が、どのように可能になるのかを社会言語学の立場から分析し、示したのが本書。
最初に雑談の効用が説かれる。
その効用
...続きを読むも興味深いのだが、まず雑談に対して「正談」という用語があることに驚いた。
雑談に有効な言語ストラテジーは6つ。
1 相手の名前を呼ぶ
2 相づち、積極的応答をする
3 聞かれて答える内容に一言コメントを加える
4 肯定的コメントやほめをする
5 追加的情報提供をする
6 相手の意向に逆らう場合は和らげ表現を
抜き書きすると、何かビジネス書っぽい風情も感じられるが、でも大事なことだと思う。
その後は、地域のワークショップで活躍する熟練ファシリテーターの言語的ふるまいの分析が続く。
ファシリテーターがしていることはこんなふうだった。
1 話し合いのルールの提示
2 発言量の調整(発言が少ない人への促し)
3 その場のトピックの提示
4 話題の変わり目の提示(接続詞の活用)
5 合意事項を繰り返し確認
6 話題を取り下げられる発言者への配慮
重要なのは「聞き、聴き、訊き合い」とまとめられているように、聞き手を優先する行動のようだ。
とはいえ・・・上記のことをやっていくと、ファシリテーターの発言量も増えてしまう気がする。
こういうところは、上手いファシリテーターとそうでない人の差がつくところなのかも。
コロナ禍の政治家の言語行動を分析したところは面白かったが、なかなか難しいところもある気がする。
どうしてもその後のコロナ施策が頭をかすめてしまい、筆者の分析を中立的に判断しづらい。
また、筆者の意図から離れ、政治上のポピュリズムを追認する結果になってしまいそうな気がする。
とはいえ、自分の言語行動を振り返るよいきっかけを与えてくれた本だった。