あらすじ
ビジネス会議ではなぜ雑談が大事? 会話での相づちにはどんな意味が? 大勢での話し合いをまとめる秘訣は?ーー日常の会話やビジネス会議,リスクコミュニケーションといった話し合いを,社会言語学の観点から具体的に分析してみると,「人に優しい話し方・聞き方」がどんなものか見えてくる!
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Posted by ブクログ
筆者は社会言語学という学問分野の研究者です。
そして、社会言語学の立ち場から優しいコミュニケーションとはどういうコミュニケーションなのかを考察していきます。
タイトルにあるように「思いやり」がキーポイントのようです。
話し手は、聞き手の背景、どういう立ち場なのか、どのくらい理解しているのか、どんな文化的背景なのかなどなどを意識して話すこと、
聞き手も、相槌をしたり、話題が広がったり、深化するような訊き返しをしたりなど、話し手と聞き手のキャッチボールが重要だということです。
また、コミュニケーションには情報の伝達、共有の役割だけでなく、感情の共感を生むという役割もあるということです。そういう意味で雑談はとても大切だということです。
なるべく、キャッチボールということを意識しながらコミュニケーションしていこうと思いました。
Posted by ブクログ
優しいコミュニケーション
「思いやり」の言語学
岩波新書 新赤版 1971
著:村田 和代
本書は、社会言語学の入門書である
普段から何気なく行っているコミュニケーションには、一見ばらばらで共通項などないように思えますが、その背後には、共通した原理や原則が働いている場合があります。
ことばは、時代や状況によってダイナミックに変化します。そして言霊と言われるように、人々に勇気や元気を与え社会に大きな影響をもたらします。
同時に、人を傷つけ、扇動し、社会を間違った方向に動かす力をも有します。
本書を通じて、筆者が伝えたいメッセージは3つあります。
① 社会言語学の魅力やおもしろさを多くの方々に知っていただきたい
② 優しいコミュニケーションのエッセンスとは何かを考える
③ 言語・コミュニケーション研究を社会につなげる事例や可能性、すなわち、どのように社会貢献できのかを提示する
気になったことは以下です。
■優しさの手がかり
・社会言語学とは、言語を社会との関わりで見ようとする言語学の一分野です
・コミュニケーションというと、「何を言うか」といった発言内容に注目しがちであるが、「どのように言うか」という側面からの発見があったのではないでしょうか
・言語のバリエーション ①誰が、②誰に、③いつ、どこで、④なぜ、⑤どういう方法で。5W1Hと呼応しています
・ポライトネスという言葉からは、敬語や礼儀正しさという言葉を連想します。が、ポライトネスとはもっと広い概念を指し、円滑な人間関係を築き、衝突を避けるためのことばの使い分けや言語行動のことをいいます。
・社会言語学では、コミュニケーションは、話し手と聞き手の相互行為であるととらえます。
■雑談のススメ
・会話のスタイルは、①目的遂行型(情報伝達型)と、②対人関係調整型がある。雑談は後者になる
・ファシリテーターと各参加者との間にラポールを形成する
・話し合いでは、正談に入る前にアイスブレークという雑談を設けるとよい
・会話を促進させるためにファシリテーターに必要なストラテジーとは
① 名前を呼びかける
② あいづちや積極的な応答
③ 質問に対する答えにコメントを付け足す
④ 肯定的なコメントやほめ
⑤ 追加の情報提供
⑥ 和らげ表現の使用
■大切なのは、「聞くこと」
・コミュニケーションをとらえるための古典的モデルは、「話し手が情報を伝え、聞き手がそれに反応する」
・それに対して、聞き手行動も視野に入れた研究においては、従来受動的にとらえられてきた「聞き手」の有り方とは正反対に聞き手の会話への積極的な関与や創造的で活動的な側面について言及がなされるようになってきました。
・進行役としてのファシリテーターの言語的なふるまいとは
① 話し合いを始める前に簡単なルールを決める
② 発言の割り振りをして、発言していない人、発言が少ない人に積極的に発言を促す
③ 何について話をしているのかをわかりやすく明確に提示する
④ 話題の変わり目を、では、続いては、次は、などといった接続詞で明示する
⑤ 繰り返し合意事項を確認し、小さなトピックで合意を重ねることでおおきなテーマの同意につなげる
⑥ 意見を取り下げるときには、提案者に配慮する言葉をかける
・ファシリテーターの積極的なふるまいによってラポールが形成されると、参加者同士のやりとりも多く、活発な意見交換に繫がっていく
・出された意見を集約する中で、①話し合いのプロセス、②話し合いのアプトプット の両方が評価指標としてとらえていることがわかってきた
・聞いている相手(会話の相手)に配慮して話すことが重要であることに加えて、聞くという行動も非常に重要であることがわかってきた
・相手が話しやすいように応答していますか。相手がより話を展開しやすいように応答していますか
■難しいコミュニケーション
・会話の流れを作る 現状⇒解説⇒分析⇒課題・施策⇒お願い
・みなさん、皆さまで、協力をよびかける
・非常に丁寧な口調ではなす、謙譲表現を用いる
・決意表明には、一人称、僕、を使い、文末に、思います、といって、言葉を和らげる
・オンラインで雑談がしずらいのはなぜ
① ミーティング禅語のフェーズがない
② 発話のオーバラップが起きない
③ 視線の授受ができない
④ 視覚情報が極端に限られていて、聞き手の行動が機能しずらい
⑤ 小さい河井の場を作りだすことができない
・メラビアンの法則 対話でのコミュニケーションでは、言語情報、聴覚情報、視覚情報の3つの情報が影響を与えている
つまり、声のトーンや、ジェスチャーといった非言語コミュニケーションの方が、影響をもっているというものです
■コミュニケーションデザイン
・話し合いのプロセスや、ファシリテーションのスキルを学ぶ、その目標は
① 対話、議論、それを通じた、つながぎ、ひきだす 能力の機能、重要性を理解する
② セクターを超えた対話・議論を支援するファシリテートを実践し、つなぎ、ひきだす、能力を習得する
③ 話し合いに過程があることを理解し、現在がどの段階にあるかを意識できるようにする
④ 対話・議論の能力の理念とスキルの基礎を習得する
・現場の声(語り)を聴き、発信する。それをナラティブという
目次
はじめに
1章 優しさの手がかり――カギとなる概念や理論
2章 雑談のススメ
3章 大切なのは「聞くこと」
4章 難しいコミュニケーション
5章 コミュニケーションデザイン――記述から提案へ
終章 優しいコミュニケーションを考える
おわりに
参考文献
ISBN:9784004319719
。出版社:岩波書店
。判型:新書
。ページ数:222ページ
。定価:940円(本体)
。発行年月日:2023年04月
。発売日:2023年04月24日
Posted by ブクログ
コミュニケーションにおける聞く力の重要性を知った。コミュニケーションは相手と自分の双方向の行為だということを意識して「思いやり」を忘れないようにしたいと思う。
Posted by ブクログ
これまでのコミュニケーション論は、伝達に力点が置かれた。
これに対して、人と関係を紡ぐ側面を重視したのが「優しいコミュニケーション」。
聞き手への配慮がある「優しいコミュニケーション」が、どのように可能になるのかを社会言語学の立場から分析し、示したのが本書。
最初に雑談の効用が説かれる。
その効用も興味深いのだが、まず雑談に対して「正談」という用語があることに驚いた。
雑談に有効な言語ストラテジーは6つ。
1 相手の名前を呼ぶ
2 相づち、積極的応答をする
3 聞かれて答える内容に一言コメントを加える
4 肯定的コメントやほめをする
5 追加的情報提供をする
6 相手の意向に逆らう場合は和らげ表現を
抜き書きすると、何かビジネス書っぽい風情も感じられるが、でも大事なことだと思う。
その後は、地域のワークショップで活躍する熟練ファシリテーターの言語的ふるまいの分析が続く。
ファシリテーターがしていることはこんなふうだった。
1 話し合いのルールの提示
2 発言量の調整(発言が少ない人への促し)
3 その場のトピックの提示
4 話題の変わり目の提示(接続詞の活用)
5 合意事項を繰り返し確認
6 話題を取り下げられる発言者への配慮
重要なのは「聞き、聴き、訊き合い」とまとめられているように、聞き手を優先する行動のようだ。
とはいえ・・・上記のことをやっていくと、ファシリテーターの発言量も増えてしまう気がする。
こういうところは、上手いファシリテーターとそうでない人の差がつくところなのかも。
コロナ禍の政治家の言語行動を分析したところは面白かったが、なかなか難しいところもある気がする。
どうしてもその後のコロナ施策が頭をかすめてしまい、筆者の分析を中立的に判断しづらい。
また、筆者の意図から離れ、政治上のポピュリズムを追認する結果になってしまいそうな気がする。
とはいえ、自分の言語行動を振り返るよいきっかけを与えてくれた本だった。
Posted by ブクログ
言語社会学という分野を初めて知ったが、紹介されてある事例含め、とても興味深かった。
かつて、産官学民連携のまちづくりの活動に参加していたときのことを思い出した。
また、ナラティブの研究というのも面白い。
流行りの言葉に敏感になりたいし、ファシリテーション技術、話し合いの技術も向上したいので、いい導入編の書籍だった。
Posted by ブクログ
傾聴力が優しさに繋がるとあらためて感じることになった。書いている内容は、傾聴力を高める類の参考書と同じような内容だったが、わかりやすい文章で読みやすかった