今江祥智の作品一覧
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
この本の解説を書いたのは、桃井かおりさん。
今江さんの本文に続いて読むと、今江さんの世界観をこわさないようにという桃井さんの愛が感じられ、それでいて、桃井さんのあの演技スタイルそのままの、気取らず飾らずな文章。
演技もそうだけど表情豊かで個性あふれる魅力的な文章で、今江作品について桃井さんの解説以上のレビューを書くのは、正直言って難しいとも思う。
「ぼくには“子どもの時間”がなかったんだ」
あたたかい家族に恵まれているはずなのに、さびしがって日々を過ごす小学4年生の主人公“健ちゃん”。
ある冬の日に風邪で寝込んでしまい、今までかまってくれなかった祖父母父母兄姉の6人は、めいめいに健ちゃんに、とっておきの物語を聞かせようとする。
健ちゃんが取り戻そうとした子どもの時間は、確かに楽しくて夢のようなものだった。
でも、健ちゃんはあるとき急に、自分から、子どもの時間に「さよなら」を告げる・・
作者のあとがきによると「戦争と敗戦によって、まともな子どもの時間を、なしくずしに消されてしまったおのれの少年時代のことを考えていて書いたもの」だという。
戦争という避けられない理由で奪われた今江さんだけでなく、桃井さんも、子どもの時間が失われたって書いてるし、誰もが「あー、もう一度子どもに戻って、あの時失った時間を取り戻したい!」って思いを持ってるんだろうか?
なんでこんなことを書くかというと、自分にも覚えがあるから。
でも、子どもの時間なんて、子どものときには気づかないけど、実はほんのひとかけらの小さなもので、大人になってから、子どもの時間を心に描きなおすという作業を付け足すことによって、はじめてちゃんとした形になるんじゃないかな、って、この本を読んで感じた。
だから、もし、子ども時代にいろいろあって、みんなと違った子ども時代だったりしたから、他のみんながうらやましいとか、自分は満ち足りてなかったんじゃないか、とか、思い悩む必要ないって思えるようになった。
だって、子どもの時間って、大人になって育てることによって、はじめて心の栄養になるものだし、何よりも、いつかは誰もが、子どもの時間には“さよなら”しなきゃならないんだし。
最後に、宇野亜喜良さんのイラストも桃井さんの文と同様、独特の雰囲気で好き。
(2011/3/6)
Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
谷川俊太郎、江國香織、川上弘美、角田光代らによる、佐野洋子『100万回生きたねこ』への、13人の作家によるトリビュート短篇集
江國香織「生きる気まんまんだった女の子の話」
岩瀬成子「竹」
くどうなおこ「インタビューあんたねこ」
井上荒野「ある古本屋の妻の話」
角田光代「おかあさんのところにやってきた猫」
町田康「百万円もらった男」
今江祥智「三月十三日の夜」
唯野未歩子「あにいもうと」
山田詠美「100万回殺したいハニー、スウィート ダーリン」
綿矢りさ「黒ねこ」
川上弘美「幕間」
広瀬弦「博士とねこ」
谷川俊太郎「虎白カップル譚」
*****
佐野洋子「100万回生きたねこ」を読んだ作家・詩人たちによるトリビュート集。
惹かれる作品(江國香織、井上荒野、町田康、今江祥智、川上弘美など)もあれば、そう感じない作品もある。一体どうやってあの「100万回生きたねこ」からこのような作品が生まれたのか、一読ではわからないものもある。「ねこ」がまったく登場しない作品もある。「100万回生きたねこ」というテーマがありながら、内容に一貫性はなく、トリビュート集らしい幅広さがある。
「ねこ」が登場しないので、これは「100万回生きたねこ」とは関係ない作品だ、というレビューもあったけれど、僕はそうは思わない。「100万回生きたねこ」はけっして「ねこ」だけの話ではない、と思っているから。また「100万回生きたねこ」を読んだ人は本書を読まないほうがいい、というレビューもあった。確かに「100万回生きたねこ」の読後感の感動からほど遠い作品も収まっているので、そのレビューにもある意味では賛成できる。ただ「100万回生きたねこ」を読んだことによって、こんなにも幅広いリアクションが誕生した、ということも事実なので、僕は「100万回生きたねこ」を読んだ人にこそ本書を読んでほしい、と思ったりもしている。「ああ、読んで失敗した」と思われても責任は取れないけれど。