ストーリーとしての競争戦略を読んで以来に素晴らしいと思ったビジネス書。ホワイトスペース戦略と言われるだけあって、単に新しい市場を切り開いて行くための示唆だけでなく、企業にとっての既存のコアビジネスとどう協業し、何を注意しなくてはいけないかを論じている部分が会社で働くものとしてはとても関連があるように思えた。以下要約
ホワイトスペースとは既存のコアビジネスから組織的に適合しないビジネスチャンスのことを言う。隣接スペースはホワイトスペースとは呼ばない。判断基準は既存と同じ利益方程式と主要業務プロセス、経営資源が違うかどうか、逆説的にこの三つの違いを見極めないとホワイトスペース戦略は失敗する。
ビジネスモデルの基本構成要素は顧客価値提案、利益方程式、主要業務プロセスと経営資源で、この三つのどれかに革新的な改良や想像をすることがビジネスモデルイノベーションである。
顧客価値提案について、そのジョブがどれほど重要か、既存のサービスにどれほど満足しているか、ほかの選択しと比べてどれほどより有効に解決できるかがビジネスの価値である。
利益方程式はどれだけ売上を上げられるか、直接費と間接費のコスト、一回の取引で得るべき利益、経営資源の回転率から成る。まずは顧客価値提案にイノベーションを起こしてから利益方程式を柔軟に考えることが大事である。何故なら利益方程式は不確実性を多く含むから。既存のコアビジネスはこれを前提にスタートする傾向があり、それがホワイトスペース戦略が社内で潰されてしまう理由である。既存のコアビジネスとは別にチームを設けて取り組むことが良い。
主要業務プロセスとは持続可能、再現可能な形で顧客価値提案を実現するための手段。主要経営資源とは顧客価値提案を実現するために必要な人材、テクノロジー、商品、施設、distributor, channel, supplier, 資金、ブランドなど。
市場の競争基準は時間共に変化する。機能性から信頼性へ、利便性、価格へと大衆化を辿る。アイムスはこのペットフード市場が利便性への変遷を遂げている狭間で顧客価値提案で差別化出来なくなり苦しんでいるような気がする。
ビジネスモデルの類型として、ソリューション工房型、バリュー付加プロセス型、ネットワーク促進型があり、皆が知らなかった知識が民主化されるに伴ってソリューションからネットワークに変遷して行く。ソリューション工房型は経営資源の回転が遅い一方で高付加価値カスタマイズサービスを提供し、バリュー付加プロセス型はパターンに応じて一様のサービスを提供する。ネットワーク促進型は知識が民主化されてくる世の中でインターネットを介在して消費者間での知識の交換わ促し、交流場での広告収入や会員費で売上を得る。
ホワイトスペースは市場の地殻変動も注意深く見なくてはいけない。市場の需要に劇的な変化(例えば東北大震災で人々のクリーンエネルギーへの需要が高まることなど)、テクノロジーの変化(インターネットとか)、政府の政策に大きな変化が起こることなどである。
顧客のジョブを発見する際、必ずしも顧客に尋ねるのが良いとは限らない。何故なら彼らはありきたりなことしか言えないからだ(機能を追加しろ、便利にしろ、安くしろ等)。それよりも観察などを用いて、顧客がどのような課題を解決したいと考えているかをステップバックして聞くことが助けになる。
顧客のジョブには機能だけでなく、情緒的なジョブや社会的なジョブもある。例えば、車だったら誰もがみっともない車に乗りたくない。水深10kmなんて潜りもしないのに防水の時計が魅力的に見えるなどだ。ファッションなどの分野ではむしろこちらが重要だと言える。
新しい顧客価値提案を作る際、沢山のオプションを最初に検討するべきである。商品やサービスの選択、アクセスの選択、支払いスキームの選択など、全ての要素で対極を考えることがソリューションを出やすくさせる。
ビジネスモデル導入期は育成期、加速期、移行期がある。育成期の目的は顧客価値提案の成否に重要な仮説を割り出し、意識的に体型的に検証して、ビジネスモデルの実現性を早期に判断することだ。小規模のテストマーケットが良い手段である。
加速期は再現性のあるプロセスを築くことに力を注ぐ。移行期は既存のコアビジネスがある企業ならではの時期で、コアビジネスと統合すべきか否かを判断する。何故なら新規事業は今までコアビジネスで築かれたやり方、人々の価値観に潰されてしまうことが往々にしてあるから。
進歩が起きるときは、いつも同じパターンが繰り返される。最初は無視される。その後は、頭がおかしいと言われる。次は危険だと言われる。やがて沈黙が生まれる。そして気がつくと、誰も反対を唱えなくなっている。トニーベン(イギリスの元国会議員)
既存のルール、行動規範、評価基準は足かせになる。ビジネスのルールを見直し、評価基準を変えなくてはいけない。
企業の経営陣の仕事はビジネスを伸ばすこと、それはコアビジネスを順調に運営する一方で、新しいビジネスモデルを実践するための資源に投資し、このビジネスモデルの作る、運営、廃止のサイクルを繰り返すことだ。その際に適切なリスク管理が必要だ。
新しいビジネスモデルを作る際はまず戦略優先で考えて、それに合わせてシステムや組織を修正すべき。顧客に価値を提供することが全てであるという優先の付け方が重要だ。そしてそれを提供する能力をつけるべきだ。逆の発想はアイデアを小さくする。ビジネスイノベーションはスケールの大きな目標を掲げるべきだ。既存の市場での競争のあり方を変えたり、新しい市場をゼロから作り出したり、業界の様相を変えたりする必要がある。コアビジネスが資産を生み出す作業は他の人に任せる。
勉強になった!