本書は、一人一人の行動からいかにして組織を変えていくか、その具体的なプロセスに加え、特にリーダーとしての部下との関わり方を説いた一冊である。
リーダーとして大切にすべき要点が、多くの事例や著者の経験をもとに非常に明快に整理されており、多くの気づきを得ることができた。
気づきその①「人を変える」のではなく「変わりたくなる場をつくる」
特に感銘を受けたのは、「組織改革とは、人を変えることではなく、人が自ら変わりたくなる場をつくること」という視点である。リーダーが部下をコントロールしようとするのではなく、部下が主体的にキャリアを設計し、必要なスキルを選び取っていく「キャリア自律」をいかに支援できるか。そのための問いかけや関わり方の重要性が、理論(クルト・レヴィンの変革ステップ等)と実践の両面から丁寧に示されている。
気づきその②リーダーこそ「弱さ」を見せる
また、組織の心理的安全性を高めるための「上司が率先して弱さを見せる」という考え方には非常に勇気づけられた。「詳しくないから教えてほしい」「自分は昔こんな失敗をした」といった自己開示が、結果としてメンバー間の対話を生み、個人のパフォーマンスを「集合天才型」の組織へと昇華させていくのだと説く。
私自身がまったく未熟な人間だと思っているので、完璧なリーダーを演じる必要はまったくなく、メンバーを巻き込み、共に迷い、共に考える姿勢こそが今の時代に求められるリーダー像なのだという著者の主張には背中を押される思いだった。
気づきその③成長を最大化させる「挑戦空間」
教育の側面では、「快適」「挑戦」「混乱」という3つの空間(いわゆるラーニングゾーンモデル)を用いた人材育成の捉え方が非常に示唆に富んでいる。学びのない快適ゾーンでも、冷静さを失う混乱ゾーンでもなく、少し背伸びが必要な「挑戦ゾーン」に部下を置くこと。そして、リーダーは失敗のリスクを承知の上で「しっかりフォローする」と約束し、結果ではなくプロセスに対してフィードバックを行うこと。この積み重ねが、著者の提唱する「エンジョイメント」、すなわちメンバー一人一人が仕事を通じて自分の存在意義を自覚し、夢中になって仕事に取り組み、深い喜び・満足感を得ることにつながっていく。
最後に総評
1on1の在り方から組織変革のステップまで、リーダーが現場で直面する課題への具体的な処方箋が詰まった一冊だ。
組織を変えたい、部下に変わってほしい、と悩むリーダーに向けて、部下と「どう関わるか」「どのように信頼を築くか」という”自分自身の姿勢”を見つめ直すきっかけを与えてくれる良書である。