アルジェリア戦争
フランスと戦後世界をつくった植民地独立闘争
著:黒田友哉
出版社:中央公論新社
中公新書 2892
アフリカの本を手に取ったつもりであったが、そこにあったのは、フランスを中心としたヨーロッパと、中東世界である。
本書が対象としているのは、マグレブ。
アラビア語で、太陽が沈む場所という意味で、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、モーリタニアの5ヵ国をいい、サハラ砂漠の北にある国々のことである。
そして、アラブ諸国(アラビア語を話す国)であり、イスラム教の国、ウンマ(イスラームの信者の共同体)である。
第二次世界大戦後に、アフリカ諸国に独立機運がたかまり、マグレブで最初に独立運動がおこったのはアルジェリアであった。アルジェリア戦争(1954~1962)。結果的に、独立戦争と、内戦のために、フランスの植民地下にあった、4カ国の中で、アルジェリアが最も遅い独立となってしまった。
リビア イタリア 1951独立 738万
チュニジア フランス 1956独立 1228万
アルジェリア フランス 1962独立 4681万
モロッコ フランス 1956独立 3806万
モーリタニア フランス 1960独立 517万
戦後第四共和政に移行していたフランスは、アルジェリア戦争のため、第五共和制にさらに移行することとなる。
ドゴール大統領のもと、ニ頭政と、大統領権限を強化した政治体制である。
第五共和制とは、ドゴールを担ぎだし、アルジェリア問題に対応するために、フランス国民が選んだ政治形態なのである。
第四共和政(1946/10/25~1958/10/04)
第五共和制(1958/10/04 ~)
フランスの植民地の中で、始めに、独立運動が始まったアルジェリアに対して、フランスは、自国と同等の権利を持たせることで、その運動を抑えようとした。
が、対立の軸としては、宗主国と植民地というものだけではなく、キリスト教とイスラム教、いわゆる、聖戦(ジハード)という対立軸、拡張した中東における、ユダヤ対アラブ、といった複雑な様相を呈している。
やがて、アルジェリア戦争は、エジプトなどのアラブ諸国の支援(ムスリムの連携)、アフリカ全体の独立運動(バンドン会議)といった様に、拡大していき、国連の場でも扱われるようになっていく。
第二次世界大戦で、アルジェリアの力を借りたフランスを、戦後待っていたものは、ゲリラ化した、アルジェリアの過激派たちであった。(アメリカとアフガニスタンに似ていると感じました)
アルジェリア問題とは、NATOの問題であり、中東問題であり、植民地への支援の問題である。
フランス国内には、反アラブのOAS(右翼)が生まれ、「ジャッカルの日」のように、ドゴール暗殺未遂も何度も起きている。
安保理の常任理事国のひとつである、フランスですら、アジア・アフリカの独立の流れをとめることもできず、多くの植民地を手放すことになっていくのである。
目次
まえがき
序章 戦争前史
オスマン帝国以前/オスマン帝国の支配/フランス占領の開始/アラブ民族主義との結合/カビリーの蜂起/アルジェリアでの同化政策/第一次世界大戦の影響/両大戦間期とENAの登場/第二次世界大戦
第一章 独立戦争の開始
「赤い万聖節」/アッバースの反応とFLNへの接近/独立運動の国際化の始まり/バンドン会議とアジア・アフリカの連帯/ナセルの登場とマグレブの参加/バンドン会議の短期的影響/強硬路線とヨーロッパ統合構想との交錯/アルジェリア強硬路線への回帰/ドゥフェール海外領土相と植民地の将来
第二章 アラブ諸国の参戦とドゴール復帰
スエズ危機・戦争とアルジェリア問題の連関/スエズ危機・戦争のインパクトとその背景/危機から戦争へ/ハンガリー動乱と「二重の危機」/英仏連合・FTA構想の興亡/スンマム会議からアルジェの戦いへ/拷問、検閲、監獄、収容所/モレ政権崩壊とアルジェの戦いの終結/マグレブの国境紛争/サキエト事件と英米の調停/ドゴールの召喚/アルジェでのコロンによるクーデター/ドゴールの首相就任
第三章 戦場の拡大と膠着
戦場の本国への拡張/FLNによる本土でのテロ攻撃/ドゴール外交の始動/GPRAの成立/ドゴールのアフリカ政策の展開/コンスタンティーヌ・プランの発表/「勇者の平和」提案/ドゴールの大統領就任演説/EECの救済とアルジェリアの包摂/シャル計画の開始
第四章 自決の承認から停戦交渉の模索へ
ドゴールの「自決演説」/自決演説の意味/ムランでの休戦交渉の「失敗」/知識人たちのアルジェリア/国連での反植民地主義の高まり/OASの台頭
第五章 エヴィアン交渉
外交舞台/主要な争点/軍事面での争点/外交交渉での取引/交渉妥結の構造的要因/アラブの連帯、ヨーロッパの連帯/国連の圧力
第六章 和平協定の締結
エヴィアン協定における「独立」/脱植民地化の波の中で/脱植民地化の流れへの影響/フランス外交への影響/フランス外交戦略の変化/中東政策の変化/停戦からアルジェリア独立へ/ドゴール暗殺未遂事件/憲法採択とベンベッラ政権の発足
終章 アルジェリア戦争は何を遺したのか
休戦交渉以前/休戦交渉以後/独立後のフランス-アルジェリア関係/第三世界の雄との「対決」/ミッテランの登場と「ユダヤ例外主義」/「危機の一〇年」/シラクによる戦争の承認/記憶をめぐる闘いの終焉?/惨劇を繰り返さないために
あとがき
参考文献
ISBN:9784121028921
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:208ページ
定価:900円(本体)
2026年01月25日 発行