AIを使って作品(例えば小説)を書いたとき、その作品の著作権はどうなるのでしょうか?
本書は2025年1月23日初版の図書ですので、最新(または最新に近い)情報を提供していると言えると思います。著者は、竹居信利さん、橘 祐史さんというお二人の弁理士さんです。弁理士さんは、特許や商標の出願、著作権などの知的財産権を扱う専門家です。
1章では「知的財産権を知る」として、その種類や特許庁での手続き、著作権について解説されています。
2章では「AIのしくみと関連技術」として、その種類やしくみ、利用のされ方が解説されています。
そして、3章では「AI関係者が知るべきこと」として、AI生成物の権利、AI提供者との権利関係、創作者が知っておきたいこと、著作権侵害の判断基準などが解説されています。このレビューでは、3章の著作権侵害の判断基準を中心に、わたしが学習した内容を書かせていただきます。
はい。まず、ChatGPTに、次の質問を入力し、小説のストーリーを書いてもらいました。(これ、面白くって、面白くって、クセになりつつあります♪w)
〔質問〕
「あなたはプロの作家です。女子中学生同士の友情を描いた小説を書きます。地方の公立中学校に通う女子中学生が所属する文芸部で小説を書きながら成長し、友だちとの関係を築いていくストーリーです。卒業と友との別れや高校受験も入れてください。最後は卒業式の日という設定でストーリーを800字で書いてください。」
それに対するChatGPTの回答は、こうです。
『 あらすじ
地方の小さな公立中学校に通う3年生の奈央は、文芸部に所属する少女。物静かで控えめな彼女は、小説を書くことが唯一の心の拠り所だった。部員は少なく、同級生の明るくお調子者の彩花、後輩のしっかり者の凛だけ。部室でのおしゃべりや、それぞれが好きな小説の話題に花を咲かせる日々は、奈央にとってかけがえのないものだった。
しかし、中学最後の年、卒業が近づくにつれ、未来への不安や人間関係の変化が彼女を悩ませる。高校受験を控えた中で、彩花と進路が分かれることが分かり、2人の間に微妙な溝が生じる。一方で、凛は「奈央先輩の小説が好きだから、絶対に続けてほしい」と素直な思いを伝える。凛の言葉に勇気をもらった奈央は、改めて小説を書く意味を考え始める。
ある日、奈央は卒業前の文芸部での最後の活動として、小説を書くことを提案する。それぞれが「未来」をテーマに短編を書き、それを一冊の文集にまとめることに決まる。彩花は「私の未来なんて、全然分からない」と投げやりだったが、奈央が「分からなくてもいい。一緒に想像しよう」と語りかけたことで、少しずつ書き始める。
卒業式の日、3人で完成した文集を読み返す時間が訪れる。彩花の短編には、仲間と過ごした何気ない日常への感謝が綴られていた。それを読んだ奈央は思わず涙をこぼし、「彩花と一緒に過ごした日々が私の一番の宝物だった」と素直な気持ちを伝える。凛も目を潤ませながら、「またいつか文芸部で集まりたい」と願う。
式が終わり、桜の花びらが舞う校庭で奈央と彩花は固く握手を交わす。「離れても、私たちはいつでもつながってる」と奈央が言うと、彩花は笑顔で頷く。「約束だよ。ずっと書き続けるんだから」。奈央は胸にしまっていた文集をそっと抱きしめながら、未来への一歩を踏み出すのだった。』
いや~ん、面白そう~♡ 実際に書き上げて、子どもに読まそうかしらw
では、これの著作権を検討してまいりましょう。
3章 「AI関係者が知るべきこと」から
「AI生成物の権利は誰のものか」(P.110)で教えてもらいます。
まず、AI生成物の著作物性については、
(1)AIが自律的に生成した場合は、著作物性はないそうです。
(2)人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを利用して生成物を得た場合は、著作物性があるとされるそうです。
そして、「道具」としてAIを利用したといえるためには、
(a)創作意図
(b)創作的寄与 があったと言えればよいそうです。
(a)創作意図としては、自ら創作の意図を持ってプロンプトを入力している以上、満足しているということで、
(b)創作的寄与としては、例えば、ある人が生成AIを利用したデータを得た時に、その時のプロンプトをそのまま利用してデータを得た場合は、創作的寄与は無い。そのプロンプトを調整してプロンプトを作成してデータを得た場合は創作的寄与があるそうです。今回の場合、わたしが独自でプロンプトを入力していますから、創作的寄与はあると判断されそうです。
次に、AI自体の提供者は、AI生成物について権利を持たないのでしょうか?
それについては、ライセンス条項に基づき、プロンプトを入力して得た生成物は、利用者が権利を持つとされているようです。ただし、生成物に対しての責任はAI利用者が持つべきとされているそうです。また、デフォルトの規定では、生成物はOpenAI社が機械学習のために利用してよいとされているので、個人的な情報や企業内の秘密としている情報を入力してしまうと、情報漏洩が生じるため留意が必要とのことです。
そして、生成物を公開したり業務に使おうとしたときには、次の2点に注意が必要ということです。
(1)生成物が著作権等、他人の権利を侵害していないこと
(2)出力内容が利用目的に照らして正当であること
本書に当たった現段階のわたしの感想としては、生成AIはあくまで道具として利用して、生成物はアイディアの補助とし、自分のオリジナリティのある著作を作りこんでいく姿勢が大切なのかなぁ、といったところです。ですから、先のAIの小説案も、わたしが中身を書き込んで、他の人の著作権を侵害しないオリジナルなものに仕上げていく必要があると言えるのでしょう。
さて、詳しくは、本書に当たって頂いて、ご自分の判断で生成AIをご活用くださるようお願いいたします。
本書は、有用で読み込むに値する図書であるという感想も持ちました。
ちなみに、本書の4章は、「現状のまとめと未来です」 現状のAIにできることとできないこと、国内外の動きなどが解説されています。
今後、AI技術はさらに進歩し、活用に関する判例も蓄積されていくことでしょうが、既得権の過剰な保護や古い固定観念などの不要な足かせで自縄自縛となり、他国に比して遅れが生じることなどがないように、わたしたち専門家ではない者も知識と状況の把握をアップデートしたほうが良いと思っています。
新しい技術を使えることは、現代に生きる者の特権だと思いますし、その社会環境下で芸術も哲学も進化(深化)していくのでしょう。