【感想・ネタバレ】AIの作品は誰のもの? 弁理士と考えるAI×著作権のレビュー

あらすじ

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◆知的財産から見る生成AIと権利問題◆
「結論を出す」本ではありません。過去の事例や状況を整理して「生成AI時代の著作権/知的財産権を考える」本です。
昨今めざましい発展を見せるAI関連技術ですが、そのひとつに画像や文章などを生み出せる「生成AI」があります。テキストからの画像生成、文章のまとめや整形などその活用は発展を続けており、適した利用を行えば大きな効率化や工夫を図れると言えるでしょう。しかしながらクリエイティブ分野に代表される著作権問題など課題や懸念点は多く、「AI生成物の権利・責任の所在」「教師データの著作権」などの問題・課題も新たに生まれる中で現行法の整備は追いついていないと言わざるを得ません。

本書では特許や著作権に精通した弁理士の視点から、知的財産の中身やAIのしくみ、AI周辺の権利問題にいたるまでを過去の裁判や海外の事例などを踏まえつつ要点および論点・争点となっている箇所を整理、解説して解説していきます。AIを使いたい人・作りたい人・使われたくない人のすべてに役立つ、これからを考えるための一冊です。


■こんな方におすすめ
・自分の権利を守りたいクリエイター、個人でのAI利用に興味のあるユーザ、AI開発およびAI生成物を利用した活動(営利目的を含む)をしたい人


■目次
●1章 知的財産権を知る
・知的財産権とは
・知的財産権の種類
・知的財産権を保護する意味
・特許庁での手続はどんなものか
・知的財産権の効力
・著作権のなかみ
・権利が侵害されるとき
●2章 AIのしくみと関連技術
・AIの種類と生成AI
・AIはどんなものか
・AI はどう利用されているのか
●3章 AI関係者が知るべきこと
・AI利用者が知っておくべきこと
・創作者が知っておきたいこと
・著作権侵害の判断基準
・AIの提供者が知るべきこと
・AIの製作と著作権
●4章 現状のまとめと未来
・いまのAIにできること
・いまのAIにできないこと
・AIの問題点
・生成物が拡散される以外の問題点
・海外と国内のAIに対する動き
・規制に関する問題点(すこしだけ未来のはなし)


■著者プロフィール
竹居信利(たけい のぶとし):すざく国際特許事務所パートナー 弁理士。国際基督教大学教養学部卒、国際基督教大学大学院(基礎理学専攻)修了。修士(理学)。弁理士(2002年−)。国内特許事務所にて、電気・電子・ソフトウエア系を中心に、特許,商標出願の業務を行い、2007年に現在の事務所を設立。弁理士会会務として、特許委員会(進歩性検討会)、中央知的財産研究所副所長。また国内の大学で知的財産権に関する非常勤講師活動などを行っている。主な著作:「知的財産戦略教本」(共著)、「特許制度のあり方の調査研究」(共著)、「進歩性の判断は如何にあるべきか」(共著)など。

橘祐史(たちばな ゆうし):株式会社知財ビジネスリンク代表取締役社長。NAV国際特許商標事務所所長 弁理士。東京大学法学部卒、筑波大学大学院経営システム工学専攻修士課程修了(経営学修士(MBA))、筑波大学大学院法学研究科修士課程修了(知的財産法、法学修士)、同博士課程単位取得満期退学。旭化成株式会社経営企画部において、繊維事業及び石油化学樹脂事業の事業企画立案(中長期計画の編成、設備投資計画の編成業務を担当)を担当したほか、新規インターネット事業の立ち上げ、海外JV の立ち上げプロジェクト、グループ関連会社のCI 活動や海外事業の立ち上げ等に従事。旭化成株式会社を退社後、特許商標事務所を設立、代表弁理士に就任。さらに、知的財産をベースにした経営戦略構築のためのコンサルティングを行う株式会社知財ビジネスリンクを設立、代表取締役に就任、現在に至る。

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Posted by ブクログ

 AIを使って作品(例えば小説)を書いたとき、その作品の著作権はどうなるのでしょうか?

 本書は2025年1月23日初版の図書ですので、最新(または最新に近い)情報を提供していると言えると思います。著者は、竹居信利さん、橘 祐史さんというお二人の弁理士さんです。弁理士さんは、特許や商標の出願、著作権などの知的財産権を扱う専門家です。

 1章では「知的財産権を知る」として、その種類や特許庁での手続き、著作権について解説されています。
 2章では「AIのしくみと関連技術」として、その種類やしくみ、利用のされ方が解説されています。
 そして、3章では「AI関係者が知るべきこと」として、AI生成物の権利、AI提供者との権利関係、創作者が知っておきたいこと、著作権侵害の判断基準などが解説されています。このレビューでは、3章の著作権侵害の判断基準を中心に、わたしが学習した内容を書かせていただきます。

 はい。まず、ChatGPTに、次の質問を入力し、小説のストーリーを書いてもらいました。(これ、面白くって、面白くって、クセになりつつあります♪w)

〔質問〕
 「あなたはプロの作家です。女子中学生同士の友情を描いた小説を書きます。地方の公立中学校に通う女子中学生が所属する文芸部で小説を書きながら成長し、友だちとの関係を築いていくストーリーです。卒業と友との別れや高校受験も入れてください。最後は卒業式の日という設定でストーリーを800字で書いてください。」

 それに対するChatGPTの回答は、こうです。

『 あらすじ
 地方の小さな公立中学校に通う3年生の奈央は、文芸部に所属する少女。物静かで控えめな彼女は、小説を書くことが唯一の心の拠り所だった。部員は少なく、同級生の明るくお調子者の彩花、後輩のしっかり者の凛だけ。部室でのおしゃべりや、それぞれが好きな小説の話題に花を咲かせる日々は、奈央にとってかけがえのないものだった。

 しかし、中学最後の年、卒業が近づくにつれ、未来への不安や人間関係の変化が彼女を悩ませる。高校受験を控えた中で、彩花と進路が分かれることが分かり、2人の間に微妙な溝が生じる。一方で、凛は「奈央先輩の小説が好きだから、絶対に続けてほしい」と素直な思いを伝える。凛の言葉に勇気をもらった奈央は、改めて小説を書く意味を考え始める。

 ある日、奈央は卒業前の文芸部での最後の活動として、小説を書くことを提案する。それぞれが「未来」をテーマに短編を書き、それを一冊の文集にまとめることに決まる。彩花は「私の未来なんて、全然分からない」と投げやりだったが、奈央が「分からなくてもいい。一緒に想像しよう」と語りかけたことで、少しずつ書き始める。

 卒業式の日、3人で完成した文集を読み返す時間が訪れる。彩花の短編には、仲間と過ごした何気ない日常への感謝が綴られていた。それを読んだ奈央は思わず涙をこぼし、「彩花と一緒に過ごした日々が私の一番の宝物だった」と素直な気持ちを伝える。凛も目を潤ませながら、「またいつか文芸部で集まりたい」と願う。

 式が終わり、桜の花びらが舞う校庭で奈央と彩花は固く握手を交わす。「離れても、私たちはいつでもつながってる」と奈央が言うと、彩花は笑顔で頷く。「約束だよ。ずっと書き続けるんだから」。奈央は胸にしまっていた文集をそっと抱きしめながら、未来への一歩を踏み出すのだった。』

 いや~ん、面白そう~♡ 実際に書き上げて、子どもに読まそうかしらw
 では、これの著作権を検討してまいりましょう。

 3章 「AI関係者が知るべきこと」から
 「AI生成物の権利は誰のものか」(P.110)で教えてもらいます。
 まず、AI生成物の著作物性については、
(1)AIが自律的に生成した場合は、著作物性はないそうです。
(2)人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを利用して生成物を得た場合は、著作物性があるとされるそうです。

 そして、「道具」としてAIを利用したといえるためには、
 (a)創作意図
 (b)創作的寄与 があったと言えればよいそうです。

 (a)創作意図としては、自ら創作の意図を持ってプロンプトを入力している以上、満足しているということで、
 (b)創作的寄与としては、例えば、ある人が生成AIを利用したデータを得た時に、その時のプロンプトをそのまま利用してデータを得た場合は、創作的寄与は無い。そのプロンプトを調整してプロンプトを作成してデータを得た場合は創作的寄与があるそうです。今回の場合、わたしが独自でプロンプトを入力していますから、創作的寄与はあると判断されそうです。

 次に、AI自体の提供者は、AI生成物について権利を持たないのでしょうか?
 それについては、ライセンス条項に基づき、プロンプトを入力して得た生成物は、利用者が権利を持つとされているようです。ただし、生成物に対しての責任はAI利用者が持つべきとされているそうです。また、デフォルトの規定では、生成物はOpenAI社が機械学習のために利用してよいとされているので、個人的な情報や企業内の秘密としている情報を入力してしまうと、情報漏洩が生じるため留意が必要とのことです。

 そして、生成物を公開したり業務に使おうとしたときには、次の2点に注意が必要ということです。
 (1)生成物が著作権等、他人の権利を侵害していないこと
 (2)出力内容が利用目的に照らして正当であること

 
 本書に当たった現段階のわたしの感想としては、生成AIはあくまで道具として利用して、生成物はアイディアの補助とし、自分のオリジナリティのある著作を作りこんでいく姿勢が大切なのかなぁ、といったところです。ですから、先のAIの小説案も、わたしが中身を書き込んで、他の人の著作権を侵害しないオリジナルなものに仕上げていく必要があると言えるのでしょう。

 さて、詳しくは、本書に当たって頂いて、ご自分の判断で生成AIをご活用くださるようお願いいたします。
 本書は、有用で読み込むに値する図書であるという感想も持ちました。
 ちなみに、本書の4章は、「現状のまとめと未来です」 現状のAIにできることとできないこと、国内外の動きなどが解説されています。

 今後、AI技術はさらに進歩し、活用に関する判例も蓄積されていくことでしょうが、既得権の過剰な保護や古い固定観念などの不要な足かせで自縄自縛となり、他国に比して遅れが生じることなどがないように、わたしたち専門家ではない者も知識と状況の把握をアップデートしたほうが良いと思っています。
 新しい技術を使えることは、現代に生きる者の特権だと思いますし、その社会環境下で芸術も哲学も進化(深化)していくのでしょう。

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2025年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書はAIと知的財産の関係を、「提供者」と「利用者」という二つの視点から整理した一冊です。

利用者の立場から読むと、AI生成物の著作権や情報漏洩リスク、責任の所在、教師データの扱いなど、多くの論点が示されており、非常に考えさせられました。

さらに、各国政府の取り組みも紹介されており、日本では内閣府・総務省・経産省・文化庁が関わることを初めて知りました。

全体的に専門的で難解な部分もありますが、AI時代を生きるうえで基礎知識として押さえておくべき内容が詰まった必読書だと感じました。今後も定期的なアップデートが必要です。

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2025年09月26日

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