日本の反体制政治闘争を知る上で、ヘタな先入観を持たないで読めば、本書は益すること大であると見込まれる。
お節介かもしれないが、世の中、何事も「中庸の精神」「バランス感覚」「自己対象化」等が大切である。「自己対象化」とは、簡単に言えば、「オレは間違っているかもしれない」という視点のこと。従って、本書だけでなく、並行して下記の書籍なども読むとよいと思う。どれを読むかは、各人の好みである。あえて「耳に痛いこと」を書いてある本も加えたのは、「自己対象化」を涵養する一助たらんとしたためである。
●中北浩爾『日本共産党 「革命」を夢見た100年』(中公新書 2695)
●立花隆『日本共産党の研究』(全3冊、講談社文庫)
●佐藤優『日本共産党の100年』(朝日新聞出版)
●有田芳生、森田成也、木下ちがや、梶原渉『日本共産党100年 理論と体験からの分析』(かもがわ出版)
●有田芳生、池田香代子、内田樹、木戸衛一、佐々木寛、津田大介、中北浩爾、中沢けい、浜矩子、古谷経衡 『希望の共産党 期待こめた提案』(あけび書房)
●産経新聞政治部『日本共産党研究――絶対に誤りを認めない政党』(産経新聞出版)
●松竹 伸幸『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書 1396)
●筆坂 秀世『日本共産党』(新潮新書 164)
●松崎いたる『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)
すでに化石のようになった世代だが、猪木正道や勝田吉太郎の本も、ワールドワイドでの共産主義の栄枯盛衰を知る上で参考になると思う。
以下、取り留めのない話。
インテリジェンスの大家で、何故か創価学会を高く評価している佐藤優氏によると、「しかし共産党は大きく舵を切った。『正しい戦争』があるという論に踏み込んだのだ」とのこと。それがほんとうならば、日本共産党を「戦争絶対反対」の党と思っている純真な私はショックである。
日本共産党は旧ソ連の覇権主義を厳しく批判してきたが、2022年以降ウクライナに侵攻しているプーチン・ロシアも厳しく批判している。奇しくも日本の親米保守右翼と同様に旧ソ連とロシアを毛嫌いし、その結果、プーチン・ロシアが暴発することを承知の上でNATO東方拡大工作を執拗に続けているアメリカ/NATOと足並みを揃えているように見える。ウクライナを支持することは立派な見識だが、それはプーチン・ロシアから見れば敵対行為になるから、日本共産党にはロシアと戦争する意思があると見なすわけだ。これが佐藤優氏が指摘する「『正しい戦争』があるという論に踏み込んだ」に関連があると思われる。違うかもしれないが。
さらに話は逸脱する。長年日本共産党を支持している友人に、NATO東方拡大を推進するアメリカ/NATOを批判しているエマニュエル・トッド氏の説を紹介したら、「お前はプーチンを擁護している」と厳しく叱られてしまった。私はただ「ケンカ両成敗」と言いたかったのだが、うまく伝わらなかった。このトラブルを聞いたかつて全共闘シンパだったという団塊世代の知人は、「そういう唯我独尊、無謬信仰、非寛容はスターリニズムにつながるのです」と宣った。「スターリニズム」という死語を耳にして私は驚いた。
とにかく、日本共産党におかれては、「戦争絶対反対」を堅持し、プーチン・ロシアだけでなく、アメリカ、EUなどの覇権主義国諸国にも徹底的に反対してほしいと思う。釈迦に説法であるが、現在、中国、ロシアをはじめとする専制主義の国々は、貪欲な欧米資本による独占的な支配を恐れている、という内情も十分考慮してあげたらよいと思う。