原題は『Engineering Management for the Rest of Us』である。
本書は専門領域としてのエンジニアリングに触れることはほとんどなく、一般的なマネジメントについて記述している。邦題に含まれている「エンジニアリングが好きな私たちのための」という表現は対象を狭めているようにも捉えられるが、逆説的にむしろそのような人に手に取ってもらいたいという気持ちの表れなのではないかという気がする。
平易な文章で書かれていて、読みやすい。
全体的に同意できないような内容の記述はない。啓蒙的な内容も多く網羅的ではないが、著者がマネジメントにおいて大切だと思う要点はよくまとまってい...続きを読む る。
評価や採用など本書ではカバーされない領域があり、それらの話題については他の情報源に頼る必要がある。本書は、例外的でない日常のマネジメントのサポートとなるような助言を提供する書籍と言える。
本書は大きく4つのパート、自分のチーム/コラボレーション/チームが最高の仕事をできるように支援する/自分の仕事、に分かれている。
Part1「自分のチーム」では、チームを作るためのツールが紹介される。
> リーダーとしてあなたが最初に行動しないといけません。あなたは自ら信頼に値することを示すと同時に、他人を信頼することも必要です。これは、チーム内では弱みを見せても大丈夫なことを意味します。(chapter3 信頼と弱さ 弱みのモデリング)
> 企業は複数のグループから構成されますが、それらのグループは共に働いてこそ成功できるのであり、いかなる犠牲を払っても自分たちのグループだけ守ればいいという訳ではありません。...組織の健全性は、互いに協力して働けることにかかっています。(chapter4 自分のチームは「彼ら」ではなく「私たち」 より広範囲の組織)
Part2「コラボレーション」では、マネージャーとメンバーのコミュニケーションの仕方や効果について書かれる。
> あなたは、ただ現状を維持するためにこの役割にいるのではありません。組織(文化、プロセス、システム、プロダクト)を改善するためにそこにいるのです。...「物ごとをより良くすること。それが仕事なのです」(chapter10 チェンジマネジメント)
> フィードバックは、二人の顔の重要な議論や、ドキュメントへのコメント、また情報を伝えるときに人の顔に現れるほとんど気づかないような感情として現れます。(chapter11 フィードバックの与え方)
> ミーティングの目的の一部は、議論そのものなのです。(chapter13 良いミーティング)
> 「自分の好みをよく理解しておかなければなりません。なぜなら、何をしようとも、あなたは間違っていると誰かに言われるからです」(chapter14 対立のマネジメント)
Part3, Part4 では、チームや自分の仕事に対する優先度付けやエンジニアリングに近しい領域の話題について触れられている。