南アフリカのある白人一族を主役に、アパルトヘイトが廃止される過渡期の時代の同国を描いているが、視点の置き方が面白い。俯瞰視点から見下ろすように、一人の内面から別の一人の内面へとシームレスに移りかわっていくため、注意深く読まないと現在誰の視点なのか見失ってしまう。そして「視点」には微かに妙な自我があり、クライマックスでは突如登場人物に呼びかけたりもする。あらすじにも「神の視点」とあるこの独特の視点の置き方が、誰か一人に肩入れするでもなく、バラバラで自己中心的な一族それぞれの言い分と滑稽さを公平に浮き彫りにしている。