キム・ワンの作品一覧
「キム・ワン」の「死者宅の清掃」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
Posted by ブクログ
孤独は都市生活に付きもののありふれた状態とはいえ、孤独死というものは寂しく、惨たらしいものだと本書を読んでつくづく思う。そんな当たり前の他者への共感さえ、日々さらされる大量の刺激的な情報によって、たいぶ麻痺していたのだなと反省した。
もちろん、表題から予想されるような、グロテスクでショッキングな描写もそれなりにあるが、非日常を見せられるというよりはむしろ、日常生活に目を凝らすと浮きでる現代の地獄を見ている感じがしてくるような文章だった。そこが他の特殊清掃モノと違うところだ。
都市化した社会がないことにしている、孤立してしまった人たちの苦しみや死というものが、腐敗した遺体からものすごい臭気となって、ちゃんと見てくれ、無いことにしないでくれと訴えているようだった。その辺り、孤独死の遺体のシミが霊のように見える傑作Jホラー『回路』と似ている。ただこちらは恐ろしさよりも悲哀が強く、より人間的であり、孤独死のむごさをしみじみ感じさせられる。テレビの向こう側にさせてくれない。
例えばペットボトルに尿を溜め込んでいた部屋の住人の不可解さ。著者と一緒に、どうしてそんなことになってしまったのだと、どんより不安になった。その分からなさにブラックホールのような絶対的な孤独を感じた。著者が丁寧かつ共感的に描く「誰かの残した部屋」にはそれぞれ、そうした割り切れない存在感があった。無視できない異様でゴツゴツしたもの。これが他者性なのかと思う。それを無視し、他者との葛藤から逃れようとするのが心の都市化というものであり、孤独死を量産する社会のあり様でもある。
本書はそんな都市化されてツルツルになりかけた心に再び毛を生やしてくれるような本だった。また、孤独死や少子高齢化など、日本と韓国の社会状況がかなり似ているのも興味深かった。