『スギと広葉樹の混交林』清和研二 農文協は山梨県林務のNさんから推薦された本。
今取り組んでいる弱度間伐で下層植生を回復させれば良しとしてきたスギ人工林施業にモヤモヤしてきたが、著者の清和研二さんが、その正解を教えてくれた1冊。
下層植生が回復しても森林は健全にはならないことを科学的根拠に基づき調査研究を20年かけて取り組まれた成果から導き出したからこそ説得力がある。
とにかく、心に刺さる言葉だらけです。
清和研二さんが説くスギ人工林を強間伐して広葉樹を林冠レベルで混交させる混交林づくりに挑戦したい!
林業現場で働く皆様に強くお勧めする1冊です。
「混交林化による生態系サービスの向上は計り知れないものがある」
「その恩恵は森林所有者や山間部に住む人たちのみならず地球に住む全ての人類、そして全ての生き物が享受できるものなのである」
「混交林化することで水質浄化機能などの生態系サービスは驚くほど回復する」
「広葉樹の種多様性は生態系サービスに大きく影響するので大事な指標だ
多くの樹種が混交する林分を目指すなら強度に間伐するのが良い」
「下層植生レベルでの種多様性にはほとんど意味はない。多様な樹種がただ存在すればよいのではなくサイズの大きな広葉樹の多様性が生態系の機能を高めている」
「窒素は植物に欠かせない栄養素」
「硝酸態窒素の流出を防ぐために身近なスギ林から混交林化を進める、そうすれば森に清流が戻り我々はもっと安全でおいしい水を飲むことができる」
「種多様性の高い植物群集ほどより高い生産力を示す」
「森林生態系でも多くの樹種が混交する林分ほど生産性が高い」
「森は物質が無駄なく循環する生態系」
「自然の仕組みをじっくり観察して天然のメカニズムに倣う林業を本気で行う時期が来てある」
「樹木の形態やそれに伴う木材の品質は種固有の形態的可塑性と林分内の空間的位置の組み合わせが大事」
「地域固有の種多様性を持つ巨木林を目指す。長い時間をかける覚悟で保育しながら同時に収穫していく。そのためにはスギも広葉樹も全層間伐が最適である」
「林業と林産業は分けてはならない
細くて無名な広葉樹が売れる時代」
「森林認証制度の認証基準見直しが必要弱度の間伐で下層植生が回復しても森林が健全にはならない。スギ人工林を強間伐して広葉樹を林冠レベルで混交させることではじめて生態系サービスが強く発揮される。
無駄のない窒素循環によって水質が浄化されると同時に生産力が飛躍的に増加する。それだけでなく土壌への水浸透を促し洪水や渇水を防ぐ能力も増加させる。広葉樹が成熟すれば野生動物との共存も図られるかもしれない」
科学的知見に裏付けされた政策でなければならない
自然の森ができあがるメカニズムと違う方法で近年の林業が営まれている