【感想・ネタバレ】スギと広葉樹の混交林のレビュー

あらすじ

戦後の拡大造林によって全国隅々まで広がったスギ人工林は水質浄化や洪水防止、持続的生産といった生態系サービスを著しく損なっている。それでは生態系サービスを向上させる森林とはどのようなものか。東北大学の試験地のスギ林での無間伐区、弱度間伐区、強度間伐区の比較研究によって、通常の林業経営で行われるような弱度間伐ではなく、広葉樹との混交化がすすむような強度間伐でこそ生態系サービスが改善することをメカニズムを含めて示す。あわせてスギ天然林のような本来の生態系を取り戻す植栽や制御、間伐のあり方を提案する。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

『スギと広葉樹の混交林』清和研二 農文協は山梨県林務のNさんから推薦された本。
今取り組んでいる弱度間伐で下層植生を回復させれば良しとしてきたスギ人工林施業にモヤモヤしてきたが、著者の清和研二さんが、その正解を教えてくれた1冊。
下層植生が回復しても森林は健全にはならないことを科学的根拠に基づき調査研究を20年かけて取り組まれた成果から導き出したからこそ説得力がある。

とにかく、心に刺さる言葉だらけです。
清和研二さんが説くスギ人工林を強間伐して広葉樹を林冠レベルで混交させる混交林づくりに挑戦したい!
林業現場で働く皆様に強くお勧めする1冊です。

「混交林化による生態系サービスの向上は計り知れないものがある」
「その恩恵は森林所有者や山間部に住む人たちのみならず地球に住む全ての人類、そして全ての生き物が享受できるものなのである」
「混交林化することで水質浄化機能などの生態系サービスは驚くほど回復する」
「広葉樹の種多様性は生態系サービスに大きく影響するので大事な指標だ
多くの樹種が混交する林分を目指すなら強度に間伐するのが良い」
「下層植生レベルでの種多様性にはほとんど意味はない。多様な樹種がただ存在すればよいのではなくサイズの大きな広葉樹の多様性が生態系の機能を高めている」
「窒素は植物に欠かせない栄養素」
「硝酸態窒素の流出を防ぐために身近なスギ林から混交林化を進める、そうすれば森に清流が戻り我々はもっと安全でおいしい水を飲むことができる」
「種多様性の高い植物群集ほどより高い生産力を示す」
「森林生態系でも多くの樹種が混交する林分ほど生産性が高い」
「森は物質が無駄なく循環する生態系」
「自然の仕組みをじっくり観察して天然のメカニズムに倣う林業を本気で行う時期が来てある」
「樹木の形態やそれに伴う木材の品質は種固有の形態的可塑性と林分内の空間的位置の組み合わせが大事」
「地域固有の種多様性を持つ巨木林を目指す。長い時間をかける覚悟で保育しながら同時に収穫していく。そのためにはスギも広葉樹も全層間伐が最適である」
「林業と林産業は分けてはならない
細くて無名な広葉樹が売れる時代」
「森林認証制度の認証基準見直しが必要弱度の間伐で下層植生が回復しても森林が健全にはならない。スギ人工林を強間伐して広葉樹を林冠レベルで混交させることではじめて生態系サービスが強く発揮される。
無駄のない窒素循環によって水質が浄化されると同時に生産力が飛躍的に増加する。それだけでなく土壌への水浸透を促し洪水や渇水を防ぐ能力も増加させる。広葉樹が成熟すれば野生動物との共存も図られるかもしれない」

科学的知見に裏付けされた政策でなければならない

自然の森ができあがるメカニズムと違う方法で近年の林業が営まれている

0
2025年09月06日

Posted by ブクログ

専門的なことは分からないけれど…今までよいと思っていた弱度間伐よりも、強度間伐の方が、杉と広葉樹の混交林化をより促し、環境保全機能も生態系サービスも大きくなるらしい。この研究結果、もっと世の中に広まってほしい。

0
2023年08月06日

「学術・語学」ランキング