陳春成の作品一覧

「陳春成」の「夜の潜水艦」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

作品一覧

  • 夜の潜水艦
    4.3
    1巻2,200円 (税込)
    潜水艦は永遠の夜を航行する。 イマジネーションの極まる、“その先”へ―― 迷宮のようなプロットと東洋の美学が織りなす、 中国文学の新星による至高の作品集 「彼の作品に登場する人物の多くは、千変万化する世間のありようについて ゆくことができず、自分の空想世界にひきこもることによって精神のバラン スを保つ。彼らは、激動の変化を遂げ続ける中国社会の片隅に、ひっそり と、だが確実に存在する人々の姿を映しているに違いない。同時にそれは、 この本を読む私たちの姿にもどこか似ているように思われる。」(訳者解説 より) 「一九六六年のある寒い夜、ボルヘスは汽船の甲板に立ち、海に向けて一枚 の硬貨を抛った。」と始まる表題作「夜の潜水艦」は、少年の空想世界が現 実との境界線を失っていくという奇譚。「竹峰寺 鍵と碑の物語」で主人公 の青年は、失われた実家の鍵はUSBメモリーで、家は完全な状態でメモリ の中に保存されていると考える。……8つの中短編は、ひとつひとつ全く異 なる世界を細やかに描きながら、大胆なイマジネーションで独自の文学世界 を構築していく。中国の若者に大きな共感を呼んだ、新たな中国文学の潮流 となり得る気鋭の作家、記念すべき初邦訳作品。 CONTENTS 夜の潜水艦 005 竹峰寺 鍵と碑の物語 031 彩筆伝承 079 裁雲記 103 杜氏(とうじ) 123 李茵(リ・イン)の湖 137 尺波(せきは) 163 音楽家 181 解説 254

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ユーザーレビュー

  • 夜の潜水艦

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    夢の中で起きた出来事や登場人物たちの妄想が、現実に影響し、時に実現する中短編集。全ての作品に共通する、その幻想的な雰囲気が、とても好きだった。

    特に面白かったのは、少年が妄想の中で潜水艦の旅を重ねる「夜の潜水艦」。誰にも読まれることがない代わりに偉大な作品を書ける筆を手渡される「彩筆伝承」。名酒を生み出したことで全ての人間の記憶から消えてしまう「杜氏」。夢の中で九千の夜という途方もない時間を過ごすことを代償に名刀を打つ「尺波」。自らの心の中に死んだ友人の別人格を生むことで禁制音楽を作曲し続ける「音楽家」。このあたりだった。
    共通しているのは、何か偉大なものを生み出した人たちが、その代償に、自

    0
    2024年03月29日
  • 夜の潜水艦

    Posted by ブクログ

    どこか哀しさを感じさせ、作品世界の中での現実と幻想がいりまじる美しい物語たち。
    寝る前に一編ずつ読み進めたくなるそんな夜の似合う短編集。読み終えてしまうと、この世界が終わってしまうのがつらくて、一編ずつ、ゆっくり読み進めました。

    失われた世界に漂う『夜の潜水艦』
    鍵のストーリーが印象的な『竹峰寺 鍵と碑の物語』
    他人の視線に触れると文字が消えてしまう『彩筆伝承』
    雲を管理する『歳雲記』
    不思議な方法で作られたお酒を巡る『杜氏』
    かつて庭園だった耽園での僕と李茵のエピソードから始まる『李茵の湖』
    祖父が濃霧の中で経験した不思議な話『尺波』
    レニングラードに響く禁制音楽『音楽家』

    またこの作者

    0
    2023年12月11日
  • 夜の潜水艦

    Posted by ブクログ

    刻々と変わりゆく街の風景と、変わり映えしない毎日に挟まれて、どちらにも馴染めずに少し疲れたとき、心はゆっくりと身体から離れて漂いだす。
    陳春成が描く物語は、黄昏と闇夜のあわいに立ち上る影のように、竹林を鳴らす風が耳元で囁く秘密のように形を留めず移ろってゆく。

    そこには驚異的なイマジネーションや壮大な幻想 の王国はないかもしれない。
    ナイーブ過ぎる白昼夢や、遠い記憶の残滓に過ぎないのかもしれない。
    だが、彼が描き出すイメージたち ー
    少年の夢を乗せたまま永遠の夜を航行する潜水艦(『夜の潜水艦』)
    取り壊された実家の記憶を宿して古い石碑と共に苔生していく使い道のない鍵(『竹峰寺 鍵と碑の物語』)

    0
    2023年09月24日
  • 夜の潜水艦

    Posted by ブクログ

    かつてボルヘスが海に投げ入れた硬貨を探す億万長者の酔狂な夢と、一人の少年の想像力が衝突する表題作「夜の潜水艦」ほか、八つの短篇を収録した幻想小説集。


    作者は1990年生まれ。ボルヘスや中国の古典と一緒に、ポケモンやインターネットの現代カルチャーが語られていく。
    お気に入りは「裁雲記」「杜氏」「音楽家」。「裁雲記」は空に浮かぶ雲の形が法で定められている世界のお話で、主人公は森林保護区にポツンと立つ小屋で雲を裁断する仕事をしている。本書のなかでは特にファンタジー色が強い作品だ。雲を絵本にでてくるような形に整えるという一見可愛らしい設定が不条理を孕んでいるのが面白いんだけど、裁雲の日々で話が進む

    0
    2023年08月27日

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