元は自由民主党の機関紙向けに連載されていたとのことで、
"保守"という概念について入門的な観点でまとめた一冊となっています。
それもあってか、非常に理解しやすい内容で、スルッと入っていけました。
- 「左翼」は、社会の変革を急激かつ劇的に推し進めようとするのに対して、
「右翼」は、その変革
...続きを読むには概ね慎重な姿勢を示し、それを推し進める際にも漸進的である
日本においては、左翼は社会をより良い方向に変えていく前向きな勢力、
右翼はそれに頑迷に反対するだけの後ろ向きな勢力、的な印象付けが強いと思います。
そういった意味で日本では、左翼の偏狭性、右翼の堅実性は、それぞれ薄められている気がして、
この辺りは、日教組がバックにいる戦後教育の賜物ですかねなんてすると、言い過ぎですか。
- 保守主義の政治の要諦は、「あらまほしき現実」を創出するのではなく、「変転する現実」に適応すること
個人的には、排他性の強い絶対的な唯一の価値観に収斂していくのではなく、
時代時代、場合場合での最適解を求めて、創出・適応していくような流れが、性に合います。
- 特定の観念や価値意識に裏付けられた「イデオロギーの思考」は、人々の視野を狭いものにする
唯一的な価値観に縛られるのは停滞と同義であって、変革、成長とは結果として相反るすると思いますし、
この辺りは、ソヴィエト連邦が崩壊した原因の一つも、見出せるのかな、、とも感じています。
求められるのは、"機会の均等"であって、"結果の平等"ではない。
後者が不平等社会を創出する原因の一つになっているのは、昨今の生活保護等の問題からも感じられます。
- ヴェネツィアの衰亡の兆しの風景として、「独身の男が矢鱈に増えた」という事例が紹介されている
社会から活力が奪われて、厭世的な個人主義が蔓延し、閉塞感、停滞感につつまれている、
コレを今の日本と重ねてみると、非常に興味深いです(と言ってもいられないですが)。
- 人間の社会において「平等」の価値を過度に追及しようとすれば、社会における「多様性」が損なわれる
- 保守主義思潮の下地は、旧いものに対する愛着であるけども、それは決して執着ではない
- 日本の人々は古来、「現実主義、効用主義」の観点から様々な文物を採り入れ、自らの生活に活かしてきた
政治とは、理念を踏まえた上で現実との折り合いを模索するための手段だと思います。
「大きな物語」は必要とされるかもしれませんが、ソレへのアプローチで求められるのは多様性ではないでしょうか。
手段まで唯一化されてしまうのは、それこそ、悪い意味でのファシズムにつながりかねないかと。
自分自身にとっての豊かさを各々が選択できる、そんな社会が個人的には望ましいと考えていますが、、
なんてことを、久々に考えさせてくれた一冊になりました。
今このタイミングで触れる事が出来たのは、ある種運命的なモノも感じます。
さて、2012年現在、左派政権に壊された日本社会の復興の芽をどう育てていきましょうか、なんて。