犯罪と暴力の果てに待ち受けるものは… 迫真の書きぶりが強烈なノワール #柴田祐紀 #60パーセント
■きっと読みたくなるレビュー
超リアル、怒濤の暴力小説!
まさに暴力が目の前に迫ってくる。臨場感たっぷりの書きぶりで、どんどん裏社会の物語に引き込まれます。構成やセリフも上手で、迫力満点の暴力映画
...続きを読むを見ているかのようでした。
特に最序盤の引き込みなんか最高。
冒頭いきなり女遊び、薬、暴力、バイク、高級車、事務所などなど、コテコテのヤクザ世界がてんこ盛りですよ。かつて力があった時代の暴力社会を垣間見れると、期待満点で読み進めました。
タイトルである『60%』が、謎めいていて気が効いてる。
この数字を狂言回しにして、物語を進めていく構成も見事でしたね。
なんといっても登場人物たちの悪人ぶりがクサすぎるほど不愉快で最高。
裏社会の理論で強引に物事を進めたり、理屈を通していく様は、むしろ社会勉強になってしまう。まさに、その社会で生きてこないと出てこないようなセリフが素晴らしかったです。
イチオシなのは高峰と粕谷のコンビですよ。
地下で生きている男たちの熱さに痺れる。組長の前で落とし前を付けるシーンなんかは、まさにアウトレイジですよ。カッコいい!
薄く合理的な人生を否定し、リスクとレバレッジの間で生死をかけて勝負していく。いわゆる昔ながらのヤクザ、悪党の魂を、久しぶりに感じることができました。
■きっと共感できる書評
本書を読み終わって、2つのキーワードが頭に浮かんだ。
・失われた30年
日本の経済停滞についてよく議論がなされる。
リスクを考えすぎた政治や行政、結果必要なところに投資が行われず、海外に遅れをとってしまった。プラットフォームが獲得できず、優秀な人材も流出。デフレスパイラルは継続し、現在でも日本の未来は明るくない。
・イノベーションのジレンマ
巨大企業が新興企業に負けてしまう理論。
既存事業で成功をしている大企業であっても、新しい革新的な技術を軽視してしまうことで、小さな企業が大企業の既存事業を破壊してしまう。
安心安全で治安がいい日本社会、バランスが取れた日常生活はとても大事です。
しかし大事なものを守ってばかりでは、10年後、100年後の明るい未来はやってこないでしょう。今の社会や生き方について、再考させられる本書でした。