あらすじ
マネーロンダリング専用の投資コンサルティング会社「60%」が扱うのは、裏金、隠し資産、麻薬の売上……。主人公・柴崎純也は、従来の反社会組織とは違う不思議なコミュニティを形成し、強い絆で勢力を拡大していくが、やがて絶体絶命の破滅が訪れる。信ずるべきは誰なのか!? 恩田陸さん激推しの「仙台ノワール」第1弾! 第26回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作!
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Posted by ブクログ
柴田祐紀『60%』光文社文庫。
秋田県由利本荘市在住の会社員作家による第26回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作の『仙台ノワール』。
由利本荘市というと度々水害に襲われる日本海側の街である。東日本大震災の後、太平洋の海にはとても入れる状況ではなく、何度か由利本荘市の西目海岸で波乗りをしたことがある。
さて、本作。デビュー作にしては非常に出来の良いノワール小説であった。登場人物の設定、捻りの効いたストーリーと全てが素晴らしい作品だった。往年のベテラン作家が枯れたアイディアをどうにか絞り出して仕立て上げた小説などよりフレッシュで遥かに面白い。
仙台の指定暴力団田臥組若頭の柴崎純也は、暴力団対策課の刑事、高峰岳の協力により、飲酒運転で人生の全てを失った56歳になる元銀行員の後藤喜一をスカウトし、マネーロンダリング専用の投資コンサルティング会社『60%』を立ち上げる。
眉目秀麗、頭脳明晰の柴崎純也、その手下の粕谷一郎に仲間として扱われた後藤は違法行為に気付きながらも、地下社会の何のしがらみが無い生き方に次第に惹かれていく。
しかし、かつて田臥組が薬物取引きしていた中国マフィアが粕谷と高峰を罠に嵌め、後藤を拉致する。さらには高峰と田臥組との関係に気付いた同僚刑事が脅しを掛けてくる。
一般社会からはじき出された者にとって、しがらみの無い地下社会は居心地が良いのだろう。その気持ちは痛いほど解る。真面目に会社で働いていても、同僚の裏切りや手柄の横取りなどは日常茶飯事であり、会社で働けば働くほど家庭に居場所は無くなる。何度も消えてしまいたいと思ったことだろう。
本体価格740円
★★★★★
Posted by ブクログ
第26回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
地下社会(アンダーグラウンド)で生きる人々の姿を描いた、ノワール色の強い一作です。
舞台は仙台。ヤクザ、暴対、マトリ(麻薬取締官)など多様な立場の人間たちが交錯しながら物語は進行。ハードなテーマながら文章は非常に読みやすく、テンポよくページをめくらせてくれます(※一部グロ描写あり)。
ただ、終盤に主要キャラがすり替わるような構成は賛否ありそう。これまで追ってきた主人公たちにもう少し深く迫ってほしかったという思いも残りました。
とはいえ、デビュー作とは思えない完成度。人間の「裏」と「正義」の間を描く筆致は鋭く、今後の作品にも期待したい作家さんです。