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  • 現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    ビジネス・実用

    4.0
    1巻2,640円 (税込)
    知らずに加担している、この圧倒的な不正義。 東京の路上で。灼熱のカタールで。 日常を奪われ「奴隷」とされた人たちの 想像を絶するストーリーを軸に、 世界5000万人、数十兆円規模の グローバル闇産業の驚愕の実態と いま企業・個人に求められる行動を語る。 ◎ワールドカップ開催国カタールの強制労働で世界が注目する大問題 ◎世界5000万人・数十兆円規模の“グローバル産業”「現代の奴隷制」の真実 ◎日本の事例も‥‥奴隷状態から生還した3人の驚愕のストーリー ◎ビジネスが鍵! サプライチェーンに潜む強制労働リスクにどう対処する? ◎SDGsとESGの時代、企業・個人に求められる問題解決へのアクションを示す モノのように売られ、酷使され、捨てられる―― 世界5000万人超と言われる「現代奴隷」。 それは過去でも遠い国の話でもなく、ビジネスや消費を通じて 私たちの経済・社会・暮らしにもつながっている‥‥。 アメリカで、日本で、カタールで。想像を絶する日々を経て 奴隷状態から生還したサバイバーたちのストーリー、 問題解決に取り組む人々の挑戦を丹念に取材し、 人身取引の真実と企業・個人にできることを示す。 [構成] 日本語版序文 序文――なぜ? 第1章 現代奴隷とはだれのことか 第2章 最も卑劣な犯罪――人身取引というビジネスモデル 第3章 ネパールからカタールへ――債務奴隷 第4章 心に刻まれたタトゥー――腐敗と免責 第5章 奴隷化の心理的影響 第6章 バル・アシュラムの子どもたち 第7章 人身取引加害者の胸の内 第8章 限られた選択肢 第9章 ビジネスが鍵(課題と解決策の両方で) 第10章 解決法――個人から、分野を超えた世界的な関わりへ 第11章 私のヒーローたち
  • 性的人身取引――現代奴隷制というビジネスの内側

    性的人身取引――現代奴隷制というビジネスの内側

    ビジネス・実用

    3.5
    1巻3,520円 (税込)
    世界各地の現場への潜入調査と被害者、支援者、加害者への聞き取りをもとに現代の性的人身取引産業の実態を追い、分析的に解説。 さらに、性的人身取引産業のリスクと報酬の経済をいかに反転させるかなど、「現代の奴隷制」撲滅のための具体的な戦術を示す。

ユーザーレビュー

  • 現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    Posted by ブクログ

    "日本も現代奴隷と無縁ではない。オーストラリアの団体「ウォークフリー」が発表した推定値では、5年前の時点で日本には3万7000人の奴隷がいたという"
    最大の敵は、無関心。
    ぜひご一読を。

    0
    2024年10月26日
  • 現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    Posted by ブクログ

    日本の路上にも奴隷はいたのだ。
    サバイバーたちがとにかく逞しく、当時の話を語ってくれている。
    ただ可哀想な話ではなく希望の持てる内容になっている。

    0
    2024年10月29日
  • 性的人身取引――現代奴隷制というビジネスの内側

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    性的人身取引
    ~現代奴隷制というビジネスの内側

    著者:シドハース・カーラ
    訳者:山岡万里子
    発行:2022年2月20日
    明石書店

    ここでいう奴隷とは、比喩的な奴隷ではない。まるで奴隷のように働かされたよ、というような直喩でもなければ、「恋の奴隷」といったようなメタファー的なものでもない。田中優子さんも指摘しているが、江戸の吉原の女郎のようなお金を精算すれば解放される人たちも奴隷とは違う。ここに出てくるのは、文字通り、身柄を拘束され、強姦され、暴力を受け、強制的に売春をさせられる奴隷である。しかも、名目は借金返済であったとしても、その借金は減らない仕組みになっていて、つまりは〝商品〟として使えなくなるまで、ずっと売春婦として働かされるのである。

    そのきっかけは、ルーツのクンタ・キンテのように奴隷狩りで拘束されるパターンだけではないが。例えば、貧困家庭の娘に都会や外国での仕事を紹介する人間が現れ、親の了承を得て連れて行くが、レストランでの仕事などと説明された仕事はそこになく、別人に売り飛ばされる。新しい所有者はその時に大金を払っているが、そのお金は奴隷本人の借金となる。それを返すまでは辞められないが、返した段階で、また別の人間に転売される。また借金を背負わされ、売春。その繰り返し。

    もちろん、誘拐もある。そして、誘惑もある。男に口説かれ、結婚。その後、外国に売り飛ばされる。

    著者の推計で、2006年末時点に2840万人の奴隷が世界に存在するという。そのうち、性的搾取のために奴隷として取引された人は120万人。
    2840万人の内訳
    ・債務労働1810万人(63.7%)
    ・人身取引された奴隷270万人(9.5%)
    (性的搾取)120万人(4.2%)
    (その他強制労働)150万人(5.3%)
    ・強制労働760万人(26.8%)

    東西の壁が崩壊し、共産国の崩壊にともなうグローバル経済化のなか、IMFの経済政策失敗が貧富の差を拡大したのが、性的奴隷の人身取引の増加につながったとする。それに加え、歴史的に根深い女性への偏見が組み合わさっているという。とりわけ、南アジア、中欧・東欧、東南アジアに性奴隷が急増している。

    著者は学者であり、各国を回って売春している少女などに接し、直接話を聞いた。あるいは、そういう女性達を救っているNGOなどのシェルターで話を聞いた。この本にも何人かの証言が紹介されているが、そのうちの一部について、数字をつけて整理してみた。下記のうち、1~16の数字がついているのがそれ。ただし、4番と6番だけ人身取引をしている側の男の証言。また、性奴隷ではない奴隷も少しだけ含まれるが、どれも涙なしには読めない。16番の少女は性奴隷ではない子だが、最も同情を禁じ得ない例だった。

    読むのがとても辛い本だった。しんどかった。訳者の山岡万里子氏も、「最初に断っておきます。本書を読むには心の準備が必要です」と書いている。「渾身込めて翻訳し、本来お勧めしたいはずの自分の訳書でも、今回ばかりは、読者に辛い思いをさせてしまうかもしれない、と先に謝らなければなりません」とも。

    でも、そう書いてあるのが「訳者あとがき」である。読んでしまってから、そう言われても・・・

    皆さんには、どうか覚悟を決めていただき、下記のうち、1-16の例を読んでみてもらいたい。とくに8番以降はたまらない。そして、できれば、この本全体も読んでいただければ。

    1章 性的人身取引の概要

    1.マヤ(ムンバイ、4年近く、19歳、ネパール生まれ)
    両親が55ドルで斡旋業者に売った。絨毯工場で働くと言われていたのに、ムンバイで転売され、3万5000ルピー(780)ドルの借金があることに。強姦され、1日20人の売春をさせられる。逃亡失敗、暴力、骨折、アヘン、HIV感染。食料、衣服、家賃、酒など天引き。ストックホルム症候群。2年後、別の店主に転売、新たな借金。

    国連人身取引議定書(2000年)「人身取引」の定義
    搾取の目的で 暴力その他の形態の強制力による脅迫もしくはその行使、誘拐、詐欺、欺罔(ぎもう)、権力の濫用もしくは脆弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭もしくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受することをいう。搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働もしくは役務の提供、奴隷化もしくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。
    ↓(こうすべき)
    ・「奴隷取引(save trade)」とは、人を奴隷状態または奴隷のような搾取状態に置くために、あらゆる手段を使い、あらゆる距離をまたいで、その人を手に入れ、勧誘し、隠し、受け取り、移動させることをいう
    ・「奴隷化(slavery)」とは、囚われている人に労働その他のサービスを強要する過程のことを言い、そのために、身体または身体の一部の搾取を含む、あらゆる手段が使われる

    性奴隷が起こる5パターン
    ・騙し:仕事、旅行、収入の機会の提供
    ・家族による売り渡し
    ・誘拐
    ・誘惑またはロマンス:永遠の愛を約束しては贅沢な贈り物をし、2人で新生活を豊かな国でしようと誘う。先では友人を訪ねろと指示。
    ・元奴隷による勧誘:性奴隷となった人が最後に奴隷所有者の協力者になる
    *この他、ナイジェリアのエド族には「呪術の儀式により勧誘」もある

    性奴隷が搾取される場所:売春宿、クラブ(ヨーロッパと東南アジアが主)、マッサージ店、アパート(ヨーロッパやアメリカで最も多い)、ホテル(タイで盛ん)、路上

    人身取引被害者は年間150-180万人、うち商業的性搾取のための取引は50-60万人。世界のどこかで60秒ごとに1人が性的搾取目的の取引。
    世界の奴隷のうち性的人身取引は4.2%なのに、奴隷所有者の利益全体の39.1%をもたらせている。最も金を生む奴隷。

    1990年代には特に3つの送り出し地域が現れた。南アジア、中欧および東欧、東南アジア。これらの地域に古くからある要因、すなわち極度の資困、厳しい性差別、激しい少数民族の権利剥奪が、性的奴隷制を促進。

    アフリカでは、毎日6000人、年間200万人以上の女性が女性器を切除される。南アフリカでは6時間に1人の女性が親しいパートナーによって殺されていて、イギリスでは毎週2人、スペインでは5日に1人。イタリアでは17分に1人の女性が、アメリカでは6分に1人がレイプされる。

    どれぐらいの男性賃金で奴隷とセックスできるか?
    インドでは2.5時間、イタリアは2.2時間、アメリカは1.4時間。
    奴隷を使うことでセックスの値段が年々下がっている→需要が高まる。値段が上がれば需要は落ちるかもしれない。ガソリンは価格が大幅に上がってもほぼ同じ量を使うが、映画館が上がればDVDで代用するので。

    インドでは性的人身取引行為に罰金刑はないが、売春宿の経営には約44ドルの罰金が科せられる。店主は性奴隷1人につき年間1万2900ドル以上の現金収入を得ることができ、法定罰金額の293倍。イタリアとタイでは性的人身取引に罰金刑はない。人身取引犯罪には常に禁固刑が伴うが、それが数年以上に及ぶことは稀で、多くの国では少々罰金を払えば刑期を短縮できる。アメリカやアルバニア、オランダなど、人身取引罪の罰金がかなり重い国でも、名ばかりの訴追率 有罪判決率を考えると、実際の罰金額は微々たるもの。

    2章インドとネパール

    2.マライカ(フォークランドロード)
    未成年者は到着すると空腹にされ殴られる。女主人にアヘンを飲まされる。従わないと気絶するまで殴られる。腕をへし折られる。2万ルピー(440ドル)で親に売られた子が数日前に折られた。
    マライカ自身は13歳で叔父と強制結婚させられ、売られてムンバイで16歳のときから12年働いてきた元性奴隷。「アドヒヤ」制度に移り、稼ぎを売春宿店主と折半に。
    警察が入ってきても、賄賂を受け取って子供をそのまま置いて引き上げる。医療警察も少女達が未成年ではないと証明書をでっちあげる。

    3.シルパ
    カマシプラで14年働き、MB(男)により女主人(ガルワリ)に昇格。警察は、売春婦1人につき月々100ルピーの賄賂を要求。ここの子たちは金を稼ぐために来ている。親がそう望んでいる。

    4.MB(売春宿の店主でいくつもの店を経営)
    14歳未満の子にはプレミアがつくので、高くなった。6万ルピー(1350ドル)かかるときもある。警察が最大の出費。

    ムンバイでは店主1人につき性奴隷は平均20人。MBはもっと大勢を所有。

    売春をする女たちのランク
    ①性奴隷②アドヒヤ③間借り人(家賃は収入の15-20%)の3種類。

    ガンジス川のほとりにあるヴァラナシという神聖な町。そのシヴダス・プル地区には2000人ほどの売春婦。ネパール人女性が人身取引後にここに連れてこられ、イニシエーション(=研修)の時期を過ごすことが多い。そして、ムンバイ、ニューデリー、コルカタ、チェンナイ、その他、インドの都市へ。ムンバイの店主たちは「調教」された少女を好むから。

    5.デヴィカ
    13歳のころ、ラージという顔見知りの男が家につれこみ、脅しながら強姦した。別の男を連れて来てもてあそんだ。1日20人の相手。母親が探し出したが、ラージは裁判に訴えたら殺すぞと言った。しかし、裁判に。今も裁判中。彼女は妊娠していた。生まれてすぐ死亡。

    6.サリム(唯一取材できた人身取引業者)
    金を持っている奴がヴァラナシで俺と会う、俺は子供たちをそいつに引き渡す。金の一部を使って別の子供を引き渡しにくる親たちに支払う。男の子5000ルピー(110ドル)、女の子7000-8000ルピー(175ドル)を受け取り、ここから1000ルピー(22ドル)を親たちに払う。あとは、俺が連れて行った子供が作る絨毯1平方メートルごとに160ルピーのコミッションが入る。女の子はコミッションなし。

    (109~113ページ)インドの債務労働者の多くがダリット(不可触民*四種姓(ヴァルナ)制の枠外に置かれた最下層身分。けがれたものとみなされ、差別をうけた)。マヒという名の村では、2500人のダリットが債務労働者としてその土地の大半を所有する2人の兄弟のために働いていた。絨毯折り、農業、煉瓦焼き。債務労働者になる理由は、冠婚葬祭や病気、自然災害、怪我など。最初に金を借りたときから貸方借方の概念を持ち合わせておらず、債務者が死ぬとその借金は長男に引き継がれる。40ドルが一家を何世代にもわたって奴隷化する。1日14時間労働。逃げれば拷問or借金積み増し。

    7.グラフ
    3年前、娘の結婚式のために7000ルピー(155ドル)を前借り。返せるだけの仕事がない。食べることができない。食べたら借金が返せない。毎月100ルピーに対して5ルピーの利息を要求。50稼いだら25を返済に。だから借金は増え続けるばかり。
    村人の中には、どうにもならずに1人ないし2人の我が子を人身取引業者に。いくつもの村で何人もの男性が、妻と結婚するために借金をし、それを返すために妻を人身取引業者(ダラル)に売った。

    8.シスラ
    インドに売られたネパール人女性は逃げ出せず、帰国する女性はほとんどいないが、シスラは数少ない1人。シェルターでの取材。
    ネパール・チトワン地区生まれで、父が働いていた精米工場で手伝いをしていたら、20歳になる工場主の息子に毎晩レイプされた。11歳だった。父は信じてくれず、逃げ出した。ナラヤンガードのある店の前で腰かけていたら、女の人にうまいこと言われ、結局、4万ルピー(890ドル)で売られてインドへ。処女だと思って高い金だしたのにと殴られ、痛みと出血。しかし、客をとらされた。1996年1月に警察が強制捜査、部屋に隠されたが、中からドアを思い切り叩いたので警察が見つけてくれた。
    ネパール政府は帰国を許さず、「売春婦はインドからAIDSを持ち帰ってネパール中に感染させてしまう」が理由。NPOの助けで、ようやくネパールへ。空港ではAIDSが移るとつばを吐かれた。
    ネパールでは娘が婚約すると両親が2万ルピー~4ラーク(40万ルピー)を現金で払い、結婚式では年収数年分の贈り物を渡すため、娘を結婚させるより売る方を選ぶ。

    3章イタリアと西欧

    イタリアは路上売春が合法。斡旋人は〝保護者〟として彼女達から離れず、昼はアパートに閉じ込めて鍵をかける。彼らはコンドームの無料配布や中絶の無料手配をするNGO(バルセック)との接触を許しているが、無料で中絶手術を受けさせて経費を浮かそうという魂胆。

    イタリアは中欧や東欧の貧しい国々に最も近く、海岸線が長くて海上から入りやすいので性的人身取引の最大の目的地になっている。

    9.ブリジッド(ウクライナ人女性)
    看護師資格あったが月給35ドルで食べていけず、月4000ドルのイタリアでの求人を見つけた。セルビアでのナイトクラブでセックスワーク→数ヶ月後に取引されて北イタリアへ。〝保護者〟に売り飛ばされてヴェネチアやメストレ近郊、サラリア(ローマ)路上で売春。金はほとんど巻き上げられ、ほんの少額をウクライナの家族へ送金。家族にとって私は「スロットマシーン」なのだ。数年後、路地裏で血まみれ全裸。NGOに発見、救出。

    10.タティアナ
    2年2ヶ月、性奴隷だった。モルドヴァ共和国キシナウ近郊の村。父を亡くし、母は働けず、新聞でイタリアでの家政婦仕事を見つける。セルビアに連れて行かれて検査。アルバニアで再び売られてギリシア→南イタリア→ミラノでナイトクラブ経営の男に売られた。4000ユーロが彼女の借金となり、400人と寝たら帰してやる、と。2ヶ月で達成して1万2000ユーロ稼いだが全額店主のものに。→転売され街娼に。逃亡失敗、拷問、アルコールと麻薬漬け→取材2ヶ月前に抜け出せた。シェルターに。殺すと言われ、国の母も心配なので裁判で証言したくない。

    インド、ネパールと同じく、イタリアでも過去10年で性行為1回の値段が劇的に下落した。東欧やナイジェリアから低価格の性奴隷が大量に流入し、半額に。

    イタリアで最も多いのがナイジェリア出身の性奴隷。その8割がエド族(ナイジェリア中南部地域)。「トロリー」という勧誘者がイタリアでの夢のような生活を描き、高収入を約束する。ニジェール、アルジェリア→モロッコ→スペイン→イタリアへ。奴隷オークションにかけられる。
    長旅の前に儀式をさせられ、借金を返すこと、警察に通報しないこと、誰にも話さないことを誓う。被害者は救出されても、話を聞くと引きつけを起こすこともある。

    イタリアに女性や子供を人身取引する犯罪する組織はおもに5つで、アルバニア、ルーマニア、ロシア、ナイジェリア、中国の組織。南部だとマフィアのみかじめ料を取られるため、北部へと連れて行く。被害者は、イタリアをスタートし、3~5のEU国で売買されて捨てられる。
    アルバニアの組織は残酷で、ある時、強制捜査に入ると全員14歳にもならない子供。アルバニア人の子供だけはどうか連れて行かないでと懇願。母親が殺されると主張。違法だが残した。

    4章モルドヴァと旧ソ連諸国

    モルドヴァはヨーロッパの最貧国。国外からモルドヴァへの送金額が総額5億ドルを超え、経済の約25%を占める。

    11.イザベル
    インテリアデザインを勉強していた19歳のとき、父を亡くして生活の支えを失う。大学の新聞にハウスクリーニングの広告、月給500ドル、アンジェラという人物が担当。パスポート代を払ってくれてイスタンブールへバスで。ホテルでパスポートを取り上げられてドイツ人の男に売られ、さらに5人の男たちに強姦される。1年4ヶ月、働かされた。
    客の1人に弁護士、4000ユーロで買われる。彼も自室の一室に鎖で閉じ込め、売春を強要した。妊娠を告げると鎖を外し、彼は彼女と結婚すると言ったが、彼女は逃げることを決意し、帰国を助けてくれる団体に逃げた、帰国し、息子を出産。
    見つかると自分も息子も殺されるのではという不安。性奴隷から解放されたが、生活はいまだ囚われの身。

    12.カディア
    23歳。父を亡くし母と2人暮らし。15歳の時、村に職業を紹介する人たちが来て、アリスという女性が外国での仕事を紹介してきた。結局、4カ国でセックスワーク。3年間。母とは連絡も送金もできず。アムステルダムから強制送還、母は既におらず。
    職がなく路上生活していると、ある晩、男たちにトラックに押し込められ、殴られ、トルコへ。鎖につながれ、食べ物もなし。アパートにトルコの男たちが来た。逃げだし、モルドヴァに。
    また仕事はない。大学近くでイギリスでの家政婦広告を見つけたが、紹介所に払う書類作成費用がない。給料から返すことに。担当者の家に3日間宿泊、運転手が来るとトランクに押し込められ、モスクワのクラブへ。毎日酔っ払い、裸で踊らされる。重い病気になりポン引きに路上へと放り出される。警察に強制送還。

    モルドヴァはDVが酷く、日常的、当たり前になっている。だから外国へ出たがる。

    5章 アルバニアとバルカン

    アルバニアでは、法典の伝統の下であまりにも女性への抑圧が過酷。そこから解放される方法として、「ヴィルグジネシャ(誓いの処女)」がある。一生処女を誓い、女性としての生活を一切捨てて男になる。名前を男性形に変え、髪を短くし、男の服を着て、男のように働き、タバコを吸い、酒を飲み、他の男たちと交遊し、課長として家族を取り仕切る。人々からは「彼」と呼ばれる。一生、結婚も性交渉も持てない。アルバニアでは、家族の財産を相続できるのは15歳以上の男子のみ。

    女は、親が決めた男と結婚しなければいけない。それが嫌ならヴィルグジネシャになる。あるいは息子がいない両親が娘にそうさせる。

    アルバニアの女性は、結婚するか、貧窮するか、男になるかの3択しかない。アルバニアの人身取引被害者の半数以上は、虚偽の結婚の申込みによるもの、とあるNGOは話す。

    13.パイラ
    アルバンという男に17歳の時にプロポーズされ、村で結婚式。夫の家に引っ越すと、別の男に10レケ(1000ドル)で売られた。トラックでコソボへ、徒歩で国境越え。クラブでセックス強要。1年で警察の捜査が入り家に戻れたが、アルバンは他に2人の女性と結婚し、それも売り飛ばしていたことを知る。結婚式を執り行ったのは同じ司祭だった。

    14.イネス
    1995年9月、13歳。3人の男に拉致され、ジロカストラのホテルで2週間、毎日強姦され、タクシーでギリシアに。バスでコリントスへ。バーでのセックスワークを言われ、抵抗するとバスルームでかわるがわる強姦、気絶。4ヶ月働かされる。別のクラブに移され、さらに2年。ポン引きが買い物に連れ出したので、警察官に身の上を話す。17日間、留置場に。国境検問所まで強制送還。一文無し。父に電話してもらい、翌日、父が来る。
    帰ったが父は話を信じてくれない。選んで就いたんだろう、と。家を出て路上生活。知り合いの男に仕事探しを手伝ってやると言われ、イタリアへ連れていかれ、トリノのアパートで強姦される。客を取らされ、その後、ベルギーに3ヶ月、イタリアのフィレンツェに。毎日殴るひどいポン引きだった。逃げた罰で歯も1本抜かれる。
    その後はアムステルダムで8ヶ月、留置場に2ヶ月。出ると、イタリアに連れて来た男が待っていたので警察に駆け込んだが、その男と一緒に行かされた。ユトレヒトへ。密室の売春宿に。妊娠。産んで子供を渡したらまた働けと言われたので、修道女が運営するシェルターに。2003年1月22日にアルバニアに戻ったが、父親から勘当された。

    2002年ごろから、アルバニアの人身取引が2段階プロセスへと変化。第1段階では国内の農村からティラナへ人身取引、路上の日雇い売春やアパート、ホテル、クラブでセックスワークを強要。その後、国外へ売られる。利益を上げてリスクをさげるために2段階に。

    ティラナの街路はホームレスの子供であふれている。多くが、物乞いを強制されているロマ民族。幼い少年、気を失っている、頭部から出血・・・インドでも見た。同情を得るため手足を切断されることも。しかし、アルバニアでは寄付する人は皆無だった。ロマの子はティラナや国外へ人身取引され、物乞い強制、麻薬の運び屋をさせられ、養子として売られ、性産業で搾取され、臓器摘出のために売られる。NGOに通訳を頼んだが断れる。理由のひとつには、通訳と話している姿を所有者に見られた子供が、あとで罰を受ける可能性があるから。取材にも慎重を要する。

    ギリシアへ大量に人身取引されてきたが、2000年以降、ギリシアの子供の物乞いは減ってきた。そういう子供はほとんど奴隷だという認識がギリシア人に浸透し、利益率が下がったため。性搾取目的に比べ、物乞い強要目的についての啓発は、目に見える効果があるらしい。現在、アルバニア人の子供はギリシアよりも、コソボ、イタリア、その他の西欧国により多く人身取引されている。

    6章 タイとメコン河流域地帯

    タイでは両親の借金を返したり、仕送りしたりすることが、娘の義務であると考えられていて、売られても両親を恨んだりしていない。パナッタという少女もそうだった。コンドームさえすればなにをしてもいい。しかし、彼女は毎週、避妊薬注射を受けていた。なぜなら、警察官だけはコンドームをしてくれないから。

    タイでの高級スーパースター(特別なセックスの才能がある)たちの値段は2000バーツ(50ドル)で、性奴隷の10倍。スーパースターでない少女たちは1000バーツから始まる。
    最低料金でできる売春宿では、タイ人、ビルマ人、少数のラオス人、一時間で4~5ドル。ナイジェリア人街娼もいたが、タイ人娼婦の2倍。西欧では性サービスの最安値だが、ここでは異国情緒が高く買われている。

    アジアで最も猛威を振るっているのが日本の暴力団(ヤクザ)で、少なくとも過去20年にわたって、メコン河流域地帯の6カ国すべてから人身取引を行ってきた。

    東南アジアに存在する強制売春目的以外の人身取引と奴隷制について。
    いくつかのメコン河流域国からカンボジアに子供が人身取引され、その首都プノンペンで急成長中のペドフィリア(小児性愛者)市場で搾取されている。カンボジアの子供たちもタイへと人身取引され、バンコクやチェンマイの路上で物乞いを強制されている。この地域の老若男女がタイに連れていかれ、カレースパイスからプラスチックの玩具まで、あらゆる搾取工場で強制労働させられる

    最も残虐な人身取引形態が、漁業での強制労働目的の人身取引。
    大半がカンボジア人の少年で、バンコクの南の沿岸部に連れて行かれる。何か月もの間、毎日20時間、漁をさせられる。ノンストップで働けるように、アンフェタミンを服用させる。少年達は船に乗せられたまま。漁獲シーズンが終わったら、多くが銃殺されて海に放り込まれる。東欧やアフリカにまで及んでいる。漁業に止まらず、欧米各国で流通する魚介類の加工から包装まで、強制労働でまかなわれ、最も酷いのが15億ドル規模といわれるバングラディシュとタイのエビ産業。

    タイで女性を男性の所有物と見なすようになったのは15世紀から。男は女を殴っても咎められず、飽きたら奴隷として売ってもよいと法にも定められた。第一夫人(親が決める)、第二夫人(より多くの子供もうける)、奴隷妻(性的快楽と卑しい仕事をさせる)の3階級があった。
    1934年に勅令により一夫多妻制が禁止になり、買春が急増。不倫より買う方がマシという風潮、以前なら奴隷妻になる運命だったという理屈がまかり通り、娼婦に。

    7章 アメリカ合衆国

    15.スニー
    アメリア国内であった性的人身取引の被害者2人のうちの1人。ロサンゼルスのタイ式マッサージ店。1時間60ドルを15ドルにしてくれて、オプションでセックスができる。
    タイのファーン群生まれ。2人姉妹、15歳で父が病気にて働けなくなり、学校をやめた。アランという男が現れ、チェンマイのドイツ料理レストランでのウェイトレス仕事を持ちかけてきた。チェンマイでサワットという女に引き渡され、レストランの仕事は別人に取られたが、ロサンゼルスにいくとレストランで月々2000ドルだと言われ、父親も薬が必要なので了承した。サワットが航空券とパスポートを購入、着陸するとすぐにここに連れてこられて仕事に。お前は店主に2万ドルの借金があると言われた。マッサージとセックスワークをその夜からしなければならない、とも。拒むと数人に強姦され、革のベルトで鞭打たれた。両親にはわずかに毎月100ドルの仕送り。それ以外は全部搾取された。

    アメリカへの人身取引の大半は、商業的性搾取が目的ではない。農業、家事労働、工場、露天商などでの強制労働のために人身取引されてくる。

    アメリカへの人身取引では、①嘘の就職口話 ②誘惑の順に多い。
    メキシコのカレト・ファミリー事件、1991年~2004年にかけてカレト一族が性奴隷をメキシコからNYへ連れてきた事件。10代の少女たちに贈り物、永遠の愛を告白、時に結婚して子もつくる。アメリカに渡るよう説得し、その後、売春を強要する。「俺を愛しているなら、できるだろ?」
    拒むと拷問か、相手との間に生まれた子供が脅しに使われる。
    アメリカへの人身取引に必要な詐欺と強要には、単に既存の市場から被害者を借ってくるより、はるかに長く金のかかるプロセスが必要だということを示した。ヨーロッパやアジアに比べて少ない理由のひとつ。

    戦争に何十億ドルもがつぎ込まれる一方で、何十億という人々が、奴隷になる方がマシなほどの貧困にあえぎ、日々を生きている。近所のカフェのモカ・ラテ1杯の金額すら1日で稼げない人々が、世界人口の半分近くを占めている。自由と民主主義よりも、奴隷所有者からおごくわずかな報酬の方が、一口でも多い食事を提供できる現実があるかぎり、奴隷制度は決して終わらないだろう。

    8章 奴隷制廃止に向けての枠組み

    16.アイ
    性奴隷ではないが、10年間の奴隷生活。15歳だが発達が阻害され、従順な5歳児のように振る舞う。ビルマの山岳民族シャン族。4歳のときに村を襲った政府軍兵士たち。母親とともに逃げ、4~14歳までチェンマイの近くで奴隷生活。何年も飢餓状態だった。シェルターで3食出ることが理解できず、食べ過ぎてよく病院に。
    <詳細>
    4歳のとき、母親と森に逃げ込み、何日もさまよってタイに。チェンマイのある工場にたどりつき、ビルマ人夫婦に雇われる。安心したが、翌日に工場で酷く殴られる。母が、働かなければ娘をまた殴ると脅される。それから母の姿を見ることはなかった。本人も、朝4時に起き、夜中1時まで労働。眠った記憶がない。彼女の仕事は果物の選り分け、乾燥胡椒を砕く、タケノコを切る。トイレ掃除、床に吐かれた唾の拭き取り。疲労困憊、主人たちが見ていない隙に階段で数分眠ろうとした。ベッドなし、階段の段に頭を乗せて寝る。2日間水だけで食べ物なしということも。
    毎晩、主人の奥さんが眠りにつくまでマッサージ。自分も眠ってしまう。見つかり、竹竿で肩を叩かれる。仕事が気に入らないと跪かせて倒れるまで殴る。階段で寝ているのが見つかるとハサミで肩を刺される。ある日、頭をハサミで刺され、酷く出血。包帯巻いて仕事、頭ふらふら。その夜に逃げ出す。彼らは捕まり、6ヶ月の監獄送りと4万バーツ(1000ドル)の罰金。しかし、既に出所。
    つい最近、何年かぶりに母親に会った。彼らの二つ目の工場で働いている、母が恋しいが、会えない。主人たちが自分の居場所を見つけて傷つけに来るのをシェルターが恐れている。

    著者は、奴隷をなくすためにどうしたらいいか、具体的に書いている。経済学的な視点で数字まで計算している。そのためにどうするか?奴隷所有者側のリスクを高めること。とくに、発覚によるリスクを高めるのが大事。しかし、今は機能していない。強制捜査がされていない、罰則が甘い、起訴されない、など。強制捜査がされない理由は、汚職が主な原因だが、アメリカなどはその面ではマシである。強制捜査をし、奴隷を助け出す。奴隷になる期間を短くすれば、初期投資の回収が難しくなり、奴隷所有者側に大きな不利益となる。罰則を厳しくすることも、同じ効果を持つ。

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    2024年05月05日
  • 現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    現代の奴隷
    ~身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    著者:モニーク・ヴィラ
    訳者:山岡万里子
    発行:2022年12月20日
    英治出版

    現代社会における「奴隷」について、強い関心があった(ある)。この本を読むと、認識が間違っていたことがはっきりする。我々がよく口にする「奴隷」は、奴隷ではない。比喩的に使う「まるで奴隷だ」ではあるが、奴隷ではない。そして、恐ろしいことに真の奴隷がこの現代社会に存在し、ILOの推計で世界に5000万人もいるという(2022年9月更新)。

    以前、江戸文化研究者の田中優子さん(法政大名誉教授)が書いたものを読んでいると、遊郭は身を売られて拘束され、強制労働させられるが、借金を返せばいつでも解放されるので奴隷ではない、と書いてあった。その時は、まだ少し意味が分かっていなかった。テレビドラマ「ルーツ」では、クンタ・キンテの孫にあたるチキン・ジョージが、お金を払って自由を得たではないか?とも思っていた。女郎とどこが違う?と。

    この本によると、奴隷は、働いても報酬が得られないどころか、自由を得るために支払うべき負債が増えていくシステムだという。つまり、働けば働くほど、借金が大きくなるのが奴隷制度のようだ。おそらくチキン・ジョージは最初にアフリカから連れてこられた奴隷を「主人」が投資して購入した初代クンタ・キンテと違い、すでに3代にわたる労働で〝償却〟しているから自由を得ることができたのではないだろうか。

    オーストラリアの団体「ウォークフリー」の推定値では、5年前の時点で日本には3万7000人の奴隷がいたという。世界ではこの5年で4000万人→5000万人に増えたことを考えると、今はもっと多いかもしれない。
    ILOは、奴隷制での年商は1500億ドルとしている。しかし、多くの専門家はおそらく1兆ドルに迫るのではないかとみている。

    こうしたことを「酷い」と思い、非難する我々自身も、その利益を享受している可能性があることを忘れてはいけない。安売り店で買ったアジア製造の衣料品は、幼い子供が1日22時間も床に座らされて作業したものかもしれない。タイ産の冷凍エビは奴隷労働の手が入っている可能性がかなりある。コートジボワールのカカオを使ったチョコレートはお馴染みだ。iPhoneだって、奴隷労働による部品が使われていた。Appleの努力により、今はかなり解消されたがゼロとは言い切れないらしい。

    この本では、正真正銘の「現代の奴隷」から生還した3人のサバイバーを中心に、その実体がリポートされている。1人はコロンビア人女性だが、奴隷になった舞台は東京、ヤクザに人身取引された例だ。

    奴隷にさせられた方法は、3人とも違う。
    「グルーミング」、「債務奴隷」、「家族を人質にした債務奴隷」。

    ◇ ◇ ◇

    1.ジェニファー・ケンプトン(グルーミング被害者、アメリカ人女性)

    ジェニファーは赤ん坊のときに性的ないたずらをされ、子供時代に虐待され、12歳で強姦された。25歳から始まった人身取引の芽は、ここからあったと本人は考える。トロイという恋人との間に2人の娘がいた。トロイはとても暴力的で彼女をストリッパーとして働かせた。彼女は逃げて保育所で働きたかった。

    トロイが収監され、そこにセイレムという男が入り込んできた。「愛している」「君こそすべて」「ずっと一緒にいたい」などと言葉をかけ続け、9ヶ月から1年ぐらい「グルーミング」は続いた。彼女はコカインとマリファナはしていたが、セイレムは彼女を強い薬物であるヘロイン漬けにした。

    ある日、「君をすごく愛している。俺たちは全てを失いかけている。家が取り上げられそうなんだ。俺たちのために稼いでくれないか」と言い出した。彼女は子供を母に預け、2人分の薬物と寝泊まりするホテル代を稼いだ。稼げないと自分だけ段ボールにくるまって外で寝た。彼女は、セイレムの気持ちが遠のくこと、薬物が与えられなくなることを恐れた。

    売春行為はエスカレートしていった。彼女は妊娠して娘を産んだ。さらに稼ぐため、セイレムは彼女をギャング組織に売った。男女の家に住めることになった彼女だが、トイレやシャワーを使うにも大金を要求された。借金は増える一方だった。逃げ出したかったが、娘を人質にとられているので脅されて売春を続けた。シャワーも浴びられず、お金ももらえず、下着を盗み、つかまった。

    彼女は、閉じ込められた地下室で首を吊って自殺を図るが、ロープが確り固定されておらずに失敗。外で体を売ると行って外出し、自殺防止センターに駆け込むと、そこで解放の足がかりをつかんだ。

    6年にも及んだ監禁、殴打、強姦、肌を焼く煙草の火、身体に彫られた奴隷所有者の名前・・・解放された後も、シャワーを浴びるたび目に入る加害者の名前が彫られた刺青。下着を盗んだ前科がつきまとって就職もままならない。自分と同じような人間を救出する活動を始めるが、薬物にも手が出る。そして、飲み過ぎて(事故)夭逝。


    2.ディーペンドラ・ジリ(債務奴隷被害者、ネパール人男性)

    学歴もあり教職経験もあり、5ケ国語を話す。教員、家庭教師、PC教室の指導員で生活していたが、結婚し2008年に子供が生まれたので、経済的に困り、中東の湾岸諸国での仕事に応募。職業斡旋代理店の広告に、ビザや航空券は会社が支給、手数料はわずか2万ルピー(200ドル)とあった。合格し、生後1月の娘と妻を残してカタールの会社へ。月給は1200カタール・リヤル(330ドル)で、食事と住居も支給。

    蓋を開けてみると諸経費、航空券代で1200ドルを要求される。弁護士2人立ち会いの下で低い利息で金を借りたが、その日、もう一度〝裏の契約書〟への署名を迫られ、利息がなんと60%だった。しぶしぶ署名。

    カタールは暑く、宿舎は倉庫のような建物で電気も飲み水もなし。後に屋上で寝かせられたことも。月給は330ドル(1200リヤル)の約束だったが実際には275ドル、しかも朝食なし、休みの金曜日には食事なし。話とは違う仕事をさせられ、毎日怒鳴られ、給料はもらえず、小遣い程度の50リヤルのみ。カタールをはじめとする湾岸諸国にはカラファ制度があり、契約満了まで働かなくては出国が出来ない。パスポートを取り戻せても、雇い主から出国許可をもらわないと帰れない。自殺を考える。

    彼にとって幸運だったのは、カタール大学の客員教授アンドリュー・ガードナーに出会ったこと。特に色白の白人のため、工業地帯で様子を探り、写真を撮り、人から話を聞くことが困難だったため、ジリに助手として働いて欲しいと言ってきた。その報酬はときに給料よりよく、お陰でノートパソコンが買えた。不当な扱いも彼に聞いてもらえた。

    彼は事務職となり、会社にとって重要な書類を扱える立場に。しかし、奴隷の身のため勝手には持ち出せない。運転手たちがストライキをした。給料が払われていないなどの証拠書類をくれと要求された。勝手にできないと躊躇したが、結局、こっそり渡す。会社の課長は警察にとっちめられ、1年分の未払い給与とボーナス、航空券代を渡した。

    ジリ本人も2年の契約を満了して、出国することに。しかし、3ヶ月の未払い給料、ボーナス、航空券代が払われない。ジリ自身は1ペニーもお金がない。なんとか出国許可を出させたい。会社側は辞められたら困る、いったん出国し、暫く休んで戻ってくれたらお金は払うと約束した。航空券は会社に用意させ、彼は条件をのんで出国、しかし約束が守られるわけがないと知っていたので、帰らなかった。未払い3ヶ月の給料は「お前にくれてやる」と連絡した。高利貸しへの借金返済義務がまだ残ってはいるが、束縛から解かれた。

    訳者あとがきで訳者は、今、アジアの国々から技能実習生が日本に来ているが、ネパール人男性がカタールで被害にあったこの債務奴隷の事例と、その共通点や近さを論じている。


    3.マルセーラ・ロアイサ(家族を人質にした債務奴隷被害者、コロンビア人女性)

    16歳からシングルマザー。平日はスーパーのレジ打ち、週末はナイトクラブでダンサーとして働く。テーブルダンスやポールダンスではなく、本物のプロダンサー。生活は十分普通にできた。しかし、娘がぜんそくの発作で入院し、2週間の入院期間中、24時間つきそった。職を失った。以前、働かないかと声を掛けてきた男に連絡し、500ドルを借りる。男はすぐに仕事を見つけてくれ、書類を準備した。母親には首都ボゴタに行くと嘘をついて娘を預けた。2000ドルの現金と航空券を渡された。行き先は日本だと言われ、初めて乗る飛行機、お金持ちになれるとの思いから、有頂天になった。21歳の時だった。

    成田で2人の男とコロンビア人女性がいた。最初はすごく親切だったが、日本のヤクザに売られたことが分かってくる。あくる日、その女性が「私の金を返しもらわないとね。治療費500ドル、飛行機代やらなんやら」と言ってきた。「安心してください、しっかり働いて返します」と言ったら、お前は5万ドル返さないといけない、と訳の分からないことを言われる。「お前を解放するための値段だよ」。

    警察に電話をしますよ、と反論すると、してもいいが、警察の手によって解放されても、あんたの娘の葬式に間に合うかしらね。母親がどこで働いているかも知っている、弟がどこに行っているか、妹がどこの高校に通っているかもね、と脅された。

    彼女は1年半、路上、ナイトクラブ、マッサージ店など、ありとあらゆる場所で売春させられた。しかし、借金は減らない。遅刻を理由に借金が増やされる、病気になると病院に連れて行かれ高額な治療費を請求される、ナイトクラブにつれて行かれて1週間働くことになれば、マネージャーに吸い上げられるのとは別にナイトクラブに対してもショバ代を自分自身が払わないといけない、といった具合。

    彼女には常連客がいたが、その一人に誘拐されていることを話した。信じてもらえなかった。お前はナイトクラブでもマッサージ店でも見かけたし、外を歩き回っているではないか、と。必死で説明し、やっと分かってもらえた。あと1週間で5万ドルを返し終わる時期だったが、返し終わったと思ったら、また別のところに売られることを極端に恐れていた。その常連客はウィッグと上着を用意し、変装させてくれた。

    脱出に成功し、東京のコロンビア大使館に飛び込んだ。大使館の人に言われ、初めて気づいた。自分は被害者だったんだと。お前は売春しかできないと繰り返し繰り返し言われ、洗脳されていた自分に気づいた。


    ********

    ネパールの就職斡旋代理店の95%は、腐敗している。

    モーリタニアでは今日でも人口の約17%が奴隷として囚われている。1981年、政府は世界で最も遅く奴隷制を違法としたが、今も続いている。

    ハイチは制度としての奴隷労働が存在している。

    中国では「労改」(労働改造)強制収容所に囚われている何千人もの政治犯がいて、制度的な奴隷労働に政府が加担している。珍しい例。

    4030万人いる奴隷(2017年のILO推計→2022年には5000万人に更新)のうち、70%が強制労働、30%が性的人身取引被害者。

    インドには世界中の現代奴隷の3分の1以上がいて、そのうち何百万人もが子供たち。アパルナ・ラワットは、救出された子供奴隷の1人。著者が訪問する3ヶ月前にデリーの縫製工場から救出された。26人の子供たちについて語ってくれた。
    「子供たちはとても過敏に。工場長も人身取引業者も冷酷で、金槌で子供たちを殴っていました。何か間違いを犯そうものなら、2時間ずっと立たせておきます。ひとりの子は今8歳ぐらいだけれど、4歳のときに売られ、今なお大きな問題を抱えています。また別の子は歩くことすらできませんでした。ずっと同じ場所に座った姿勢で、22時間連続で働かされ、寝るのも同じ場所。家具や階段など、何かにつかまらなければ歩けませんでした。
    他の子たちは体じゅうか傷だらけでした。子供たちは二つの地下室で働かされ、太陽の光を見ることもなく、部屋の外に出ることも、トイレに行くことさえ許されなかった。22時間休みなく働かされて、仮眠を取りたいと思ったら、金槌で殴られた」


    <その他のサバイバー>

    ナディア・ムラド(イラク)
    2014年、ダーエシュ(イスラム国)に誘拐された21歳女性。テロリストたちは、村を襲うと、男性、女性、子供を分け、男性と年配女性をその場で殺害、若い女性と子供を奴隷に。ナディアは最古の宗教のひとつ「ヤジディ」という共同体で暮らしていたが、ダーエシュたちはヤジディを人間として見ていなかった。ナディアはモスルに連れていかれ、カタログに載せられ男たちに買われた。脱出に失敗、失神するまで輪姦された。3ヶ月後、再度の脱出。ある家にかくまわれ、ドイツに難民として送られた。

    エヴェリン・チュムボウ(カメルーン)
    9歳のときにアメリカのメリーランドへ。家事労働奴隷として売られた。叔父の仕業だった。チャンスの国アメリカでならよい教育が受けられると約束して、それをした。主人はカメルーンから移住して一財産築いた女性。殴られ、ごみのように扱われ、7年もの間、床で寝かせられた。面倒を見ていた主人の子供2人の眼前で裸で殴られ、主人の意に沿わなかったという理由で一晩中立たされ、眠らせてもらえなかった。学校にも行かせてもらえず、仕事は1日たりとも休めず。
    18歳の誕生日直前に脱出できた。FBIは当初、彼女がアメリカの永住権が欲しいのだと決めつけた。裁判での争いとなり、女主人は禁錮7年に。無賃労働に対して賠償金10万ドルの支払いも命じられたが、それが支払われることはなかった。

    スニータ・ダヌワール(ネパール)
    2015年の大地震以来、アフガニスタンを抜いてアジア最貧国になったネパール。そこからさかのぼること20数年。彼女は14歳のときに誘拐され、インドのムンバイにある暗黒の売春外へと売られた。5年間、想像を絶する不潔な売春宿で、毎日30人以上に売られた。1996年、強制捜査。500人の少女を発見、うち200人近くがネパール人だった。インドでは色白で笑顔が美しいため人気がある。ところが、ネパールへの帰国がままならない。ネパール国民である証明が必要だが、売春婦だったことを恥じて父親が娘であることを認めてくれないケースが多い。なかには自分の父親に賄賂を渡さなければならない女性も。

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    2023年06月17日
  • 現代の奴隷――身近にひそむ人身取引ビジネスの真実と私たちにできること

    Posted by ブクログ

    現代でも「奴隷」のように働かされる人はいっぱいいるよね、って本。
    洗脳されたり借金とか社会制度とか脅しとか、尋常ではない状況に追い込まれる人がいて、助けてあげたいと思う人がいて、単なる南北問題でもない。
    ちょっと冗長だけど世界にはこんな事もある的な知識としてだけでも読んだ方がいいと思います。

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    2023年03月13日

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