大坂といえば「天下の台所」
そんな「天下の台所」になった一因に「淀屋」という豪商の存在があるらしい。
その淀屋をモデルとした物語。
米商人『丹生屋』のやんちゃなぼん五代目・理兵衛と御付の忍・嵐水を中心とした話で、元服を終えたばかりで跡を継ぐのを嫌がる理兵衛と、宥めつつも跡を継がせようとする嵐水の二
...続きを読む人三脚で立派な米商人になるサクセスストーリーかと思いきや、違った。
いや、正確には合っている。でも、違う。
何故、理兵衛の父は町人に陰で馬鹿にされながらも、放蕩して贅の限りを尽くしているのか。
何故、米商人の息子の嵐水は忍になったのか。
全てはある計画に基づいて行動していた!
というのが序盤には分かるのだが、そこからが面白い。
ただのぼんだった理兵衛が、苦悩しつつ、五代目として大立ち回りを演じる成長記でもあり、嵐水の忍として人間としての成長記でもあり、当時の政の記録でもあり、町人の暮らしの記録でもあり、全てが興味深く面白かった。
話は次々と目まぐるしく展開され、涙あり、驚きあり、読み終わった後にもう一度序章を読んで、ほほう……と感嘆の声を上げてしまう程、のめり込んでしまった。
実際の淀屋を軽く調べてみたところ、確かに謎の多い豪商だったようで、その謎はこの本に描かれているような事だったのか、それとも全く違うのか、浪漫がある。
とにかく商才に長けている一族だったようなので、現代も存続していたら、どんな事業を成し遂げたのか。
いや、今も実は存在していて、密かに経済を回しているのだろうか。
時代劇物が好きな人、大坂に住んでいる人、は読んで損は無いと思う。
登場した人物の中で個人的には大石良雄、松平頼方、尾形光琳が好きだった。
今度、大阪に行く機会があった時は淀屋橋と常安橋を見に行こうと思う。
しかし、女はげに恐ろしきものよのう……。