本書は、著者が「新潮講座」で講じた創作講座を書籍化したもの。
その著者はというと、高村薫さんの担当を20年以上務めてきたベテラン文芸編集者の方だとのことだ。
私自身は一ミリも小説を書きたいとは思っていない。
どちらかというと、自分がもっと面白く読めるようになりたくて、あるいは読者として鋭敏になりた
...続きを読むくて、文学理論や文章読本の類を時々読んでいる。
本書を手にしたのも、そういう関心からだ。
小説の書き方の本というと、たしかに実作者の手に成るものが多い。
編集者が書いたというのは、自分にしてみればちょっと新鮮だった。
本書は、新人賞にこれから応募しようという人に向けて書かれている。
曰く、賞の傾向と対策を立てても意味がない。
また曰く、自分語りから離れよ。
そして、キャラ設定を固定させすぎるな。
他にも構成をどうすべきか、視点人物を誰にすべきか、テーマを語らずに表現せよ、などの話を、実例を挙げながら次々に解説していく。
物語性、話の面白さを何より重視するエンタメ小説のための指南である。
それぞれの指摘をなるほどなあ、などと面白く読んだけれど、一方では、なぜ最近自分が小説をあまり読まなくなったのかも、本書を読んでほんのりわかった気がする。
少しでも面白くという作為が見える文章を追うのは、存外疲れるのだ。
まあ、世の中再びのミステリブーム。
ミステリとファンタジーしかないのか、とちょっと嫌になっているのだけれど。