世界にはお騒がせな国が多いが、そうしたお騒がせが世界経済に悪影響を及ぼし、かつ地域だけで無く世界全体の平和と安寧を揺るがしかねない国がある。代表格として誰しも名を挙げるのは北朝鮮とイランであろう。かつてアメリカのブッシュ大統領から「悪の枢軸」呼ばわりされたこの二つの国は、それぞれ核開発を推進し、かつそれを遠隔地まで飛ばすためのミサイル開発にも余念が無い。彼らが核を手に入れる最たる理由は勿論エネルギー政策としての自国のための平和利用はあるだろうが、自国の生存権を守る事が最大の理由である事は間違いない。彼らにとって自国の生存権を脅かす存在の中で最大の国は今更いうまでも無いが、アメリカである。アメリカは従来から世界の警察との自負から、世界の平和を乱す国へ軍事力を送り込み、平和を構築する表向きの目的を掲げながら、一方で国内産業を潤すための武器開発と諸外国への輸出を続ける。言ってみれば、世界が平和とかけ離れた不安定であればある程、アメリカの武器は売れる。そして一度平和目的を掲げて彼らが兵を動かせば、その給料は諸外国からの援助と相まって、給与の支払いもできる。要するに雇用創出までをもやってのける事ができる。それは小学生でもわかる簡単なアメリカの理論であり、どの国の大人たちもそれを止める事は出来ない。何故なら(勿論平和のためにアメリカが血を流さなければ、自分たちが危ういという事もあるが)、アメリカはドルで世界経済を動かし、かつ強大な軍事力を持つからだ。あまりにも強大なその力に本気で逆らえる国など世界に存在しない。
本書は北朝鮮とイランを対象にその歴史と政治のあり方、悪の枢軸とまで(アメリカに)呼ばれながらも、現時点でその体制や国としての形を変わらず維持し続けているこの2国を考察していく内容となっている。2022年に出版されたものではあるが、基本的に今も変わらず体制を維持し続けている。唯一変わった点があるとすれば本年2026年にアメリカが武力でイランを封じ込めようとし実力行使に出た結果、寄稿当時イランの指導者であったハーメネイ氏がアメリカの手によって殺害された事だけだ。だがイランはその後も崩壊する事なく存在し続けているし、本書がリスクとしていたホルムズ海峡の封鎖と原油ショックが現実のものとなった。
本書を読んでいくと決して北朝鮮とイランの二つの国だけが悪いとは言えない事を理解する事ができる。彼らの生存を脅かし、内政干渉するのは諸外国、特にアメリカの存在が大きいことに気がつく。朝鮮半島を南北に分断支配した片側はアメリカの勢力であるし、北朝鮮から見た南北統一を阻止したのもアメリカだ。そしてイランを融和的な態度で揺さぶったのちに、再び経済封鎖と脅しをかけるのもアメリカだ。言ってみれば、世界の行き過ぎた民主主義とグローバリズムの大波の中で、常にこの二つの国は転覆の危機に陥りながらも、何とか沈没せずに生き延びた国なのかもしれない。一番わかりやすいのはアメリカの二大政党政治でコロコロ変わる政策がイランや北朝鮮の不信感を買っているという事実だ。勿論この二国だけがその影響を受けるわけでは無いから、日本をはじめヨーロッパ諸国や中国もアメリカの出方を窺いながらの航海である事に違いはない。問題はそのアメリカから敵視されるか否かであり、北朝鮮とイランは常に標的にされている。そしてやはり最終的にはその原因を自ら作り出す自分たちに責任があるとも言えるが、問題はそんなに簡単ではない。
世界の平和と安寧を脅かす二つの国の存在を理解し、荒波の中で自分たちがするべき事は何か。改めて考えるきっかけをくれる一冊だ。