防衛大というと、自衛隊幹部になる人が行くところかな、と、ぼんやりとしたイメージしかない。
新聞書評で見かけ、そういえば防衛大ってどんなところなんだろうか、という興味で手に取ってみた。
著者は第9代防衛大学校長を務めた人物。自身は慶応出身で、防衛大のたたき上げではない。
防衛大の特殊性や三大行事、教
...続きを読む育・訓練、日常生活、成立と歴史、大学校長の仕事などについて述べられる。
まず驚くのが、防衛大学校が各種学校であって大学ではないこと。だからトップも学長ではなく、学校長なのだ。
大学と名乗るには文科省の所管である必要があるが、防衛大は防衛省所管であるため、大学とは認定されない。1991年までは4年間教育を受けても学位は与えられなかった。現在では学位授与機構が出来たため、ここを通じて学位は授与されるようになった。大学院にあたる研究科を修了すれば修士号や博士号も得られる。
防衛大は大学としての側面と士官学校としての側面がある。
1952年に保安大学校が設置され、54年に防衛大学校となったのが、防衛大の始まりである。ちなみに防衛医大は防衛大の医学部ではなく、別組織であり、所在地も異なる。
大学校というが、扱いは公務員であり、給与も出る。したがって入学試験に相当するものは、採用試験と呼ばれる。
世界各国の士官学校は陸・海・空それぞれに分かれた形になっているところが多いが、日本の場合は1つに統合されている。
防衛省の人事教育局の管理下にあるため、自衛隊との直接の結びつきは弱い。
歴代学校長はすべて文官であるが、これは戦前の軍国主義への反省から来ているものだろう。が、世界的には士官学校の校長が軍人でないというのはかなり珍しい。
世界各国から来る留学生がかなり多いのも日本の防衛大の特色である。
学生は寮生活を送る。規律が求められるため、上下関係はかなり厳しく、門限や外出規制等規則も厳しい。だがそうでありながら(いや、そうであるから、かもしれないが)、学生同士の結びつきは強く、生まれ変わってもまた防大で学びたいと思う者も多いらしい。
防衛大の学校長の毎日はかなり忙しいようで、全国各地で行われる防大生の訓練を視察したり、潜水艦や護衛艦に乗ったり、世界の士官学校を訪れ、親交を結んだり、盛りだくさんな日々である。外部との折衝が仕事の大きな部分を占めている印象を受けた。
欲を言えば、学生の日常生活や実際の授業内容(特に防衛学)がもう少し知りたかったようにも思うが、著者自身は防衛大の出身者でもなく、また機密にあたる事項も多いのだろうから、これはないものねだりかもしれない。
全体に、なかなか興味深く読んだ。