不動産コンサルタントによる、富裕層向け不動産投資の話。リクルートのSUUMOに長年勤め、国土交通省出向の後、現在は不動産コンサルタントをしているだけあり、実務に詳しい。知っていることもあるが、富裕層向けの不動産投資の特異な情報が多々含まれており、役に立った。勉強になる1冊であった。
「せっかく苦労して築いた財産を、無為に減らすことなく堅実に守っていきたい。そう考えている富裕層の方に向けて、本書では適切な予算の組み方や物件の選び方、不動産会社との付き合い方、節税につながる知識などの資産防衛戦略についてわかりやすく解説しています」p5
「(野村総合研究所)「富裕層」を純金融資産保有額1億円以上5億円未満の世帯と定義しています。さらに、それ以上の純金融資産を持つ世帯は「超富裕層」とされています」p12
「私の経験からすると、代々資産を受け継いでいる富裕層は安定性の高い資産のポートフォリオを組む傾向が強く、一代で資産を築いた富裕層はリスクを高く設定する傾向があります」p19
「物件の選定さえ誤らなければ不動産投資は非常にリスクが低く安定した投資先です」p31
「一般的に利回りが低い物件とは、そもそも購入需要や賃貸需要が高い物件、すなわち人口や人出の多い好立地で、なおかつ築浅の物件です。一言で言えば「空室率の低い」物件ということになります」p63
「資産総額が5億円の人は、1億円(資産総額の2割)を不動産へ回して3億円(資産総額の6割)の借入を行います。この資金を基に総額4億円(借入を含めた資産総額の半分)のオフィスビルなどを購入します。つまり、借入を含めた不動産の資産総額と残りの自己保有資産の額が同程度となるように資産を形成すればよいのです」p70
「融資を活用する際には、可能な限り長期の借入期間を取るべきです。長期間の借入を行うためには、耐用年数の長い物件、つまり築浅の物件を購入することが必要です」p71
「自身の趣味を反映させた書斎やオーディオルーム、サンルーム、ペット用の設備などが備わった家はまさに「夢」が反映された快適な住居といえます。しかしながら、売却する場合に、趣味の設備や特殊な間取りがある物件は買い手がつきにくい傾向にあります。売却を急ぐ場合に買い手を見つける方法は、価格を下げるしかありません。自身のこだわりのためにかけた費用は売却価格に反映されるどころか、むしろ不利に働くことが多いのです」p80
「正直なところ、すぐに転売できるほど割安な物件を探そうとするのは時間の無駄です。不動産には理由がなく割高な物件はあっても、理由がなく割安な物件はないからです。特に都心の不動産については、売買事例が多数あるため相場が明確に決まっています。にもかかわらず割安な価格に設定されているものには、必ず何かしらの難があると考えるべきです」p85
「いわるゆ「お買い得」と言われたら要注意です」p88
「飲食店のテナントに向いた立地なのに重飲食不可の設備にしてしまったりすると、せっかくの土地がもっているポテンシャルを最大限に活用することができなくなってしまいます」p92
「(借入による不動産購入)相続の際に子孫に残す不動産について、借入金額が大きければ大きいほど相続税が削減できます。相続税評価額を計算する際に、借入金は最終的に資産から差し引いて計算されるため、借入自体にも相続税の資産評価額を圧縮する効果があるのです」p100
「都心の一等地は地価が非常に高いため、郊外や地方都市の物件と比べて利回りは低くなりがちです。不動産投資で積極的に資産を拡大したいと考える人には物足りなく見えるかもしれません。しかし都心の一等地は何よりも運用が安定しているという魅力をもっています」p102
「居住用物件は一般的に築年数の経過により賃料が下がる傾向にありますが、事務所・店舗は築年数よりも立地条件によって賃料相場が決まります。駅前などの集客力のある立地の物件であれば、建物が老朽化しても長期間にわたって高い賃料収入を得られる見込みがあります。事業用物件はとにかく立地が命、ということを肝に銘じてください」p108
「適切な税務知識を保有しているか判断するための一例。1. AFPを所持している。 2. 表面利回りだけでなく、NOIやCFについても説明がある。 3.売却時に活用できる税制メリットについて詳しく説明できる。 4. 相続税評価額の圧縮効果についての正確な知識がある。 5.減価償却による所得圧縮効果について正確な知識がある。 6.融資期間・減価償却期間・大規模修繕時期を踏まえた売却判断ができる。 7. 資産管理法人の相続対策での活用と所得分散効果について正確な知識がある」p158
「広告サイトに掲載されている事業用の一棟物件は、あまり良い条件ではないか、その条件では買い手がすぐに見つからなかった売れ残りが大半です」p160
「最高所得税率は45%となっており、一律である住民税10%と合わせると55%となります。一方で、法人税率は金額に関係なく23.2%であり、さらに中小企業であれば所得のうち年800万円以下の部分は軽減税率15%が適用されます。これに法人事業税・法人住民税等を加えても、実効税率は33%程度です」p196
「絶対に気をつけていただきたいのは、節税自体が資産を防衛するために手段から目的にすり替わってはならないということです(入居率が最も大事)」p208