いろいろカバーされてはいるが、ちょっと想定読者をどこにおいているのか分かりにくい本。
まず、Web3とはそもそもなにか、みたいなところから体系的に理解したい向きにとっては、専門用語の説明がなくて分かりにくいだろう。
一方、基礎知識のある人にとっては、インタビューの多くはスタートアップストーリーとし
...続きを読むて馴染みのあるものも多いだろう。
そういうやや不親切な感じがあることとは別に、このWeb3の行末についてはいろいろ考えてみたくなるのも事実だ。
そもそも、中央集権的なGAFAなどプラットフォーマー、すなわちWeb2に対してより自律分散なのがWeb3だ、とよく言われるが、自律分散はそもそもインターネットの定義でもあったはずだ。
つまり、Web3でも今後スタープレイヤーが登場して場を一気に支配する可能性は大いにあるし、実際、編著者の必死の誘導にも関わらず例えば野口悠紀雄氏なんかはその辺を率直に語っている。
また、これまでのネット社会よりDAOがより民主的?なのは百歩譲って事実だとしても(特定のプラットフォーマーにコントロールされないから)、資本主義の新たなオルタナティブだ!みたいな論は本当か?といいたくなる。
NFTなんかも、アーティストにとっては作品マネタイズ上貴重なツールなのはわかるが、これまで財産として価格のなかったものに価格をつける仕組みを作り上げ、その取引を膨張させるのはまさに資本主義の得意技だったはずである。分かりやすいところで言えば、高層ビルのための容積率の規制緩和などはまさにこれで、これまで値段のなかったビルのさらに上の空気、の値付けに他ならない。この辺も、野口氏はまずまず懐疑的な視点で言及してくれている。
とは言え、こういう新しがり方に対しては否定と礼賛が交錯するのが当たり前で、だからこそ面白いとも言える。
あれこれ読んだり体験したりしながら、とにかく状況にキャッチアップし続けることが大切、という意味で、もちろんとても有益な本であった。