作品一覧
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3.7八年ぶりに因縁のある旅人と再会した料理人の話、飢饉に苦しむ国を救った商人の話、不思議なナイフで自らの“影”を切り離した男の話。一見関係が無さそうな三つのエピソードが並行して語られ、終盤でひとつになるとき、驚愕の真相が浮かび上がる! 大胆な仕掛けと巧みに張り巡らされた伏線で、本格ミステリの謎解きを紡いだ、第七回ミステリーズ!新人賞佳作「商人(あきんど)の空誓文(からせいもん)」。どんな賭けにも負けない力を得た少女、あらゆる傷を跡形なく消し去る名医……。この世の理に背く力に人生を狂わされる者たちの五つの物語と、その背後で進行する、国の存亡に関わる陰謀。架空の異国を舞台に、本格ミステリの興趣を巧みに織り込んだ、異色のミステリ連作集。/【収録作】商人(あきんど)の空誓文(からせいもん)/あれは子どものための歌/対岸の火事/ふたたび、初めての恋/諸刃の剣
ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
ファンタジーとミステリの融合、それだけではよくあるタイプもかもしれないけどどこか違う。昔話のような、乾いた残酷さとシニカルさを感じさせる。キャラも立ってる。うん、おもろいですよ、これ。この世のことわりに背く願いを叶える者ワジとの契約とその利用のしかたについての推理。
【商人の空誓文】城の料理長の息子だったキドウと、旅人カルマと、ノドの国の滅びと、商人フェイ。「過去を知る奴らは厄介だ。少ないに限る」(p.9)。「お前の知っていることが、どうして真実であると言える?」(p.11)
【あれは子どものための歌】声と引き換えに賭けに負けない力を手に入れた娘エミリアと、商人フェイと、この世のことわりに背 -
Posted by ブクログ
ネタバレ架空の異世界を舞台にこの世の理に背く願いを叶える魔女とその魔女と契約し人生を狂わされた人々を追う短編集。
ひとつひとつを別々の物語として読んでいるうちに、数名のキャラクターを足掛かりにひとつの流れに収束していく物語だったと気づかされる。
この世の理に背く力に対抗する手段が、同じく理に外れる魔法じみた力ではなく、推理力と弁舌(屁理屈ともいう)というのは面白いなあと思う。
表題作の「あれは子どものための歌」は特にお見事。「対岸の火事」も好き。
ただ、作者の頭の中の出来事を読者の視界に再現するための翻訳の言葉が足りないと感じた。ところどころ何が起きているのかわかりづらく、読んでいて引っか -
Posted by ブクログ
ネタバレ1話目は、まさか影の分離なんて現象がマジでありうる世界とは思わなくて、寓話として読んでいたものだから、ラストの収束についていけずに置いてきぼりを食わされてしまった。
そういうサプライズなんだろうけど感心より困惑が勝ってしまって……。
2話目以降はそういうものとわかった上で読めたけど、うーんなんだろう。メインキャラや世界観には魅力を感じられなくて、いまいちハマれなかったです。
描写がサラッとしててあんまり生活感を感じなくて「よくある中世風ファンタジー」の範囲を脱してなかった。
ただ表題作の出来は頭抜けていたと思う。
ワジとの契約解除のロジックが面白かったし、声を失っても歌を忘れなかったエミリ