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  • がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ
    5.0
    1巻3,520円 (税込)
    「がんは進化のプロセスそのものである」。無軌道に見えていたがん細胞のふるまいも、進化という観点から見れば理に適っている。がんの根絶をしゃにむに目指すのではない、がん細胞を「手なずける」という新しいパラダイムについて、進化生物学は原理的な理解をもたらしてくれる。著者は、この新しい領域を開拓する研究者の一人。進化の視点の基本から説き起こし、協力し合う細胞共同体としての身体の動態や、その中で《裏切り》の生存戦略を選び取るがん細胞の生態を浮かび上がらせる。身体にとって、がん細胞の抑制はつねに大事なものとのトレードオフだ。そんな利害のせめぎあいを分析することにたけた進化生物学の視点から、がんの発生や進展を、あるいは遺伝子ネットワークや免疫系との関係を見直せば、たくさんのフレッシュな知見と問いが湧いてくる。そして最後に話題は新たな角度からの治療へと及ぶ。がんの発生は、サボテンからヒトまで、ほとんどの多細胞生物に見られるきわめて根源的な現象だ。細胞生物学、腫瘍学から臨床にわたる、様々な個別の分野で蓄積されてきたがんの理解全体に対して、進化生物学はそれらをより基盤的なレベルで支える観点を提供していくことになるだろう。その本質に触れて、学べる一冊だ。

ユーザーレビュー

  • がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ

    Posted by ブクログ

     がん専門の臨床家か研究者による著作かと思いきや、なんと著者の専攻は心理学である。もちろん略歴にカルフォルニア州立大学サンフランシスコ校のがんセンター創立メンバーとあるから知見と経験は十分だろうが、本書の記述を見ても臨床データに基づく記述は限定的で、数理モデルに基づく仮説が中心だ。にも関わらず、著者の専門である「協力理論」を軸とした本書の扱うスコープは極めて広く、様々なアナロジーを豊富に含み非常に説得的である。がんに関する書籍としては最近では『ヒトはなぜ「がん」になるのか(キャット・アーニー著)』があり本書の内容もかなりの部分がこれと重複するが、そもそも「なぜがんはこれほどまでに扱いづらいのか

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    2022年03月26日

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