知っている人(といっても著者は私のことは覚えていないと思うが)が書いた本を読むのは初めてだったが、
知っているかどうか関係なく、とても面白い本だった。
彼とコミュニケーションをとっていたわずかな期間にも聞いていた、大学時代は英語をマスターする、という信念の裏にあるものだったり、曽祖父の話の昇華の目
...続きを読む標、大学時代の演劇活動のバックボーンなど、並大抵でない覚悟と苦労が垣間見えたと思う。
伝記的な本を出すのにはまだ若いのでは、と勝手に思っていたが、すでに他の人にはない経験を多くされていて、また文才があって一気に読んでしまった。
確か、文集的なものを出版されていたはず。
いろいろと挑戦されているが、その裏には芯があるというのが感じられた。
コメディについての考察も、無知な私にも刺さるものがあった。
「観客も育てないといけない」という言葉にハッとした。
日本のお笑いが好きだが、ちょっとウィットに富んだものや、教養が必要なもの、少しセンセーショナルなものは、やはりまだ日本では受け入れられていないと感じる。
誰でも無知でも子供でも笑えるようなお笑いは確かに面白いけど、新鮮味がなくて、ありふれてしまう。
自分だけの味がある芸人がどれくらいいるのだろう。
その一方で、芸人たちだけの問題か、というとそうでなくて、私たち受容者側の感覚が備わっていないから、「安全な」笑いを求め、そこに満足する。
だからこそ冒険しすぎた者は徹底的に叩かれてしまう。
ウーマンラッシュアワーのネタとかがそのうちもっと評価を集めるのかもしれないな、と本作を読んで思った。
デリバリーの仕方の工夫はいるのだろうけど。
日本のお笑いにスタンドアップを根付かせる、という著者の今後の行動を一観客として楽しみにしている。