ムーンナイト。元傭兵の多重人格者。挙動不審で、頭の中ではいつもキャプテンアメリカとウルヴァリンとスパイダーマンが会話している。このデッドプールの偽物みたいなキャラクターを、シリアスに掘り下げたのが本作だ。
ムーンナイトは特別な力があるわけではないし、ガジェットもチープ。ウェブシューターやウルヴァリ
...続きを読むンの爪の偽物を、元シールズのC級エージェントに作らせるのが関の山だ。本作での敵はカウント・ネフェリア。大物ヴィランといっていいだろう。ムーンナイトは狂気のような使命感で、はるか格上のA級ヴィランに立ち向かっていく。
ムーンナイトは、自分の憧れたヒーロー(頭の中にいる3人)をまねた「ヒーローごっこ」を本気でやっている。それは、客観的に見れば頭がおかしい行為だ。意外なことに、彼はそのことに自覚的である。劇中で彼は「ヒーローって、みんないかれているんだ。そうでないと、こんなマスクを被って正義のために戦ってないだろ」という。ムーンナイトは狂っている自分を醒めた目で見て、自嘲しているのだ。その姿はいい歳をしてヒーローのコミックに夢中になっているぼくらの似姿でもある。本作がシリアスなトーンでありながら、どこかユーモラスでムーンナイトに親しみを覚えてしまうのは、そのせいなのかもしれない。