第一次世界大戦勃発のきっかけとなった
オーストリア・ハンガリーの皇太子暗殺。
その人物が1892年の世界周遊旅行の際に
日本へ立ち寄った時の紀行文。
オーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者であった、
フランツ・フェルディナント大公。
長崎に到着した後、熊本、宮島、京都、大坂、奈良、岐阜、箱根、日
...続きを読む光、東京など、
世界周遊の旅の一環として、日本を訪れた。
熱烈なる歓迎、異質の文化、堅苦しい式典など、
自分が見た日本の姿を描いている。
そして、2万点にもせまる美術品の蒐集も行う。
この人は、周囲の反対をよそにチェコ人の女官と結婚したんだけど、
1914年、ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボの軍事演習視察へ
行った際に、セルビア人民族主義者に暗殺された。
これを機に、
オーストリア・ハンガリーはセルビアに対し宣戦布告し、
第一次世界大戦が始まった。
歴史に疎いわたしは、
この本を読んでいる最中は、WWⅠ開戦のきっかけとなった
この人だって、気づかなかった・・・。
でも、ともかく、すごい。この視察の豪華さは。
わざわざ道を造って、豪華な宿舎を建てて、豪勢な食事を用意して。
どれだけ、当時の日本がこの人を、この国を重用視していたか、ってことがわかるわ。
それを、いらない部分については冷めた目で見たり、
良いと思った部分は、心から感激したりする皇太子の姿が目に浮かぶ。
ヨーロッパを真似た建物を、ちょっと馬鹿にしたり、
日本の伝統舞踊は退屈だって言ったり。
でもね、日本独自の文化を大切にして欲しい、っていう愛情が伝わってきたな。
日本人の丁寧さ、礼儀深さ、日本食のおいしさに感激したみたいだし。
訳者もうまいし。なかなか興味深い一冊でした。