まずは、「まえがき」冒頭を。「以下の物語は、若い読者にシェイクスピアを学ぶための入門書を提供するつもりで書いたものです。そのために、シェイクスピアのことばをそのまま取り込めそうなときには、いつでも原文をそのまま利用しています。また、シェイクスピアのことばを一貫した物語の定まった形式にするために、何か
...続きを読むをつけ加えた場合も、シェイクスピアが書いた美しい英語の効果をもっとも損なわないような用語を選ぶように苦心しました。ですから、シェイクスピアの生きた時代以降に英語にはいってきた用語は、できるだけ避けるようにしました。」私が、実際に戯曲を読んだのは数篇なのに、シェイクスピアの主な作品の筋立をよく知っているつもりでいられるのは、ラム姉弟のおかげなのだった(最初は岩波少年文庫版による)。上巻は、あらし真夏の夜の夢冬物語から騒ぎお気に召すままベローナの二紳士ベニスの商人シンベリーンリア王マクベスの、以上10篇。戯曲を読み込むには、またちょっとした技術が必要だから、ラムのこの作品はほんとうにありがたいものだった。「若い読者」でなくなってからも、こうして時々参照する。真摯で丁寧な「まえがき」から、もう一箇所だけ引用する。「若い読者のみなさん、もしさいわいにも、この要約した物語があなたがたのだれかを楽しませるほどの出来映えであれば、この本は、あなたがたがもう少し大人になって、シェイクスピアの戯曲を詳細に読むことを許されるようになりたいな、と願わせる以上の悪い影響は及ぼさないだろうと、とわたしは思っています(このような願いは、ひねくれたものでも、不合理なものでもないでしょう)。」かなり大きくなってしまった私は、この冬また、いくつかの戯曲を読み直してみようと思っている。じゅうぶんに完成された「物語」だけれど、「時期が到来し、思慮深い先輩の許可を得て、シェイクスピア戯曲を読者のみなさんが手にするとき」(同じく「まえがき」より)への希望の意味を込めて、☆をひとつ減らしました。