野原慎司の作品一覧
「野原慎司」の「今こそケインズ!?」「人口の経済学 平等の構想と統治をめぐる思想史」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「野原慎司」の「今こそケインズ!?」「人口の経済学 平等の構想と統治をめぐる思想史」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
ビジネス・実用
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Posted by ブクログ
経済学の専門家が、人口について歴史的な考え方の変遷を研究し、まとめたもの。重商主義の時代から現代にいたるまで、経済学がどのように人口を扱ってきたのか述べている。アダム・スミス、マルサス、リカードウ、J・S・ミル、ケインズなどの思想家、経済学者の人口に関する考え方をまとめており、自由と平等、経済格差や統治に重きが置かれている。著者が言うとおり、子供を産む行為の所得や費用分析など、純粋な経済的な人口・出生分析では限界があり、伝統的な考え方、医療や避妊、教育レベル、政治体制など多岐にわたる問題といえる。きわめて学術的にまとめられており、現在の研究成果にも触れられていて役立ったが、哲学書的な内容のところなど興味が持てない部分も多かった。
「住民は衰退する国からは身を引く(1698年)」p60
「小さな都市から大きな都市へと多くの人が移住し、農村から都市への移住も生じた。農業成長率は1720年代から1750年代にかけて約0.3%であり、成長があるものの工業より成長率が低かった」p90
「(マルサス)人口増加を妨げるのは、有効需要の不足のような経済的原因のみならず、戦争の多寡のような政治状態、衣食住などの生活習慣、結婚などの制度があり、経済はごく一部の要因に過ぎないことがわかる」p178
「知能の向上は上位者の権威を絶対視せず、独立して判断する傾向をもたらす。とりわけ、女性が社会的に独立することにより、生殖への動物的本能の不当な優位性が突き崩され、過剰人口の原因が取り去られる(J・S・ミル、1965年)」p206
「平等と豊かさの両立には行き着かない(J・S・ミル)」p210
「20世紀の労働力過剰問題は、人口増大それ自体ではなく投資の不足が問題である(ケインズ)」p240
「人口が増加しているとき、一般には期待よりも需要が大きくなり、需要見込みが楽観的となるため資本需要が増加傾向となる。ところが人口が減少すると、需要が期待よりも少なく過剰供給の解消が困難になる。その結果、悲観的雰囲気が広がり資本需要が減少傾向となる。こうしてケインズは、人口の増加かから減少への転換は、繁栄に対してきわめて悲惨な結果をもたらすと述べる(1973年)」p242
「(少子化の原因)生産や教育など家族が果たしていた機能(家庭内で生活必需品の生産、教育が行われた)は、やがて企業・工場や教育機関が担うようになり、家族はそれらを喪失した。大家族を維持するのに、よりお金がかかるようになったのである」p260
Posted by ブクログ
本書は、戦後の経済学史家6名を取り上げて、日本資本主義がいかに捉えられたかを論じている。取り上げられた学史家は内田義彦(1913−89)、大河内一男(1905-84)、高島善哉(1904-90)、小林昇(1916-2010)、水田洋(1919- )、伊東光晴(1927- )。最後の伊東光晴を除いて、我々世代の先生の先生というくらいの世代が中心で、戦後の学史家といっても戦前に研究を開始した世代の方々である。
本書はこの6人が日本資本主義をいかに捉えられてきたかを中心に辿りながら、今なお考えられるべき問題(「近代化」の問題、豊かさとは何かなど)に対してどのように向き合うべきかを示唆している。
もちろん、日本資本主義どう捉えるかについては、1930年代の日本資本主義論争に典型的に現れているように、マルクス主義的な観点からの分析の成果がある。この6人は論争の当事者ではないが、かなり影響を受けて来た世代である。その意味でマルクスによる歴史把握をそのままテーゼとして受け入れるかそうでないかは別としてもその距離感を確認しておくことは重要であり、本書でも叙述されている。
また、歴史認識に関していえば、日本資本主義論争そのものよりも大塚史学的な把握が(伊東光晴は別として)、強弱はあるものの基本にはあるように思われる。大塚久雄は学史家でないという解釈だろうから本書では取り上げられていないが、マルクスとウェーバーの研究から導き出された大塚史学の方法は戦後の経済学史を考える上でもはずせないだろう(もちろん本書でも各所に大塚は登場するのだが)。その意味で本書は隔靴掻痒の感を否めない部分もある。
また経済学史的な視角以外に経済思想史的視角を入れると、日本の経済思想史研究も日本資本主義をどう考えるのかという点で欠かせないように思う。たとえば、石田梅岩、三浦梅園、山片蟠桃などなどの研究成果はスミスやリスト、マルクスばかりではない日本の経済学史研究の奥行きを浮かび上がらせるのではないだろうか。ないものねだり的な感想になって恐縮だが、その分野のパイオニア的な存在であった杉原四郎先生くらいは入れても良かったのではなかろうか。