イギリス発祥のファンタジーの一つに「永遠の戦士」と呼ばれるシリーズがあります。
「永遠の戦士」の名を冠するものは多数いますが、その一方で、多にして一なる存在であるともされています。
「地球」を舞台にした別次元での物語、時に同時に存在し、時に時代も次元をも超えての転生体としてつながり、
その万華鏡の
...続きを読むような有り様と「多元宇宙」と表現される世界で、それぞれを主人公とした物語は紡がれていきます。
自分が初めて手に取ったのは中学生の頃でしたからもう20年近く前になります、そう考えると息が長いですね。
本国イギリスでは幾度となく新版が重ねられていますが、最新版では体系化され全14冊にまとめられたそうです。
その、全集とも言うべきシリーズの先陣を飾ったのが、こちら。
舞台となるのは1600年代のヨーロッパ、30年戦争の真っ只中のドイツ。
主人公は「軍犬」の二つ名でも呼ばれる、歩兵団長ウルリッヒ・フォン・ベック伯爵。
キリスト教世界に生まれながらもその「宗教」の在り方に懐疑的で、
それが故にか、一人の堕ちた天使の要請に応えることになります、「聖杯」探索という。
そして現実世界と忘却界(リンボ)がない交ぜになった探索行を経て、一つの「約束の地」に導かれていきます。
その旅の過程で一つの「真実」を無意識に見出しながら、自身の変化にも気づかずに。
- わたくしたちは助けを借りずに生きるのですね
終盤に登場するこの台詞は、恐らくはムアコックの原点でもあり、この後に続いているであろう他のシリーズの中でも、
これに相反する「絶対者からの束縛」との観念は、宿命的な頸木となって主人公達を悩ませ続けます、その終わりまで。
そういった意味でも、この14冊の冒頭に本書を持ってきたのは、上手い配置だなぁ、と感じました。
ちなみにこのシリーズは、イギリス・ゴランツ社から「永遠の戦士叢書」として出されているシリーズとのことです。
知識とは何か、自由とは責任とは何か、そして「人」で在るとは、、なんて考えてしまう、そんな一冊。