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「藤澤仁」の「夏の呼吸」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「藤澤仁」の「夏の呼吸」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
効能:疲れた大人への栄養補給または等身大を生きる人への応援歌
瑞々しい少年の生命感が、疲れに作用し、心の冷え性に効果を発揮します。
合わせて「雨傘」を読むことで、宿題を抱えたままの大人の皆さんの明日を晴らすことでしょう。
SNSでは文字数制限もあって薬の説明ぽくしてましたが。
感じたことはここにぎゅっと詰めています。
「夏の呼吸」。毎年当たり前のようにあった夏休みが少しずつ終わり、永遠だと思ってた生活が変わり、眼の前に落としてた視線が少し遠くを見渡すようになってくる年齢のころ。
楽しい、悲しい、不安、希望といった感情を抱えて必死に前へ進む少年の姿が、読んでるだけで体温があがってくる夏の描写の中で鮮やかに描かれていて、これは少年と同じ年頃の人たちにも読んでほしいと思いました。
何十年前の中学生だって、悩んでいたよ、と。
「雨傘」。主人公が中学生だった表題作から、こちらは社会人として働く別の主人公へ。
思うのは、年齢があがっても、いや年齢があがって行儀よく飲み込むすべを知っている年齢だからこそ、
大人の悩みは面倒くさいな、と。
最後にとてつもない余韻を残しつつ、こちらも主人公なりに自分と対話し進もうとしています。
仕事パートと家族パートがパッ、パッと切り替わっても混乱しないすばらしい構成でした。
少し、女性側の話をもっと聞きたかった。二人は似ていると感じました。
Posted by ブクログ
表題作含む家族の物語の短編二作品を収録した短編集です。
表題作は思春期の中学生の少年の一夏の成長物語。袖ヶ浦から熱海まで、一人でマウンテンバイクで走り抜けるという冒険をしながら、彼は自らの過去と亡くした弟への感情に向き合っていく。
もう一作品、雨傘は幼い頃に母に捨てられ、しばらくして父にも捨てられるという過去を持つ男性の物語。幼い彼と妹を面倒見てくれたのは父方の祖母で、彼女が亡くなってからは妹と二人暮らし。その妹も結婚して家を出ていくという。結婚式に両親に来て欲しいと望む妹のために、いなくなった父と母を探す手配をする彼だったが、その心中は複雑で。
表題作は、もどかしい思春期の男の子の心情がよく表れていたように感じました。自分だけが、イメージの中で話すことができる死んでしまった弟。置いていかないでと泣く幼い彼を、けれど成長していく自分は置いていってしまう。葛藤と、焦燥と、上手く表現できない苛立ちと、冒険の先に開かれた瞳。どこかノスタルジックで、読後は爽やかな一作でした。
雨傘は複雑な事象が絡み合った、少し重たい家族の話でした。主人公はコンピューターウィルスの駆除、ワクチン開発などを行うITセキュリティの会社を友人と立ち上げた若き社長の青年。複雑な家庭環境と、妹の結婚、妹が探したいと言った自分と妹を捨てていった父と母、そして多忙を極める仕事に没頭する日々。最終盤で彼の取った行動は、少しわかる気がします。他人であればよかった。けれど、それが自分の『母親』だと認識してしまえば、どうでもいい他人と同じようには考えられない。まして、自分が求めて求めて、どうしても会いたいと思っていた時期には自分たちのことなど欠片も顧みることなく己のことだけ考えていたような相手なのだと、理解してしまったなら。そして、最後の社長としての行動もまた、わかる気がしてしまいます。コンピュータウィルスというのは、人間の悪意によって生まれたものであるだけに、やはり性格が悪いものですね。
テイストは違っても、どちらも家族や仲間を思った作品だったように感じます。
作者の方はゲームディレクターなのだそうで。この方が描くゲームストーリーはどのような物語をみせてくれるのか、少し気になる気がしました。