【感想】
現役の弁護士8名、裁判官2名、検察官3名に、現在どのような仕事をしているか、どうしてこの仕事を選んだのかを綴ってもらった本。各人各様の物語があれど、幼い頃から漠然とではあれ「将来はなにか人の役に立つ仕事がしたい」と考えていた方や、「みずからの良心と法のみに従って、他者から独立して仕事できること」に価値を感じて今の仕事を選んだ方が多く、法曹の適性がよく表れている。
たまたま出会った「大事な問題」に取り組み、のめり込んでいくうちにいつしか専門と呼ばれるようになった、という話はどの職業にも通ずる真理にちがいない。
【目次】
はじめに
■ 弁護士
いのちの尊厳を守りたい 寺町東子
「子どものための弁護士」を目指した私の今 山下敏雅
すべての働く人のために 嶋﨑量
法をツールに女性たちの生き難さを解消し社会も変えたい 打越さく良
〔コラム〕法律家になるには
■ 裁判官
裁判と私 森脇江津子
裁判官として誇りをもって ― 普通の女の子が裁判官となるまで 鹿田あゆみ
〔コラム〕女性法律家ってどれくらいいるの?
■ 検察官
検察官として大切にしていること 野村茂
最高に楽しい! 「検事」という仕事 鈴木朋子
ウィーン行きの飛行機の中で 浦岡修子
■ 弁護士
刑事弁護の仕事 和田恵
外国人事件に取り組む ― 声を届けにくい人たちの力に 鈴木雅子
夢と誇り、自由を持てる仕事 鍛治美奈登
町弁(マチベン)として、人々の人生に寄り添いたい 佐藤倫子
おわりに
【備忘】
- 検事は法律家のなかで唯一「捜査」ができる、「捜査のプロ」。捜査の目的は「真相の解明」
- 検察庁は、言いたいことをズバズバ言ってもそれを受け入れてくれる度量のある組織。じっさい、検事や検察事務官は、「いいことはいい。悪いことは悪い」と言える、竹を割ったような性格の人が多い
- 弁護士は、日本中どこにいても、人の人生がよりよい方向に向くお手伝いができる、本当に素敵な職業
【引用】
「子どものための弁護士」を目指した私の今 山下敏雅
しかし私は、将来の目標を早く持ってそれを実現させること自体が重要だとは、思っていません。子どもたちから「将来の夢が持てない」「どんな道に進んだらいいか分からない」という相談を受けることも、多くあります。その時に、私はいつも、次の話をしています。
私は、大学で社会問題を学ぶゼミに入りました。そのゼミでは、人権問題の第一線で活躍している弁護士の方々から話を聞く機会がたくさんありました。私は必ずその弁護士たちに、「なぜその問題にかかわるようになったのですか」と質問するようにしていました。
多くの弁護士は、「その問題に取り組むようになったきっかけは偶然だった。大学生の時に、生涯、その道で活動しようなんて夢にも考えていなかった」と答えました。「たまたまひどい事実を目の当たりにして、それが大変な問題だと取り組み、のめり込んでいくうちに、いつの間にか専門と呼ばれるようになっていた。重要なのは、最初から自分のレールを敷いて突っ走ることではなく、まずは無心に自分をさまざまな場所に放り込み、そして、「これは大事な問題だ」というものに出会った時に、のめり込める感受性と行動力とを磨くことだ」と。
「子どものための弁護士になりたい」と思い続けて大学に入った自分にとっては、とてもはっとさせられる言葉でした。それが今も私の人生の指針になっています。(23-24頁)