酒匂真理子の作品一覧
「酒匂真理子」の「鳥の歌いまは絶え」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
「酒匂真理子」の「鳥の歌いまは絶え」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
面白すぎる。素晴らしかったです。
そしてタイトル邦訳があまりにも美しい。
三代にわたるSF年代記。
核によって生殖能力を失い滅びゆく人類のうち、サムナー一族だけがクローン技術という慧眼によって生き延びます。
しかし、クローンたちは旧人類にはない共感能力を有しており、やがて旧人類を排除するようになりました。
クローンの中でも孤独を経験することで「私」を獲得した女性による第二部、谷で唯一クローンの兄弟を持たない少年による第三部。
共感能力に優れたクローンたちが、やがて創造性を失っていく展開に圧倒されました。
芸術とは、表現とは、共感によってのみ評価されるのでも理解されるのでもないんだと思います。
Posted by ブクログ
環境破壊により不妊が蔓延した人類は滅亡の危機に瀕していた。クローン技術に活路を見出すも、異変が起こり……。
都市は滅び、動物たちが姿を消し、氷河期が迫るという世界観。人類の存続のために生み出されたクローンの人間たちは強い共感力を持つが、同時に個として生きる力を失っていく。徐々にディストピア化していく世界の変遷が切ない。三部構成のそれぞれが異なる趣を持ち、味わい深いものがある。科学と文明がもたらすもの、人間と自然の調和というようなテーマ性。ラブストーリーを基調に三代に渡って展開する壮大な物語。手塚治虫を彷彿とさせると誰かが言っていたが、確かに。タイトルの名訳から受ける印象通りの傑作だった。
Posted by ブクログ
地球上のあらゆる生物が生殖機能を喪失しつつあることを知ったデイヴィッドは、クローン技術をつかい種の保存を画策する。仲間とともにシェナンドアの谷に研究所を創設し、研究に明け暮れる彼は、ついにクローン人間を誕生させる。クローン人間はオリジナルと寸分違わない容姿と申し分ない才能を発揮。研究所を発展させ、人類存続の要となるはずだった。だが、クローン人間はオリジナルとは相容れない存在であることを悟ったデイヴィッドは…
人類がクローンを生み出す一部、クローンだけの谷で異端児が生まれる二部、逼迫するクローンの谷とその行く末を描く三部構成で描かれる本書は、ヒューゴー、ローカス、ジュピター三賞を受賞したケイト・ウィルヘルムの代表長篇です。
地球上の生物が生殖機能を失う理由を本書では核兵器はじめとする放射能汚染と説明付けています。核兵器の脅威と対面する当時の時代背景を感じられますが、本書の主題はそこにはありません。
ではクローンが主題かと問われると果たしてそうなのかなぁと首を傾げてしまいます。もちろん、本書の主役はクローンです。本書で描かれるクローンには幾つかの特徴があり、例えば共感性がとても強く、仲間のクローンと離れることを極端に嫌います。クローンも世代を経るにつれ、その特色が強まり、やがては個人(=個性)という概念がなくなります。個性を失くしたクローンは創造性を失い、突発的なトラブルに対処できなくなります。そういった状況にある谷で生まれた異端児、マークはクローン社会の限界を感じ、ついに行動を起こします。これが本書のラスト。こう振り返ると、クローンはあくまで外側であって、大事なのはその中身ではないかと思うのです。多様性というと強引なまとめ方かもしれませんが、生物がその種を連綿と受け継ぐことのできただろうその特性にシンプルに目を向けた物語かなと。ちなみに、そんな物語なのに、デイヴィッドやクローンどもが近親相姦を求める姿には、何か皮肉めいたものを感じざるを得ませんでした。
いまでこそ多様性というと、ダイバーシティと横文字になり、オーソドックスなテーマなのかもしれません。にも関わらず、本書に魅力を感じたのは、情景豊かな描写により醸し出される荒廃した世界観と、メインとなる登場人物(デイヴィッドやモリーなど)の末路があまりにもマッチしていたからかと。特に二部が印象に残ります。モリーが個性(というか自我?)を獲得する姿は感動的で、まるで人類が火を獲得したかのよう。そんなモリーの結末には、「えぇ、まじか」と思わず声が出てしまうばかり。喪失感を味わうのだけど、それが一番しっくりくる終わらし方。この辺りのうまさにこころを揺さぶられました。最後は(たぶん)希望の持てる幕引きでもあったしね。いい作品でした。