作品一覧

  • そこから青い闇がささやき ──ベオグラード、戦争と言葉
    4.5
    1巻825円 (税込)
    「最初は、死者が名前で知らされる。それから数になる。最後には数もわからなくなる……」。旧ユーゴスラビア、ベオグラード。戦争がはじまり、家、街、友人、仕事…人々はあらゆるものを失っていく。そして、不条理な制裁と、NATOによる空爆がはじまった。日本への帰国を拒み空爆下の街に留まった詩人が、戦火のなかの暮らし、文学、希望を描くエッセイ集。
  • 死者の百科事典
    4.0
    1巻1,119円 (税込)
    旅先で訪れた図書館で、世界中の無名の死者の生涯だけを記録した書物に出会い、父親の項を読みふけるという表題作をはじめ、音楽的手法、絵画的手法、映画的手法と、自在に変化するスタイルで描かれた死と愛をテーマとする、幻想的で美しい、しかも皮肉な味わいをもそなえた九つの物語。アンドリッチ賞受賞作。【収録作】「魔術師シモン」/「死後の栄誉」/「死者の百科事典」/「眠れる者たちの伝説」/「未知を映す鏡」/「師匠と弟子の話」/「祖国のために死ぬことは名誉」/「王と愚者の書」/「赤いレーニン切手」/「ポスト・スクリプトゥム」/訳者あとがき=山崎佳代子/解説=松山巖
  • そこから青い闇がささやき ──ベオグラード、戦争と言葉

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    『何のために、私たちは異国の言葉を勉強しているのだろうか。』

    セルビア在住の詩人で翻訳家の山崎佳代子さんが、1990年代のユーゴスラビア内戦と、NATOによる空爆について、ご自身の体験を書いた本である。

    山崎佳代子さんはその著書の中で、「言葉が戦争を作り、人を殺す」ということを訴え続けているが、これはユーゴスラビア内戦の民族間の対立を、西側メディアがセルビアだけを悪者にして報じ、経済制裁と空爆で国家を追い込んだことを指している。

    冒頭の言葉は本書からの引用であるが、セルビアという国に惹かれ、留学・移住し、日本語・セルビア語両方で詩作を重ねてこられた上でのその言葉はとても重い。
    言葉を知る

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    2023年12月18日
  • そこから青い闇がささやき ──ベオグラード、戦争と言葉

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    最初に載っている詩「階段、ふたりの天使」でいっきに引きこまれる。戦争の悲しさをこんなふうに表現するのは、すぐれた詩人にしかできないのだろうと思う。

    国と国の戦争といっても、そこに暮らす大多数の人は戦争を望んでいない。具体的な誰かをこらしめたくて攻撃しても、実際に傷ついているのは名もない知らない誰か。

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    2023年04月24日
  • 死者の百科事典

    Posted by ブクログ

    ユーゴスラビアの作家、ダニロ・キシュの短編集。
    『庭、灰』『若き日の哀しみ』に続いて3冊目を読んだ。

    既読の2冊がぽつりぽつりと語られるような自伝的小説であるのに対し、この9編は凝った技法の詰まった文章で、まるで全く異なった作者のようだ。
    三島由紀夫的な耽美も感じるが、キシュの場合は美のための美しさにとどまらない。
    どこかおどけたような冷めた書き方が、逆に哀しみを強調してくる。

    タイトルとなっている「死者の百科事典」は、日本語にするとまるでホラー小説だが、そうではない。
    主人公が父親の死後、その人生を尊び、百科事典を開くかのように一つ一つ詳しく振り返る、という内容だ。
    ここで「死者」は、恐

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    2023年04月05日
  • そこから青い闇がささやき ──ベオグラード、戦争と言葉

    Posted by ブクログ

    ユーゴスラヴィアが解体し悲惨な内戦に突入する時代に、ベオグラードで生きた日本人の詩人の綴った言葉。世界から悪者にされたセルビアの中でどういった人たちが生きていたのか、制裁が、空爆が何をもたらしていたのかが描かれる。それとともに、そのような極限の状況の中で、言葉が何をつたえられるのか、ということにも著者は意識的にならざるを得なかったのだと思う。「言葉」の力を信じる信念にあふれていると思った。

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    2024年06月06日
  • そこから青い闇がささやき ──ベオグラード、戦争と言葉

    Posted by ブクログ

     1990年代、ユーゴスラビア内戦、それがあったことはニュース等で知っていた。民族間の対立により血が流され多くの人の命が失われたことや、その結果として構成国が次々に独立し旧ユーゴ連邦が解体してしまったことなど。

     一人ひとりのかけがえのない命が失われること、それまで隣人として共存していたのが突然◯◯人として敵扱いされ、家も仕事も失い“難民“となることの悲惨。そうした戦争によって人の人生がいかに変わってしまうのか、そしてそんな中、人はどうやって生きていけば良いのか、などについて、本書は実に沢山のことを教えてくれる。決して声高にではなく、人と人とを繋ぐ言葉を丁寧に紡ぐことによって。

     著者は大

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    2023年03月06日

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