「伊藤の公式」で知られる確率論の大家、伊藤清の著作、講演集。数学の知識が無ければ読み解けない部分もあるにはありますが、そこを飛ばして読んだとしても面白いと思います。
科学では、基礎と応用という対比がよくなされます。数学で言うと、基礎=純粋数学、応用=工業、経済の数学といったイメージが一般的でしょう
...続きを読む。しかし、若き日の伊藤少年の見る目は「宇宙の原理、原則を研究するのが哲学」であり、数学はその哲学の1手段なのだ、という考えでした。したがって、哲学的な数学とは、数学の構造を調べる抽象数学ではなく、物理現象を読み解くツールとしての数学であってそれが確率論における大きな成果を導いた、と読み解けます。いま、確率・統計が世界を読み解く重要なテーマとなっていると感じていますが、違った視点で見ることができました。