本書は、あくまでも「世界史」の本であって、「戦略」の本ではない。
第1章、第2章でチンパンジーの闘争から始まり、聖書のアダムとイブの楽園追放、古代ギリシャにおける戦争、ナポレオン戦争、第一次、第二次世界大戦、核戦争、ベトナム戦争を代表とする非正規戦争、アルカイダとの対テロ戦争までと戦争についての総
...続きを読む論を孫子、クラウゼヴィッツを初めとする戦略家の理論を絡ませて、古代から現代までの戦争について戦略が述べられる。
第3章からは民衆の戦略論となり、国家の戦略ではなく民衆からの視点で戦略論が述べられる。最初は、マルクス、レーニンを初めとする共産主義の台頭について語られ、下巻ではビジネスにおける戦略論が語られてく。
本書とよく比べられる同時期に出版されたジョン・ルイス・ギャディス『大戦略論』が全体として歴史上の指導者の決断についての考察に焦点を絞っているのに対し、本書は戦争についての総論(第1章、第2章)・民衆の戦略(第3章)という感じで分かれており、特に第1章、第2章では世界の戦争における戦略を時系列的に読んでいくことができるので読みやすい(そのかわり上巻だけでも470ページ以上と膨大ではあるが・・・)。
この本の上巻を読み終わって、重要な歴史上の場面や戦略家についてさらに深く学びたいという好奇心が出てきたのは確か。さらに下巻も気合いを入れて読もう。