奈良県立医療大学の名誉教授、大崎重芳氏の著書。大学の名前からもわかるように、大崎氏の専門は皮膚移植などの医療で、決して昆虫博士ではない。
作品のタイトルからして少しキワモノ的、というかゲテモノ的な内容かと思っていたが、意外にもクモの糸で作ったバイオリンの絃は音色が素晴らしく、本作では科学的にその事
...続きを読むを証明している。クモの糸には繊維の隙間を埋める特殊な性質があるらしく、そのことが音色に良い影響を与えているようだ。
大崎氏が解析したところ、良い音の評価基準とされる「倍音」の数値が、現在バイオリン弦の主流である金属製やナイロン製より優れているのだ。音大の教授からもその音色の良さを認めてられおり、実際に海外のバイオリニストから、弦を使わせてほしいと熱烈なオファーがあったそうだ。ただ残念ながら原料調達がクモのご機嫌次第なので量産は難しいらしい。
弦の作製にあたり近所のバイオリン教室に通ったり、自宅の庭にオオジョロウグモを放し飼いするなど、大崎氏の行動力というか執念には、すっかり感服させられてしまった。ノーベル賞は無理でも、せめてイグノーベル賞を差し上げたい。