第1試合から第9試合、どれも魂のぶつかり合いが美しく、感動不可避ですが、やはり、私としては、ベストバウトに、第10試合、沖田総司vs素戔嗚命の剣士勝負は、お互いが剣に懸けてきた人(神)生の全てだけじゃなく、限界のその先まで出し尽くしてぶつかり、沖田総司の勝利で決着した、これを推したくなります。
当然、そんな私の中では、ハードルが高くなっており、第11試合を観る目も厳しくなっていました・・・まぁ、もっとも、この『終末のワルキューレ』は、そのハードルを軽々と跳び越え、良い勝負じゃん、と心を震わせてくれるんですがね。
両陣営ともに、リーチがかかる第11試合の組み合わせは、人類史最高の狙撃手たる「白い死神」ことシモ・ヘイヘvs北欧神話に限らず、世界でも屈指の狡知を揮う、トリックスターたるロキ。
ぶっちゃけ、他の人類側闘士が高名なので、「シモ・ヘイヘって誰?」と首を傾げた人も多いかも知れませんね。ただ、詳しい人からすれば、実在の人間で、最高の狙撃手と言ったら、シモ・ヘイヘになるのは確かです。それこそ、ゴルゴ13の狙撃能力に匹敵している、と言ったって、何ら大袈裟じゃないです。
相手から見えない距離に位置して一方的に命を奪うやり方は、卑怯者のそれだ、と罵る方もいるだろうが、例え、それが事実であったとしても、戦争時は味方から英雄として讃えられ、敵方からは恐怖の対象になるものです。
しかし、遠くから銃で敵の命を奪うしかないからこそ、狙撃手の心に圧し掛かる負担は大きくなりがちです。拳や剣で相手を殺せば、罪悪感が軽くなる訳ではないにしろ、心優しいシモ・ヘイヘにとっては、相手の命を一方的に奪うのは、相当にキツかったのでしょうが、それでも、戦い続けたのは、仲間と祖国を何が何でも守りたかったから・・・
そんな痛々しいほどの優しさで自分を追い込んでいたシモ・ヘイヘが、奸計に長けたロキを討つべく使う手段が、これまた、頭のネジがぶっ飛んでいましたね・・・自己犠牲の精神が間違っているとは言いませんけど、そこまでやるかよ、ってのは本音ですね。
今更ですけど、ほんと、この作品は、知っているキャラの意外な一面を見せてくれるから、大好きです。
もちろん、意外な一面を剥き出しにしたのは、シモ・ヘイヘだけじゃありません。ハッキリ言うと、ロキは好きになれない奴ですが、今回、ロキの本音を見て、若干、印象は変わりました・・・私だけかも知れませんけど、このロキって神は、『からくりサーカス』の白金と同じ匂いがする男ですね。
これらの台詞を引用に選んだのは、上記しましたが、私の中で、ロキに対する印象を変えたモノだからです。
どれほど強くとも、どれほど頭が良かろうとも、どれほど美形であろうとも、心から望んだ一つが手に入らない辛さは、人も神も同じか・・・
ただ、ロキの心痛は解かるが、やはり、手段を間違えているんだよな。
多分、ロキ自身も、こんなやり方じゃダメだ、と自覚しているんだろうが、もう、それ以外が選べないトコまで、自分を追い込んじまったのかね。
(ああ・・・これだ・・・この笑顔だ・・・このヒルデの笑顔を――――――・・・ずっと見ていたい・・・)
(なんで・・・そんな・・・そんな顔をするの・・・?ボクは・・・ただ・・・きみの・・・きみの笑顔が欲しかっただけなのに)
(ちがう・・・ちがう。ちがう、ちがう、ちがう!哀しいのは、ヒルデが笑顔を失ったこと。哀しいのは、あの笑顔が戻らないこと。世界で、ヒルデのことを一番、好きなのは・・・ボクなのに・・・ボクなのに・・・もう、どうでもいい・・・殺す。殺す殺す殺す殺す、全員――――――・・・殺す)「・・・殺す」(byロキ)