作品一覧

  • 失われてゆく、我々の内なる細菌
    4.4
    1巻3,520円 (税込)
    19世紀に始まる細菌学によって、人類は微生物が病原になりうることを知った。そしてカビに殺菌力が見出される。抗生物質の発見である。以来この薬は無数の命を救う一方、「念のため」「一応」と過剰使用されてきた。これは、抗生物質は仮に治療に役立たなくても「害」は及ぼさない、という前提に基づいている。しかし、それが間違いだとしたらどうなのか――。人体にはヒト細胞の3倍以上に相当する100兆個もの細菌が常在している。つまり我々を構成する細胞の70-90%がヒトに由来しない。こうした細菌は地球上の微生物の無作為集合体ではなく、ヒトと共進化してきた独自の群れであり、我々の生存に不可欠だ。構成は3歳くらいまでにほぼ決まり、指紋のように個々人で異なる。その最も重要な役割は先天性、後天性に次ぐ第三の免疫である。しかしこの〈我々の内なる細菌〉は抗生剤の導入以来、攪乱され続けてきた。帝王切開も、母親から細菌を受け継ぐ機会を奪う。その結果生じる健康問題や、薬剤耐性がもたらす「害」の深刻さに、我々は今ようやく気づきつつある。マイクロバイオーム研究の第一人者である著者は、この問題に対して実証的に警鐘を鳴らすとともに、興奮に満ちた実験生活、忘れがたい症例や自身の腸チフス感染などを通じて、興味深いが複雑なマイクロバイオームへの理解を一気に深めてくれる。その案内人とも言えるのがピロリ菌だ。19世紀にはほぼ全ての人の胃にありながら、21世紀の今は消えつつある。そのピロリ菌の本態に迫ることは、マイクロバイオーム全貌解明への指標となりうるかもしれない。

ユーザーレビュー

  • 失われてゆく、我々の内なる細菌

    Posted by ブクログ

    自分のカラダの無意識的な部分について知る
    というのはここ数年の読書のテーマである。
    体内細菌が思った以上に私達の健康に影響している
    とあれば興味を持たずにいられない話だ。
    実際、本書を読めば分かるが影響を与えている
    といったような易しい表現に留まらず、
    その関係たるや「共生」と言っても過言ではない。
    長い年月を経た生物系の合理的な進化にただただ感服する。単純に新しい知見として面白い本でもあるが、抗生物質の冬、現代の疫病など未来を考える上でも多くの人に呼んでもらいたい本。

    0
    2017年06月18日
  • 失われてゆく、我々の内なる細菌

    Posted by ブクログ

    人間の体、自分の体についての認識がひっくり返る。
    人間の体を構成する細胞のうちヒト由来のものはわずかで、7割?9割が細菌由来のものであるらしい。
    身体内部の細菌を正常なバランスに保つことが健康につながるということ。
    体質の違いというのは要するに腸内細菌叢の違いなのではないか。

    抗生物質の過剰投与はこのバランスを崩すことにつながる。
    帝王切開も母体からの細菌移譲を遮断するという意味で、バランスの崩壊に貢献する。
    その結果として、近頃よく見られる喘息、アレルギーなどの増加につながっているのではないかと筆者は考えている。

    胃がんを引き起こす悪玉として名高いピロリ菌も、胃中の常在細菌として、食道炎

    0
    2018年10月30日
  • 失われてゆく、我々の内なる細菌

    Posted by ブクログ

    健康の維持に役立つ腸内フローラは、現代人では抗生剤の使用によって種類が激減しており、そのことがアレルギー疾患だけでなく、炎症性腸疾患や自閉症などの発症にも関連しているという。抗生剤を飲むのが躊躇われる内容であるが、現代人が抗生剤を全く使わないというのは現実的ではない。現在腸内フローラの解明が急激に進んでいるようなので、今後抗生剤投与の基準が変わっていくのではないかと期待される。

    0
    2016年05月04日
  • 失われてゆく、我々の内なる細菌

    Posted by ブクログ

    「薬や」さんの商品の棚を
    見渡してみると
    まぁ 抗菌と銘打たれたものたちの
    多いこと
    いつから
    私たち日本人は
    「菌」をこんなにまで
    徹底して排除するようになってしまったのだろう

    「汚い」を排除することにより
    わたしたちは
    「生命の力」まで排除することに
    なってしまった

    科学的、医学的な
    裏付けがきちんとされている分
    耳をかたむけなければならないことが
    ここにある

    わたしたちが
    これから できること
    いや これから やらなければ
    ならないこと
    そのヒントがここにある

    0
    2016年02月25日
  • 失われてゆく、我々の内なる細菌

    Posted by ブクログ

    ペニシリンによって多くの人が助かり、以後多くの抗生物質が生まれているが、その過剰摂取によって私たちと共生してきた細菌の数は減少を続けている。さらに抗生物質に耐性を持つ菌も生まれている。 この本は抗生物質の持つプラスの面を評価しつつ、不要な抗生物質の投与によって新たな問題が起こっていることを明らかにし、警鐘を鳴らしている。多くの人に読まれるべき本。おススメです。

    0
    2016年01月09日

新規会員限定 70%OFFクーポンプレゼント!