【感想・ネタバレ】失われてゆく、我々の内なる細菌のレビュー

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Posted by ブクログ 2017年06月18日

自分のカラダの無意識的な部分について知る
というのはここ数年の読書のテーマである。
体内細菌が思った以上に私達の健康に影響している
とあれば興味を持たずにいられない話だ。
実際、本書を読めば分かるが影響を与えている
といったような易しい表現に留まらず、
その関係たるや「共生」と言っても過言ではない。...続きを読む
長い年月を経た生物系の合理的な進化にただただ感服する。単純に新しい知見として面白い本でもあるが、抗生物質の冬、現代の疫病など未来を考える上でも多くの人に呼んでもらいたい本。

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Posted by ブクログ 2018年10月30日

人間の体、自分の体についての認識がひっくり返る。
人間の体を構成する細胞のうちヒト由来のものはわずかで、7割?9割が細菌由来のものであるらしい。
身体内部の細菌を正常なバランスに保つことが健康につながるということ。
体質の違いというのは要するに腸内細菌叢の違いなのではないか。

抗生物質の過剰投与は...続きを読むこのバランスを崩すことにつながる。
帝王切開も母体からの細菌移譲を遮断するという意味で、バランスの崩壊に貢献する。
その結果として、近頃よく見られる喘息、アレルギーなどの増加につながっているのではないかと筆者は考えている。

胃がんを引き起こす悪玉として名高いピロリ菌も、胃中の常在細菌として、食道炎などの抑制に貢献していた。

体内細菌の急激な変化が引き起こす未来は恐ろしいが、今から抗生物質の使用を控えることによって改善できるかもしれない。

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Posted by ブクログ 2016年05月04日

健康の維持に役立つ腸内フローラは、現代人では抗生剤の使用によって種類が激減しており、そのことがアレルギー疾患だけでなく、炎症性腸疾患や自閉症などの発症にも関連しているという。抗生剤を飲むのが躊躇われる内容であるが、現代人が抗生剤を全く使わないというのは現実的ではない。現在腸内フローラの解明が急激に進...続きを読むんでいるようなので、今後抗生剤投与の基準が変わっていくのではないかと期待される。

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Posted by ブクログ 2016年02月25日

「薬や」さんの商品の棚を
見渡してみると
まぁ 抗菌と銘打たれたものたちの
多いこと
いつから
私たち日本人は
「菌」をこんなにまで
徹底して排除するようになってしまったのだろう

「汚い」を排除することにより
わたしたちは
「生命の力」まで排除することに
なってしまった

科学的、医学的な
裏付け...続きを読むがきちんとされている分
耳をかたむけなければならないことが
ここにある

わたしたちが
これから できること
いや これから やらなければ
ならないこと
そのヒントがここにある

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Posted by ブクログ 2016年01月09日

ペニシリンによって多くの人が助かり、以後多くの抗生物質が生まれているが、その過剰摂取によって私たちと共生してきた細菌の数は減少を続けている。さらに抗生物質に耐性を持つ菌も生まれている。 この本は抗生物質の持つプラスの面を評価しつつ、不要な抗生物質の投与によって新たな問題が起こっていることを明らかにし...続きを読む、警鐘を鳴らしている。多くの人に読まれるべき本。おススメです。

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Posted by ブクログ 2015年11月24日

まず。みすず書房の装丁は素晴らしい、その他の本も買ってみたくなった。
この本は主に内科の医師であれば必読の書だと思った。
過剰な抗菌薬処方の問題としては耐性菌の出現と新規薬剤の開発が間に合わないということ程度しか認識していなかったが、人類と細菌の共生の歴史はそんなに浅いものではなかった。マイクロバイ...続きを読むオームという切り口でこれからどんどん明らかになり主流になっていくであろう考え方の始まりが書かれている。世界の見え方が変わる素晴らしい本であった。

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Posted by ブクログ 2015年11月09日

細菌学の大家が、抗生物質の乱用などに伴う人間の細菌バランスの崩壊の危険性を説く。
腸チフスやHピロリ菌のような人間に病気をもたらす細菌があるが、そもそも生物は細菌と何万年もの間共進化しており、人間に宿る細菌の重量は数キロありどの臓器よりも重い。消化や免疫などで大きな役割を果たしているらしいということ...続きを読むがわかりつつある。抗生物質の幼少時からの度重なる使用により、体内の細菌バランスが乱されることが、慢性疾患やアレルギーなどの近年の増加につながっているかもしれないとしている。
Hピロリ菌では、胃がんの原因とされ駆除されてきたが、実は適切な免疫反応を促すものであるかもしれず、喘息やアレルギー逆流性食道炎などの増加につながっている可能性が指摘できる。またセリアック病や潰瘍性大腸炎では便の移植などによる腸内細菌の補完も行われつつある。抗生物質の問題としては、汎用性の高い薬剤が多くピンポイントの診断及び薬剤がなくコストも高くなってしまう。また畜産動物に乱用されそれを人間が食べたりすることで微量の抗生物質をとってしまう。

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Posted by ブクログ 2015年09月10日

あなたは1人で生きているのではない、といわれたら何を思うだろうか。
人は誰しも支え合って生きている、とか、友達や家族は大切だ、とか、それはそれで言えることだろうが、本書の主題は、もう少し、いやかなり小さい生き物のことだ。小さいけれどもその数は膨大だ。その名は細菌。真菌やウイルスとともに、人の体を住処...続きを読むとする。

我々の体は30兆個の細胞からなる。一方で、人体には、100兆個もの細菌や真菌が住むという。長い進化の過程で、ヒトとの暮らしを確立してきたものだ。皮膚、食道、胃、腸、口腔、膣。多種多様な菌を抱える私たちは、1人でいても「孤独」ではない。さながら大きな森のように、多くの生き物を抱え、彼らに恵みを与え、また彼らから利を得ている。こうした菌たちは「常在菌」と呼ばれる。

本書の著者、マーティン・J・ブレイザーは細菌研究の権威である。
常在菌とヒトの共生や、感染症との闘い、そして感染症に打ち勝つかに見えたヒトが現在、直面している大きな問題について説く。
専門家の落ち着いた筆致であるが、その内容はスリリングで興味深く、驚きに満ちて飽きさせない。時に恐怖を呼びつつ、全体として生命の不思議と希望に溢れた1冊である。

生態系はバランスである。誰か1人だけ、突出した勝者がいるわけではない。時に攻め、時に攻められ、食うもの・食われるものが押しつ押されつ、それぞれの場所を流動的に保つ。
ヒトと細菌もそうして生きてきた。中にはヒトとの暮らしを選び、ヒトに利益を与えるか、少なくとも害を及ぼさないことで、ヒトの常在菌となったものもいる。
歴史の流れの中で、人類は移動し、繁栄にしたがって、数を増やしていった。その途上で、未知の細菌やウイルスとの遭遇が起こり、あるいは過密状態の都市部で、爆発的な感染が起こることもあった。
ヒトと細菌の関係の中で、1つの大きな事件がある。
1940年代のペニシリンの発見である。「奇跡の薬」、抗生物質の最初の使用であった。
抗生物質は、それまで、多くの人の命を奪ってきた感染症に、人類が打ち勝つ大きな武器と思われた。
それはある意味、正しく、ある意味では間違っていた。この効き過ぎる武器には、落とし穴があった。

ピロリ菌という菌をご存じだろうか。胃に住み、潰瘍や癌の原因になると言われるヘリコバクター属の細菌である。長年、胃は酸性が強すぎて、細菌が住むことはできないと言われていた。1980年代、ピロリ菌が胃から単離され、培養法も確立され、潰瘍の原因になっているとされたのは大きな出来事で、関与した研究者はノーベル賞を受賞した。ピロリ菌は後に、胃癌との関係も取りざたされるようになり、大きな驚きを持って迎えられた。
とにもかくにも、ピロリ菌=悪玉と目され、「よいピロリ菌は死んだピロリ菌だけ」とまで言われるようになった。病気の元となったピロリ菌は抗生剤などで叩かれ、保菌者は減っていった。
だが、近年になって、実はピロリ菌保菌者の方が発症しにくい病気があるのではないかと見られるようになってきた。胃酸の過剰な産生による胃酸逆流(胸焼け)などである。
その意味するところは何か。

抗生物質は強力な薬である。まるで火炎放射器のように、作用範囲にある菌を根こそぎやっつける。いわば焼け野原となった患部で、ときどき、この薬が効かずに生き残るやつが幅をきかせる。これが「耐性菌」である。耐性菌に効く抗生剤を探し、さらにその抗生剤にも負けない別の耐性菌が現れ、幾度となくいたちごっこが繰り返されてきた。
これは大きな問題である。しかし、抗生物質の過剰な使用は、別の問題も生んでいるのではないか、というのが本書の著者の主眼である。

焼け野原にいずれ雑草が生え始めるように、やがて患部や体内には菌が戻ってくる。だが、その菌は前と同じか? おそらくまったく同じではないだろう。そしておそらくは前よりも種類が減るだろう。中には、黙って日々我々を守る働きをしていた菌もいるかもしれない。100年に1度の変事に現れて、生存を補助したものもいるかもしれない。誰にもわからない。そして失われてしまった菌はもう絶滅してしまったかもしれない。多様性は永久に失われてしまったのかもしれない。

もう1つ、「善玉」「悪玉」とは何か、という問題もある。生態系は大きなバランスの上に成り立つ。例えば、宿主の免疫系と小競り合いを繰り返していた細菌がいたとする。さほどの害はなさないが、いささか「うるさい」やつである。あるとき、抗生剤が投与され、この菌も死に絶える。それまでこの菌と戦っていた免疫系のメンバーはたたらを踏む。場合によっては、この細菌の面影とちょっと似ているところがある、自分自身の細胞を間違って攻撃してしまうものも出るかもしれない。ひょっとしたらこれが近年増している自己免疫疾患の一因なのかもしれない。

そう、現代増えつつある自己免疫疾患やアレルギー、さらには肥満すら、もしかしたら我々の内なる宇宙に住む細菌生態系が乱されたせいなのかもしれないのだ。
まだ確証と言えるほどのものはない。そしてこれが唯一の原因であるとも考えにくい。
だが、傍証は積み上がりつつある。そして十分に仮説として検証する価値のあるものと思える。
すなわち、私たちが思っていたよりも「常在菌」に影響を受けていたのではないかということを。そして「常在菌」すらすべてなぎ倒してしまうような、極端な抗生物質の使用は控えるべきではないかということを。

私たちは近視眼的な対処を続けることで、急速に均質化し、多様性を失って行っているのかもしれない。
短期間なら影響は見えないかもしれない。しかし、多様性を失った存在は、変事に「脆い」。
微生物を含めた共生系、マイクロバイオームについての研究は端緒に着いたばかりといってもよい。今後、さまざま興味深いことがわかってくるだろうが、その前に、常在菌が大部分失われるようなことは避けるべきだろう。
著者は「抗生剤を一切使うな」とか、また「母から子への常在菌の伝播を遮断する帝王切開をやめろ」とか、極端なことを言っているわけではない。ただ、「過剰な」「行き過ぎた」適用については考え直した方がよいと提唱している。
豊富な事例と多くの参考文献を上げ、読みやすい冷静な文で綴られる本書には、説得力がある。

そう、我々は、1人で生きてきたわけではないのだ。
これからも、1人で生きていくような事態は、起こらないようにした方がよいのだ、おそらく。
自身が「森」であり続けられるように。

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Posted by ブクログ 2015年08月20日

私たちの体内には多くの細菌がいて、共存しながら生きている。どれか失うとバランスを崩し、病気になりやすくなるかもしれない、という話。
とても面白い。
その影響の範囲が、糖尿病、自閉症など多岐に及ぶという点は検証しきれていないが、解明されることを期待する。
便移植というのは強烈だが、効果がはっきりしてい...続きを読むて興味深い。

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Posted by ブクログ 2020年02月10日

会社の健康診断で、オプションでピロリ菌検査がありますと言われた。陽性だと除菌もしてくれるらしい。ただ何となく面倒くさかったのでことわったのだが、「ピロリ菌の除菌って、なにか反対するような説も出ていなかったか」というのはすこし気になっていた。そうしたら、まさか自分の本棚にそのものの本が眠っていたのを見...続きを読むつけた。

著者はアメリカの微生物学者で、おそらく医師であると言ってもよいのだと思う。みすず書房の装丁でいかにも難しい本のように見えるのだが、中身はどうしてこなれた語り口のあまり肩のこらない読み物である。医師というのは臨床でさまざまな患者と接するからか、わかりやすく面白い文章を書く人が多いような気がする。

本書は、まずヒトの体内で共生する微生物たち=マイクロバイオータについて解説し、その多様性が抗生物質などにより危機にさらされているらしいこと、一方で現代のあらたな「疫病」(逆流性食道炎、肥満、1型糖尿病などなど)が増えていく様子も描き、両者のつながりをさぐっていく。

抗生物質が耐性菌を産み出していることはすでに大きな問題として周知のことで本書でも触れられているが、著者は耐性菌にとどまらない抗生物質過剰使用の影響があるのではないかと主張している。ことが多種多様な微生物で構成される人体のマイクロバイオームにかかわることなので、まだ仮説の段階を出ていないのだが、さまざまな疾患の増加を説明しうる魅力的な仮説だ。とは言え、これらの疾患には衛生環境やら栄養状態やらいろいろな原因が絡み合っているはずなので、そう簡単にクリアな結論が出なさそうである点は留意しておきたい。

なお、ピロリ菌に対する著者の考えは、人生の前半は健康に利益をもたらす一方、後半は健康にとって障壁となる、というものである。念のため。



疑問2点

1.抗生物質の過剰使用はヒトのウイルスへの耐性に影響しうるか?(菌相手だと常在菌が弱ると病原菌がはびこる素地になるのだが、ウイルスと菌は生態学的ニッチを奪い合うものなのか?なんとなく違いそうな気がする)

2.抗生物質を処方されると、途中で服薬を中断せずに最後まで飲みきれと言われる。たしか耐性菌の発生を防ぐため?それってどれくらいの根拠があるのだろうか?

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Posted by ブクログ 2018年11月24日

細菌と抗生物質の関係性について示唆に富む内容になっている。
体内にある種の微生物が存在しないことによる負の影響。

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Posted by ブクログ 2018年08月24日

最近読んだマイクロバイオーム関連の本でリファレンスされていたので手に取る。抗生物質の過剰使用が多剤耐性菌を生むという問題はかねてから指摘されている通りだが、本書では抗生物質が持つさらなる悪影響、正常な細菌叢(最近の用語ではマイクロバイオータ)の壊滅的破壊とその影響について最新の研究成果が紹介されてい...続きを読むる。

たとえば、ピロリ菌が胃癌の原因であることからピロリ菌除去医療が普及しているが、一方でピロリ菌の欠如が(近年、増えている)胃食道逆流症の原因であり、また皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状や幼児喘息とも高い相関があるという研究がある。

抗生物質は長い間、無料の(=副作用のない)薬だと信じられてきたが、もちろんそんなものが存在するわけはなく、我々は現代の疫病(肥満、I型糖尿病、喘息、食物アレルギー、炎症性腸疾患、はては自閉症まで)という高い対価を払っている。さらに、体内細菌の多様性喪失がどの程度の生命に影響するのか、我々はまだ何も知らない。

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Posted by ブクログ 2018年01月11日

抗生物質の影響で何万年も人と共存していた最近が人体から失われ、近年増えてきた病気の原因に
なっているのでは、という内容。

病気には抗生物質が必要だけど、そのせいで別な病気になるのは勘弁してほしい。
耐性菌が増えてるということは、いつか致死的な病気が発生するのではと思ってしまう。
無闇に抗生物質を使...続きを読むわず、必要な病原菌に対してそれだけを対象とするような抗生物質を使うようにする必要があるんだろうけど。まだまだ今の医学では無理だろうな。
病院を避けても、食肉となる家畜の餌に使われるものは避けようないから怖い。

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Posted by ブクログ 2017年05月02日

わたしの体を構成する細胞の70〜90%は、細菌でできている!

わたしって、一体、なに?
細菌と一緒に進化してきたコミュニティーなんだね。

細菌がないと食べ物を消化もできない。人間と細菌は、相互依存の関係にある。

抗生物質を過剰摂取することで、私たちの内部の細菌はだんだん多様性を失ってきていて、...続きを読むそれによって新しい病気が増えているとのこと。

というわけで、
・抗生物質の使用は節度をもちましょう
・食肉用の牛などに抗生物質を与えるのはやめましょう
・幅広くきく抗生物質ではなくて、用途を絞った抗生物質を開発しましょう
ということです。

個人的に驚いたのは、胃のなかの細菌のピロリ菌はかならずしも悪者ではなくて、いい働きもしているということ。

えええええ!

何年かまえに、抗生物質飲んでピロリ菌を壊滅させてしまったよ〜〜〜。

これは、個人的には長年の胃炎から解放されて、すごく良かったのだが、これにもダークサイドがあるわけね。。。

う〜む。

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Posted by ブクログ 2016年10月25日

緊急事態以外は安易に薬を服用するのをやめるべきという本。医者も商売。製薬会社やその薬の法案通す政治家などのしがらみがあるからこそこれだけ薬が氾濫する。また食品添加物や畜産業での抗生物質投与も考え直すべきと。これらが、新たな人類の敵となりはじめているだろうと。菌との共存を考えて生きるべきとは昔の職場の...続きを読む先輩から教わった人生訓で、今でも思い出すなぁ。

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Posted by ブクログ 2019年01月03日

細菌学についてなので難しい所も多く苦労したし、日数かかった。でも初めて知ることも多くてなるほどと思いながら読んだ。抗生剤の過剰投与に警告している。
家畜を太らす為にやってたなんて知らんかったなー。ちゃんと知ることは大事。

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Posted by ブクログ 2015年09月27日

衝撃的だけど、考えてみれば当然かも。
人間のすることだから「穴」があって当然。
むしろ、医学を過剰に信仰してしまう我々に問題がある。それにしても・・・「糞便移植」というのは衝撃的。

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