コンバージョンを上げるためにという視点が非常に明確なWebデザインの改善事例解説集。
大きく紙幅が割かれている第一部では実際の企業サイトを紹介しながら改善事例が解説されます。
「何のCVポイントを目指して」
「何が課題で」「どのような仮説を考えて」
「デザインをどのように変えることで」
改善し
...続きを読むたのかがデザイン変更のビフォーアフターとともに掲載されており分かりやすい。
取り上げられている企業もそれなりに多岐にわたり、さまざまな業態、業種のサイト、ページが揃っているので担当しているサイトによらず参考になるのではないかと思う。
何より課題の発見や仮説構築にはまずもって事例をたくさん知っていないと発想の取っ掛かりが見つからないので、この本を読んで一気に引き出しを増やすことは良いことだと思う。この本読んでからであれば、自分で直接ベンチマークサイトを見に行ったときにも気付ける視点が増えるはず。
また、後半に改善プロセスを回していくための改善プロセス自体の解説や、アナリティクスでどの指標をどのように見れば良いのかの簡単な解説もあるのが良い。というかそれが無ければ本書全体の価値が無くなるほどだった。前半の事例読んでるだけでは「これで(おそらく想定読者であろう初心者に)伝わるのだろうか」と感じていたが、後半までちゃんと読めば自力で改善に取り組むとっかかりになると感じますし、むしろアナリティクスの分析視点や注目指標の解説などは下手にアナリティクス自体の解説本読むより視点を絞っている本書の方が実践レベルで役に立つ現場は多いようにも感じます。
ということでWebサイトの改善をしていきたいけど、何をどこからやったら良いか分からないマーケティング担当者の方にはオススメです。SNSや広告やって集客に力を入れることは思いついてもサイト自体をどうすれば良いかはなかなか勉強しないと発想しにくいですからね。まずはこの本を一冊どうぞ。
以下はちょっと不満だった点や今後改善して欲しい点。以下の点を含んでたとしてもオススメできる本であることには変わりないですが。今後の改訂などに期待を込めて。
①企業サイト事例のキャプチャの解像度が低かったりモザイク処理?されてて肝心のデザインが分かりにくい箇所がある
→諸権利など色々事情はあるのだと思いますが、あくまでWebデザインの辞令集なのだからそこら辺クリアしている事例で集めて欲しいですね。特に1本目の事例から解像度低くてテンション下がりました。
②施策難易度の評価基準が不明
→各事例には★から★★★★★までの「施策難易度」が付けられているのですが、この基準がよく分からない。その施策を実行しようとした場合の「制作や導入の技術的側面」なのか「社内調整など制作以外のことも推測して」なのかそれともそもそも「その施策の必要性にたどり着く分析や仮説構築の難しさ」なのか。色々自分なりにどの視点での評価なのかそれこそ仮説を持ちながら読んだけど、全然分かりません。もしかしたら担当している筆者によって曖昧なの、いやまさかそんな適当なことが、、というぐらいには混乱しました。分かりやすさのためだとは思いますがむしろ分かりにくくしてる気がします。
③改善率の数値が分かりにくい
→各事例には例えば「CVポイント:予約」を目標とした改善で「61.7%アップ!」などと書かれています。これも分かりやすさのためだとは思いますし、諸事情から実数自体を掲載することは難しいのだとは思いますが、61.7%アップって何でしょう。CVRなど割合の指標の改善率を表すのに割合使うのは混乱の元ではないでしょうか。例えばCVRが10%から20%に上がったとしてそれを「10%アップ」とは言わない気がします。「10ポイントアップ」などではないでしょうか。それとも割合できちんと表現してあってこの場合であれば「100%アップ」なのか。だとすると事例の中には「2%アップ」とか改善効果が非常に少ないものがけっこうな数にのぼることに。まぁ実際問題のWebテストの事例はそんなものだとは思いますが、そういうシビアなことを伝えるのが本書の目的ではないと思いますし、ちょっと謎。
④失敗事例もいくつか欲しかった
→事例紹介は本書に限らずそうですが基本的に全部成功事例です。でも実際やってみると失敗もします。むしろ失敗の方が多いかもしれない。本当に読者の実践やその後の継続につなげるのなら、「このように考えたけどダメだった」「ダメだったのはこういう要因があったからではないか」「仮説とは違ったがこういうことが分かって次の施策につながった」というような分析思考の過程が2、3の事例でも良いので紹介されていたら本書の評価がもっと高くなっていました。