モー・ヘイダーの作品一覧
「モー・ヘイダー」の「虎狼」「喪失」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「モー・ヘイダー」の「虎狼」「喪失」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
Posted by ブクログ
英国の警察には潜水捜索隊というものがあるのか。エイボン・アンド・サマセット警察の潜水捜索隊長である女性刑事フリー・マーリーは、そのクール・ビューティぶりで、どこかキャロル・オコンネルの印象的なシリーズ・ヒロインであるマロリーを想起させる。そしてその陰の部分の深さでさらに印象を深める。まずこの作品を分厚いものにしているのは、多くの脇役たちのキャラクター造形なのだが、このフリーという女性にはとても惹かれるものがある。ザイルをセットして独りケイビング捜査に果敢に挑戦する捨て身の冒険シーンなどは血湧き肉踊るスリルの基本形みたいで、喝采を送りたくなる。
一方で、動というより静のイメージが強いシリーズ主人公のジャック・キャフェリーだが、この人にも陰影がある。小児性愛者に兄を殺された過去があることで一家は離散し、自分は生き延びたことの現在を背負って生きており、それがゆえに小児性愛者をひどく憎んでいる。
キャフェリーのシリーズは今は絶版となっている第一作『死を啼く鳥』、第二作『悪鬼(トロール)の檻』(ともにハルキ文庫刊)の長編5作目であるそうだ。三作、四作に関しては邦訳されていなく、いきなり五作目となっており、しかも二作目でモー・ヘイダーはシリーズ中断を決意し、三作目でウォーキングマンという放浪者を登場させることによりキャフェリ-の世界をより深くしたいと思い直したらしく、このウォーキングマンは、過去に娘を殺害された未解決事件被害者の遺族であるというのだ。本作中でも、野で焚き火を囲む孤独な放浪者であるウォーキングマンにキャフェリーが相談にゆくシーンがあり、その他のシーンでもこの謎多きホームレスはシリーズの重要なキャラクターであるようだ。
本作以外が未読であるゆえにシリーズ全体を見渡せいない歯がゆさが本書を読むのに一番痛いところである。事実、フリーの犯したある秘密の犯罪については前作を引きずるものなのかどうか、最後まで不明である。シリーズはやはり最初から順を追って読むことで、100%味わいきれるものなので、翻訳出版のこのようなあり方は改善願いたい。
警察組織の中での組織内葛藤は、昨今の警察小説にはつきものだが、ここでは部下の若い刑事プロディとの対立構造が浮き彫りにされ、同時に刑事たちはそれぞれが孤立してゆくような印象がある。秘密を抱えるフリーと、その秘密をなぜか知っているキャフェリーの間の微妙な関係が、本筋である事件の捜査以上に気になりもする。心の内外の葛藤がとても人間関係を複雑にしており、その中で警察に挑戦するがごとき犯人の嘲笑が常に聴こえてくる。
真犯人と真実への隘路を辿る道は暗くとても険しい。読者にもそれはわからない。伏線がたっぷりあり、行方不明の少女たちと、過ぎ行く時間が痛いほどに完成を削り取る。そしてあまりにも意外すぎるクライマックス。嘘で塗り固められた真犯人の顔。同時にクリアされてゆくいくつものサブ・ストーリー。謎だらけで不信まみれで、孤立してゆかざるを得ないキャフェリーが、この暗いトンネルを抜けるのはいつになるのか。
先に言ったように英国冒険小説の流れを汲んでもいるフリーのアクションが、一足早く犯人の巣に辿り着く。不思議な土地であり、不思議な地形である地獄のような暗闇と、その底に潜む敵。本作品は、東野圭吾『容疑者Xの献身』がノミネートされたことで話題となった2012年のMWA賞最優秀作品賞受賞作である。これを機に、過去の邦訳作品の再刊や、未約作品の改めての出版が実現されることを願ってやまない。
Posted by ブクログ
読み応えのあるスリリングなミステリ。
車が強盗され、後ろの席には11歳の少女が乗ったまま。
カージャックが目当てなら、足手まといになる子供はどこかにおいていかれ、まもなく発見されると思われたが‥?
子供は見つからず、緊迫した展開に。
キャフェリー警部シリーズ5作目だそう。
評価が高いので、初めて読んでみました。
この作品からでも読めます。
ブリストルのジャック・キャフェリー警部は、重大犯罪捜査隊の指揮を執っている。
スーパーの駐車場で、車が奪われた現場の緊迫した様子から、一気に引き込まれます。
フリー・マーリー巡査部長が、キャフェリーがロンドンから赴任する前に、似た事件があったことを指摘します。
フリーは小柄な女性(フリーは通称)だが、潜水捜索隊隊長。
冒険家で万能だった父の血をひいている。
じつは前作で、弟の起こした重大な事件の証拠を隠匿していた。
以来、仕事に身が入らず、仲間に心配されている。
キャフェリーとは内心惹かれあった仲だったが、今はキャフェリーの目には苦い失望しかない。
その理由がフリーにはわからなかったが、実はフリーのしたことに気づいたキャフェリーは、フリー自身が罪を犯したと誤解していたのだ‥
キェフェリーは子供だった30年前に、兄が誘拐され、ついに見つからなかったという経験がある。
ウォーキングマンというホームレスの男は、娘を誘拐した男を殺した過去がある。
互いの過去を知る二人は、時折顔を合わせ、ウォーキングマンは謎めいた言葉で啓発し、キャフェリーはそれにすがるような思いを抱くこともあった。
警察官の地道な捜査と、被害者家族らの必死の思いと意外な人間関係、やがて出来上がる力強い連携が、きめ細かく描かれます。
その背景に、警察内部のキャフェリーとフリーが抱えている問題も濃い陰影を落とすのがユニーク。
フリーは土地勘を働かせて、少女のいそうな地点の捜索を主張。
大掛かりで危険な捜索が不発に終わったため、それ以上の主張が通らなくなる。
見落としがある可能性に気づいたフリーは、単独で捜査に。
犯人の魔の手が迫る‥?!
作者は15歳で学校をやめ、バーメイド、英語教師など、さまざまな仕事を経験。
2000年、「死を啼く鳥」で作家デビュー。
1、2作は翻訳されていますが3、4作はまだ。
4作目は相当、暗そう。
その重さを知る読者には、この作品でのスリルと大転換がさぞ読みごたえあったことでしょう。
それもあっての受賞だったかなと思います。
東野圭吾の「容疑者Xの献身」も候補に挙がった2012年度のMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞の最優秀長編賞受賞作です。
Posted by ブクログ
久し振りにドキドキするようなサスペンスフルなミステリーを読んだ。『死を啼く鳥』『悪鬼の檻』に続いて翻訳されたキャフェリー警部シリーズ。前二作よりもはるかに出来が良い。さすがエドガー賞最優秀長篇賞受賞作。しかも、東野圭吾の傑作『容疑者Xの献身』を破っての受賞らしい。
『タルタロスの査問官』『七匹の蛾が鳴く』のフランク・ティリエの作品のような趣きの作品。大好物だな。
『死を啼く鳥』『悪鬼の檻』も連続殺人鬼を扱った作品だが、今回も…
また、サイコ物、シリアル・キラー物が流行り出すのだろうか。
この作品はシリーズ第五作とのこと。間の三、四作も翻訳してくれないかな。多少、順番が狂ってもガマンするよ。