作品一覧

  • 大学病院の奈落

    大学病院の奈落

    小説・文芸

    4.0
    1巻858円 (税込)
    「医の仁術」に背を向けた医師たち。病院内の幼き対立構造には呆れるーー作家・塩田武士氏絶賛! 日本医療ジャーナリスト協会賞特別賞を受賞した話題作を文庫化。 群馬大学医学部附属病院で手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。 読売新聞医療部のスクープ記事から、医学界を揺るがす大スキャンダルが発覚する。死亡例が積み重なるなかで、なぜ誰も「暴走」を止めなかったのか。 その背景には、群馬大学病院内のポスト争い、学閥、セクハラ問題が影を落としていた――。 2014年に相次いで亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。 院内調査によって、さらに10人が死亡していたことが発覚。 技量の未熟な早瀬が、超一流外科医でも尻込みする言われた高難度の最先端手術に挑んだのはなぜなのか。 患者には知らされない、保険診療の闇。 旧帝大がいまだに力を振るう、医師会の勢力争い。 乱れ飛ぶ怪文書。 変わることなき「白い巨塔」の病理と、再生への道のりを描いた医療ノンフィクションの傑作。
  • 「もう一度歩ける」に挑む 救命救急センター「チーム井口」の覚悟

    「もう一度歩ける」に挑む 救命救急センター「チーム井口」の覚悟

    ビジネス・実用

    -
    1巻1,980円 (税込)
    一年に200人以上の脊髄損傷の患者を受け入れている、川越の埼玉医大高度救命救急センター。頚髄損傷で完全まひという最重症の患者も、この10年間で182人受け入れている。 その中核となっているのが、井口浩一医師だ。 深夜でも未明でもその電話の呼び出し音は1、2回で鳴りやみ、30分もすれば手術室のドア口に現れる。 「井口先生にはクローンがいる」と言われるほど常に、いつどんなときも手術に対応できるよう準備している。 脊髄損傷は、それまで健康だった人が、ある日突然身体の自由を奪われ、大きな障害の残ることも多く、患者自身もさることながら、それを介護する家族や周囲の人たちの負担も大きい。 自民党幹事長だった谷垣禎一氏は2016年、多忙な公務の合間に趣味のサイクリングをしていて転倒、政界引退を余儀なくされた。 大相撲の元大関・琴風の先代尾車親方は2012年に巡業先で転倒し、頚髄を痛める大けがを負った。 ラグビー選手のケガも多い。 練習中や試合でしのぎを削るなかで、脊髄を損傷した高校生、大学生のラグビー部員もいる。 自転車で転倒したり、トランポリンの練習中の落下など、アッと思った瞬間に大きなケガを負ってしまう。 そうした重度の脊髄損傷の治療はきわめて難しい。 リハビリを続けても状況が劇的に改善することがないうえ、生涯車椅子というケースもままある。 この「不治のけが」に立ち向かう井口医師と、そのチームの信念は、「早く手術すればするほど、予後はよくなる」である。 脊髄損傷が疑われる患者を、ときにはドクターヘリを使って緊急搬送し、6時間以内を目標として早期に手術することで、腫れによる圧迫で起こる「二次損傷」を軽減できる可能性があるという。 ケガによる直接的な打撃である一次損傷は避けられなくても、二次損傷の程度を緩和することによって、予後はかなり良くなるはずだ――。 実際、その成果は現れ始めている。 「脊髄損傷早期手術」に挑む熱き医師たちと、患者に取材を重ねた医療ノンフィクション。
  • 命のクルーズ

    命のクルーズ

    小説・文芸

    3.7
    1巻1,980円 (税込)
    ふと気付くと、涙がぼろぼろとほおをつたっていく。 「あれ、俺、なんで泣いてんだろ」 自分でもわけがわからなかった。 「東日本大震災以来の、とんでもないことが起きていると思って」ーー 2020年1月、横浜を出港した豪華客船、ダイヤモンド・プリンセス号は、香港、ベトナム、台湾をめぐっていた。 沖縄・那覇を経て、2月4日に横浜に戻る予定だったが、その直前、香港で下船した中国人乗客が発症したことが判明する。船内でも発熱した乗客が次々に医務室を訪れていた。 しかし、そのとき、多くの乗客はまだ「異変」に気付いてはいなかった。 正装のディナー、外国人歌手によるエンターテインメント、絵画展、マージャン、有志による合唱発表会などが行われ、旅のフィナーレを目前にしていた。 日本政府には、衝撃的な情報がもたらされる。発熱した31人の乗客のうち、10人が「新型コロナウイルス陽性」だったのだ。 横浜で下船予定だった乗客たちは、船内に足止めされることになり、まず厚労省の医系審議官と、横浜検疫所の検疫官らが乗船。その後、災害派遣医療チーム=DMATの面々が乗船した。 DMATは震災や水害など、災害時に発生する病人の救護にあたるボランティア医師たちである。事務局が片っ端から電話してかき集めたメンバーだった。当然、感染リスクはある。家族は反対する。活動の法的裏付けさえ満足になかった。 「俺たちがやらなければ」という使命感だけがよりどころだった。 連日、乗客・乗員数十人の感染が判明。2月17日、陽性者は99人にのぼった。 ある外国人女性は、感染が判明したものの下船することを嫌がり、駄々っ子のように床を転がった。部屋で暴れたイタリア人男性もいた。 混乱をきわめた船内で、医師たちは感染と隣あわせになりながら、困難なミッションにあたっていた。 「薬を」「情報を」焦燥を募らせる乗客の気持ちに、どう向き合えばいいのか。 やがて迎えた、大切な人との別れーー。 医師、乗客への重厚な取材で描きだす、感涙のノンフィクション。

ユーザーレビュー

  • 大学病院の奈落

    Posted by ブクログ

    ─彼らがやっていたことは医療というより手術工場だった
    ─まるでアクロバットの披露会
    ─地域トップの大病院があんな無法地帯だったなんて


    衝撃の文言がとびかう、群馬大附属病院で起きた医療ミスと組織隠蔽を追ったルポ。
    小説よりも事実が奇なるか確かめたくて手にとった。しかし結果は、なぜ事故が起きたかの原因が「誰か」のせいではないと知った。犯人がいないことが、逆に奇ではないと言える証左なのかもしれない。

    2010〜14年を中心に、膨大な取材からデータと証言と推論で完璧に仕上げられている。敢えて推論と言うのは、肝心の執刀医と教授だけ取材に応じていないから。
    とはいえ悪役は執刀医だけでもなければ教授でも病院でも、学会や厚労省でもない。強いて言うなら全員がワンオブゼム。冒険的な先進医療にストップをかける仕組みに欠いていた。実態は、患者の命を二の次にして繰り広げられていた実績レースだったのだ。

    人間がもつ功名心という名の欲。

    それをセーブする新たな仕組みができて、その中で意識も変わらなければ被害者の無念は浮かばれないだろうと思う。


    話は逸れるが、人がおこす災いの元はすべて支配と被支配だ(『模倣犯』宮部みゆき)というフレーズを思い出した。医師と患者は、望むと望まないとに関わらず支配関係が決定している。人間性しか頼るものがない脆弱さがある。
    外科医の仕事はすべてに優先していいと考えている(『泣くな研修医』中山祐次郎)というセリフも、強いモラルや自制心をもつ主人公の本音だからこそ安心できた。それでも寝不足で切り刻む危なっかしさを不安視してしまう。外科医の技術が症例数と比例するのは致し方ないとしても。

    こうした環境下でモラルハザードを起こさず医療の発展、医師の成長を支える仕組みとは。この事件を契機として医療業界全体が変わりつつあることまで学べた。

    本当に勉強になった。
    あとがきが追跡調査なのも作者の誠意を感じる。
    一般の読者だけでなく、医療従事者の方にもぜひ読んでもらいたい渾身の記録。

    さて、先進医療特約は解約しようナウ。

    0
    2024年02月17日
  • 命のクルーズ

    Posted by ブクログ

    2022.9のコロナのことが大分分かってきたけど、感染者は増え続けている状況で読んでいる。
    その状況下なら、コロナと聞いて純粋に相手の体調を心配できる人が多いと思う。
    けど、未知の状況であればそれさえ難しくなるのだと感じた。

    0
    2022年09月17日
  • 大学病院の奈落

    Posted by ブクログ

    良くなる為にはその過程で誰かが泣くのか
    泣く人を出さない為に良くしていくのか
    慣例を壊していくのは本当に骨が折れる

    0
    2025年09月19日
  • 大学病院の奈落

    Posted by ブクログ

    □問い:腹腔鏡下肝切除術で8人死亡 なぜ執刀医を止められなかったのか?
    □答え:院内の勢力争い、功績を評価されたい外科医の心理、安全性・有効性評価の倫理手続きに対する意識の低さがあったため
    □所感:
    "患者・医療者の診療記録共有―世界の流れと群馬大学医学部附属病院における取り組み" を読む中で
    この本の存在を知り読んでみた
    「腹腔鏡手術後八人死亡 高難度の肝切除 同一医師が執刀」(「読売新聞」二〇一四年十一月十四日付朝刊)
    の記事が公開され明るみになった
    医療事故の概要は 2010年12月から2014年6月までに同院第二外科が行った腹腔鏡下肝切除の手術後、約3ヶ月以内に患者8人が死亡 といったもの
    当時はまだ同手術は保険適用外であったため、本来は院内での倫理手続きを経て実施しなければならないが、"高難度手術に挑み院内・院外で実績をあげること" を優先して同科判断で実施されたことに驚いた
    第8章 先端医療の落とし穴 に記載されている 元大阪大学名誉教授で公衆衛生の専門医である多田羅氏の
    コメントが印象に残ったので抜粋する
    「患者と医師は決して対等になることはありません。なぜなら、病気を治してほしいと切望する患者は、医師にすがるような必死の思いでいる。医師が熱心に説明すればするほど、患者は「お願いします」と言うしかなくなり、医師が勧める選択肢に誘導される。その力関係は非常にはっきりしている。だから結果的に、患者はリスクを押しつけられることになりかねないのです」
    地方にいけばいくほど大学病院は"最後の砦"としての存在が大きくなる
    かかりつけ医から紹介され同院を受診し最後の望みを医師に託した患者さんの希望とは裏腹に"患者さんを救う"といった本来の目的から外れた医療行為が当時行われてしまった事実があったことになんとも言えない気持ちになった
    さいごに 執刀医、そして同医師を管理する診療科の責任者であった医師はいまもどこかで医師として働いているとのこと・・

    0
    2024年09月01日
  • 大学病院の奈落

    Posted by ブクログ

    政治的な背景により「手術工場長」に選ばれた執刀医による異常な死亡率の医療事故。人柄は悪くないだろうが業績の水増しや隠蔽は医療の4原則に反しているとみられる。
    丹念な取材で最後に群馬大学病院による現状改善まで書かれている。亡くなられた患者さん達もこれを以て瞑すべしとなるかは定かではないが…

    0
    2024年04月19日

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