高梨ゆき子のレビュー一覧
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─彼らがやっていたことは医療というより手術工場だった
─まるでアクロバットの披露会
─地域トップの大病院があんな無法地帯だったなんて
衝撃の文言がとびかう、群馬大附属病院で起きた医療ミスと組織隠蔽を追ったルポ。
小説よりも事実が奇なるか確かめたくて手にとった。しかし結果は、なぜ事故が起きたかの原因が「誰か」のせいではないと知った。犯人がいないことが、逆に奇ではないと言える証左なのかもしれない。
2010〜14年を中心に、膨大な取材からデータと証言と推論で完璧に仕上げられている。敢えて推論と言うのは、肝心の執刀医と教授だけ取材に応じていないから。
とはいえ悪役は執刀医だけでもなければ教授で -
Posted by ブクログ
□問い:腹腔鏡下肝切除術で8人死亡 なぜ執刀医を止められなかったのか?
□答え:院内の勢力争い、功績を評価されたい外科医の心理、安全性・有効性評価の倫理手続きに対する意識の低さがあったため
□所感:
"患者・医療者の診療記録共有―世界の流れと群馬大学医学部附属病院における取り組み" を読む中で
この本の存在を知り読んでみた
「腹腔鏡手術後八人死亡 高難度の肝切除 同一医師が執刀」(「読売新聞」二〇一四年十一月十四日付朝刊)
の記事が公開され明るみになった
医療事故の概要は 2010年12月から2014年6月までに同院第二外科が行った腹腔鏡下肝切除の手術後、約3ヶ月以内に患者 -
Posted by ブクログ
群馬大学病院で腹腔鏡手術を受けた8人の患者が死亡するという医療事故に関する医療ノンフィクション。
死亡事故全てを執刀した若い医師の個人の責任に止まらず、相当な技術が必要とされる腹腔鏡手術を、ここまでの死者が出ても止めることがなかった病院としてのガバナンスに問題があるとして、丁寧にその要因がまとめあげられる。その過程では「安全な手術だから」という医師の言葉を信用して手術に同意してしまったという遺族の悲しみと怒りを拾い上げていく。
医療事故を起こすのは決して、技術が低い一個人の問題だけではなく、むしろそうした一個人の暴走を許してしまう組織的なガバナンスの不備にあるという洞察は、医療事故に限らず -
Posted by ブクログ
いつも聞いている大竹まことさんのpodcastの番組に著者の高梨ゆき子さんがゲスト出演していて、本書の紹介をしていました。
高梨さんは読売新聞編集委員です。
新型コロナウィルス感染症流行当初、ダイヤモンド・プリンセス号を舞台にした船内感染の顛末は日本国内のみならず世界的にも大いに注目されました。船内は実際どんな状況だったのか、乗客・乗員そして感染対策のために派遣された人々はどんな思いで、どう行動していたのか。DMAT(Disaster Medical Assistance Team=災害派遣医療チーム)の活動を中心に、綿密な取材をもとにした様々なエピソードが紹介されています。 -
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日本におけるコロナウィルス感染症クラスターの、最初にして最大の規模となったのが豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス号」を舞台としたものである。乗員乗客合わせて3713名が乗船し712名が感染(14名が死亡)、外部入船者9名も感染した。
本書はその始まりから全員が下船するまでの1か月を、日付順に追ったノンフィクションだ。
感染症対策本部の初会合で安倍総理が発した「DMATの仕組みを活用して」の一言が、この国のその後の対応を決めることになる。例によって根回しも何もない唐突な発言だったようだが(笑)。
驚いたのはDMATは管轄外(本来の役目は災害救助法が定める医療救護班である)のうえにボランティア組織 -
Posted by ブクログ
悪くはないが、良質なノンフィクションとするには、客の小説タッチな文章挟む事で紛らせてはいるが、あった事柄の浅瀬だけ並べてるだけで深度というか、取材というか、方々足りない印象。一面的で浅い。最後の最後に「当時こんな事もあったらしい」と1、2行書いてたが、そこらも入れて、もっと多数目線で多数の声を書くべきだったのでは。
とはいえ、当時の自分や社会の雰囲気や報道を思い出しながら色々考えられたのは良かった。あの最前線がボランティアだったという事に目眩。その点は良い話というより酷い話として知れわたって欲しい。宣伝並みにメイン扱いなんだし。あと、よく理解ってないまま聞き心地の良い文句を発っしておきながら、