高校生の課題図書になっているけど、大人が読んでも読み応えあります。文章は分かりやすく、当時10歳であったレイゾンの視点で書かれています。
「シンドラーのリスト」に載った最年少のユダヤ人の一人。
ホロコーストを生き延びた過酷な体験を物語っている。
レイソンは5人兄弟、ポーランドの東部で生活していたが
...続きを読む、ドイツ軍の急激なポーランド侵略で生活は一変。
父親が目の前で父親よりもはるかに年下のドイツ軍人に殴られるところを目の当たりにするところや、(その後つれて行かれる。)ゲットーでは見回りに見つからないよう屋根裏で這いつくばって二日間も過ごしたところなど、大人でも到底厳しい状況の中、生きるために必死な様子が伝わってきた。
収容所では気まぐれな虐待や、ユダヤ人はすべて全裸にされ、体毛をそられ、身体検査を受けさせられ、労働に適するかどうかチェックされる。その過酷な様子が伝わってきた。
戦争の状況が変わり、ユダヤ人もついに解放されることになるが、元の街に戻ってからもドイツ軍ではない人々からの差別的な扱いは続く。これがなかなか読んでいて、戦争の難しさを感じた。
その後アメリカにわたり、英語を学び、教師にまでなる。アメリカでは、朝鮮戦争の際、徴兵されることになるが、そこでの生活に周りのみんなは文句を言っているが(狭いベッド、粗末な食事等)ゲットーや収容所に比べればはるかに快適というところから、以前の悲惨さがわかる。
印象的だったのは、アメリカにきて最初、お金の価値が分からず、困っていたところ、同じ列車のご婦人に丁寧にお金の数え方を教わったというくだり。なんでもないことが本人にとってはとても心にのこり、ためになり、覚えているものだと分かった。そのご婦人も素敵な方だと思った。
当時のことは当時の経験者から聞くしかない。そういった意味で、当事者からの記憶を頼りに、その過酷な体験を記したこの本は貴重だと思う。
もう何年も前に見た映画「シンドラーのリスト」を再度見てみようと思った。