好感が持てたのは、単にPISAの得点だけで各国の良し悪しを測るのではなく、同時に公平性についても注目していたところである。確かにいくらその国の平均得点が高いからと言って、国内での点数に格差があったら決して良い教育とは言えない。
同時に、ただデータのみで語るのではなく、その国の文化や思想と関連付けなが
...続きを読むらその国の教育を見つめることで、なぜその教育が可能なのか理解することができた。
日本の教育は、国内では、画一的で個性がない、と言われているが、イギリス人の著者から見ると、公平性が高く、集団を意識した社会性の高い教育なのだ。
学校の中の自由は制限されているように感じるのに、結果として公平性が高い(家庭環境が学力に与える影響が小さい、家庭環境から自由である)のは、不思議に思えた。
そこで「自由」と「勉強」の関係について考えてみた。
仮に「自由」を「自分が望むことが実現すること」(平たく言えば「自分の思い通りになること。」)と定義してみる。すると、自分が望むことを実現するためには、実現するための能力が必要になることが分かる。(お腹が空いても大人が食べ物をスプーンで口まで運んでくれないと食べられない赤ちゃんは自由でない。なぜなら自力で食べる能力がないから。)
一方で「勉強」は「能力を身に付けるための行為」である。つまり「自由」へ近づくための行為なのだ。その「勉強」を「子どもの自由」を謳って無責任に子どもに過度に委ねるのは、能力を身に付ける機会の損失である。子どもの「主体性」や「自由」を謳いながらも、やはり教師の関与は必要なのだ。
今の日本が推し進めている、主体的な学びそれ自体を否定しようとは思わない。しかし、これまでやってきた教育の中でまだ捨てるべきでない方法があることに気付く。
批判ばかりを受ける現代の日本の教育だが、今の教育にある価値を再評価するきっかけを与えてくれる本であった。