読んでいたら、日記を付けるのもいいなと思えるようになった。
いざ自分で書こうとすると長続きしないのだが、それが祖父手作りの日記帳となるとやる気も重みも変わる気がする。
その手作りの日記帳が、拗れてしまった母子の仲も取り持つことになるのだから。
本は読むけど本の装丁までは気にしなかった浪人生と、本は
...続きを読む読まないけれど本を作らせたら天下一品の女性職人との出会いから、話は広がる。
最初は前述の日記帳なので、本よりはノートや手帳よりだが、彼が進路を定めてからは、物語の本の装丁の話なども出てくる。
その人のためだけに作られるオーダーメイドの本。
同じ品質のものを大量に出版する(出版数自体は右肩下がりという話は、この際置いておいて)世の中にあって、それとはほぼ真逆を行く職人のありがたさ。
しかも、本を通じて繋がっていく縁の大切さも身に染みて分かる。
その本に込められた想いの大切さも。
日記帳の話も、「青い鳥」の話も、最後のパンフレットの話も、人の縁って不思議で魅力的で、そして大切な縁は時間が経っても、遠く離れてしまっても繋がっているものなんだと、そう感じることのできる話だったと思う。
そして、世界は案外狭い。
大事な縁は、自分も気付かないうちに繋がれて、目の前にあるものである。
どの話も、想いが消える前に間に合って本当によかったと思う。
特に女性職人さんの青春時代の縁が切れていなくて、本当によかった。
元浪人生の彼には、少し気の毒な展開だったかもしれないが。
本の構造などを分かりやすく解説してくれていて、普段読んでいる本により愛着がわいた気がした。
確かに「本好き」なら読んでほしい作品だと思う。
今読んでいるこの一冊に、どれだけの技術と想いが込められているのか、伝わると思うから。